前の記事では、
判断を急がされやすい場面で、
人の中に起きやすい迷いや感覚を整理してきました。

ここからは、
そうした状態を前提にしたうえで、
判断を進める前の整理に入っていきます。

ただし、この段階でも、
何かを決めたり、
対応を選んだりする必要はありません。

まずやるのは、
目の前の出来事を
他の人の話と同じような話としてまとめてしまっていないかを、
立ち止まって確認することです。

同じように見える状況でも、
全く同じ状況であることはなく、具体的な状況や自分が何を重視するのかによって、
状況の見え方、捉え方は変わります。

この回では、
その入口として、
「まず他の人の話と同じ話にしない」という点だけを扱います。
判断を進めるためではなく、
判断の前提を整えるための整理として、
読み進めてみてください。

まず「同じ話」にしない

インターネット上の出来事は、まとめて「ネットのトラブル」と呼ばれがちです。

でも、その呼び方のまま考え始めると、最初から判断が雑になります。

なぜなら、「ネットのトラブル」という言葉は便利な一方で、違う種類の状況を同じ箱に入れてしまうからです。

たとえば、同じように不快な投稿を見つけたとしても、それが「事実と違う」のか、「言い方がきつい」のか、「誰が見ているかが問題」なのかで、状況はもう別物です。

別物なのに同じ箱に入れると、次に起きるのはだいたい二つです。

一つは、「とにかく消したい」という気持ちだけが先に立って、何を守りたいのかが曖昧になること。

もう一つは、選択肢が勝手に二択になって、「やるか、我慢するか」みたