自己破産は、免責が確定すると多くの借金が法的に整理されます。
でも、すべての支払いがゼロになるわけではありません。
免責されない支払い(非免責債権)があるからです。
この記事では、自己破産でも免責されないものを一覧で整理し、残る支払いをどう扱うべきかを“現実の順番”でまとめます。
まず結論:免責されないのは「公的・扶養・制裁」系が中心
免責されないもの(非免責債権)を一言でまとめると、「公的・扶養・制裁」です。
自己破産は、民間の借金(カード・ローン等)を整理して立て直す制度ですが、社会の土台に直結する支払いまで一律にゼロにはしません。
だから、免責が確定したにもかかわらず、免責の対象にならず残る支払いの管理ができていないために生活が苦しくなることがあります。
ここを先に押さえておくと、免責後の見通しが一気に現実になります。
まず、免責されないものは大きく3つに整理できます。
- 公的負担:税金・社会保険料など(放置すると差押え・延滞が早い)
- 扶養・生活維持:養育費など(「支える義務」に近い性質)
- 制裁・強い非難に関わるもの:罰金・追徴金、一定の損害賠償など
ポイントは、「免責されない=全部すぐ払え」ではありません。
免責されないものの中には、分割・猶予の相談ができるものもあれば、扱いが特殊で先に確認が必要なものもあります。
次は、免責されないものを「一覧」で整理します。まず何が残るのか、見落としがない形にしていきます。
免責されないもの一覧(非免責債権)
自己破産で免責されないもの(非免責債権)は、「例外的に残る支払い」です。
ここでは、まず全体を一覧で押さえます。細かい法律の条文を探すより、自分に当たりそうな項目があるかを先にチェックしてください。
① 税金・公的な負担(いちばん現実に残りやすい)
- 税金(住民税・所得税・固定資産税など)
- 社会保険料(国民健康保険料・国民年金保険料など)
- 行政上の徴収金(延滞金を含め「公法上の負担」に当たるもの)
この類型は、免責されないだけでなく、滞納が続くと差押えなどの回収が早いのが特徴です。
② 扶養・生活維持に関わるもの(家族の生活に直結)
- 養育費
- 婚姻費用
- 扶養料(扶養義務に基づく定期金)
この類型は「相手の生活を支える性質」が強く、破産で切れない前提で組み直します。
③ 罰金・科料など(「制裁」系)
- 罰金
- 科料
- 追徴金等(制裁・刑事手続に近い性質のもの)
この類型は扱いが特殊なので、まずは何が対象か/期限/納付方法を確認するのが先です。
④ 一定の不法行為に基づく損害賠償(悪質性が強いもの)
- 悪意で加えた不法行為の損害賠償
- 故意または重過失で加えた生命・身体への侵害による損害賠償(重い類型)
ここは「損害賠償なら全部残る」わけではありません。
どの類型に当たるかで免責される/されない、が分かれます。
免責されないものが当たりそうなら、免責後の生活で「口座・決済・契約」をどう組み替えるかもセットで押さえると、立て直しが一気に現実になります。
自己破産後の生活の実態|口座・クレカ・スマホ・賃貸・仕事はどうなる?
誤解しやすいポイント(「免責されない=全部払う」ではない)
免責されないものがあると聞くと、「結局破産しても意味がない」と感じやすいです。でも現実は、ここで一度“整理の仕方”を間違えると、判断が崩れます。
まず押さえるべきは、免責されない=「全部を今すぐ満額で払う」ではない、ということです。残る支払いは確かにありますが、支払い方・優先順位・分割や猶予の余地があるものもあります。
そして一番大きいのは、免責される借金が大きいほど、残る支払いに集中して立て直せるようになる点です。「借金がゼロになるか」ではなく、「生活が回る形に組み直せるか」で見る方が現実に合います。
逆に言えば、非免責の存在が問題になるのは、残る支払いがあること自体というより、残る支払いの種類を混ぜてしまい、優先順位を間違えるときです。ここを分けて整理すると、破産後の家計はむしろ安定しやすくなります。
免責後に詰まりやすい順番(残る支払いの“優先順位”)
免責後に再び詰まる原因は、制度ではなく「残る支払いの管理」です。
ここで優先順位を外すと、生活が回っているのに差押えや延滞で崩れます。
ポイントはシンプルで、「放置したときに一番早く・強く生活を壊すもの」から先に潰すことです。
ここでは、免責後の立て直しを壊さないための順番を置きます。
① まず税・社保の滞納(差押え・延滞金が早い)
税金や社会保険料は免責されません。そして放置すると、延滞金が積み上がりやすく、差押えまで短いです。
免責で借金の支出が消えたら、最初に“立て直しの原資”をここに寄せます。「とりあえず後回し」が一番危険なのがこの領域です。
② 次に養育費などの扶養系(継続性が強い)
養育費などの扶養系は、金額の大小より「毎月続く」ことが核心です。滞納すると関係が荒れて、結果として回収手段(差押え等)が現実化しやすい領域でもあります。
ここは“過去分を一気に解決”より、まず「今月から落とさない」形を作るのが優先です。継続が戻ると、後から調整の余地が生まれます。
③ 罰金等(分割可否や期限の確認が先)
罰金・科料などは、免責の対象ではありません。ただし、ここは「どう払うか」が事件類型や状況で変わるので、まず期限と扱い(分割の可否、猶予の余地)を確認するのが先です。
優先順位としては高いですが、焦って無理に家計を壊すより、手続と期限を先に固めて“事故の回避”を優先します。
④ 損害賠償系(内容と根拠で整理の仕方が変わる)
損害賠償は「全部が非免責」ではありません。
非免責になるのは、たとえば悪意で加えた不法行為や故意または重過失による生命・身体への侵害の損害賠償など、類型が限定されています。
だからここは、金額で動くより先に「その請求が非免責に当たるのか」を確認してから組み立てます。当たるなら、払う設計(分割・合意など)に落とし、当たらないなら免責されたものとして整理します。
まとめると、免責後の優先順位は、気持ちではなく強制力と生活への破壊力で決めるのが安全です。この順番で管理すると、免責の効果が「生活が回る実感」として出やすくなります。
免責されない支払いへの現実的な対処法(交渉・分割・減免の射程)
免責されないものは「破産で消せない」だけで、分割や猶予の余地があるものもあります。ここを知らないと、「残る=詰む」と早合点しやすいです。
ここでは、制度別に“できること/できないこと”を短く整理します。結論は、税・社保は税務署や役所、養育費は家裁、罰金は確認が先、損害賠償は類型で分岐です。
税金・社保:税務署や役所と分割・猶予の話になる
税金・社会保険料は免責されませんが、対処は「返せる形に組む」方向になります。基本は、税務署や自治体、年金事務所などの相手方と、分割納付/猶予(徴収猶予等)の枠で話を作ります。
ここで大事なのは、根性ではなく情報です。滞納額・延滞の状況・差押えの有無を先に把握すると、交渉が“現実の段取り”になります。
養育費:家庭裁判所の手続(減額・調停等)とセット
養育費は免責されません。ただ、現実に支払えない状況が続くなら、放置ではなく家裁の手続(減額調停等)で枠を作るのが筋です。
ポイントは「払えないから払わない」ではなく、「払える形に変更を求める」です。合意や調停で形ができると、未払いの拡大や関係の泥沼化を止めやすくなります。
罰金:扱いが特殊なので「まず確認」の順番
罰金等は免責されませんし、税・社保のように一般化した分割のイメージで語るとズレます。ここは、まず何が対象か(罰金・科料・追徴等)/期限/納付方法を確認するのが先です。
「払うかどうか」より先に、「どういう扱いで、どの期限で動くのか」を押さえる。ここを固めるだけで、事故(放置による一気の不利益)を避けやすくなります。
損害賠償:原因類型で戦略が分かれる
損害賠償は、すべてが非免責ではありません。非免責に当たるかどうかで、打ち手が変わります。
非免責に当たりそうなら、「免責で消す」ではなく、支払い条件の調整(分割・合意)を現実的に詰める話になります。
一方で非免責に当たらないなら、免責の射程(どこまで整理されるか)を整理し直すのが先です。
まとめると、免責されない支払いは「全部一括で払う」か「詰む」かの二択ではありません。相手と制度が違う以上、作るべき枠も違うので、ここを分けて組み直すのが立て直しの核心です。
免責後にやることチェック(最初の1週間で整える3点)
免責後に「生活が戻るか」は、気合ではなく支払い動線が整うかで決まります。免責で軽くなった分、残る支払いを「管理できる形」に直せるかが分岐点です。
最後に、最低限のチェックだけ置きます。「完璧にやる」ではなく、再滞納の事故を防ぐのが目的です。
① 残る支払いを一覧化する(税・社保・養育費・罰金等)
まずは、免責で消えない支払いを一枚のメモに集約します。重要なのは、金額の正確さより「漏れを潰す」ことです。
- 何が残るか(税/社保/養育費/罰金・追徴/非免責の賠償など)
- 毎月型か、一括型か(発生頻度)
- 支払期限と、窓口(役所・年金事務所・相手方等)
この一覧がないと、次の②③が全部ぶれます。
② 差押えリスクの高いものから窓口に連絡する(分割・猶予)
順番が大事です。免責後に再び生活が苦しくなるのは、「払えない」より連絡せず放置で事故ルートに乗るときです。
目安としては、税・社保→養育費→罰金等→賠償系の順で、差押え・延滞のリスクが早いものから窓口に連絡して、分割や猶予の枠を作ります。
ここでやることは交渉というより、相談の入口を作ることです。「今の支払可能額」「いつから払えるか」を言語化して持っていくと話が進みます。
③ 口座・引落・家計を「再滞納しない形」に組み直す
最後は、支払いの仕組みを作り直します。免責後の生活で大事なのは、再滞納しない設計に寄せることです。
- 入口:給与等が入る口座を固定する
- 出口:固定費(家賃・光熱費・通信費)+残る支払い(税・社保等)を、できるだけ口座振替に寄せる
- 余白:引落日より先に残高が作れるよう、支払日を管理する/積立てる
破産後に必要なのは「我慢」ではなく、生活の運用を再設計することです。この3点が整うと、免責の効果が“生活の回復”として実感できるようになります。
次に読む記事(破産後の生活/破産の全体像/職業制限)
免責されないものが分かったら、次は「免責後に生活を回す導線」と「手続全体の見通し」を押さえると、判断が一気に現実になります。
必要なところだけ、次の3本につなげておきます。
自己破産後の生活の実態|口座・クレカ・スマホ・賃貸・仕事はどうなる?
自己破産の流れと期間|申立てから免責まで・必要書類・つまずきポイント
自己破産の職業制限の実態|対象の資格・職種/期間/できなくなること
どの段階から整理しますか
債務整理は、「制度名」を覚えるより先に、いまの自分がどの段階にいるかを押さえる方が、判断が崩れません。
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何が起きているのか構造から考える|判断の入口
借金を抱えたとき、まず何が起きているのか。金額ではなく「構造」から整理して、判断の土台を作る入口です。
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債務整理の制度と見通しをつかむ|判断前の整理
すぐに手続を決める前に、債務整理制度の全体像と見通し(流れ・期間・費用)を押さえる。自分の状況に合う選び方を、現実ベースで整える記事群です。
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債務整理についてより詳しく知る|判断の実践
任意整理・個人再生・自己破産について、手続別にもう一段深く、踏み込んで理解するための解説です。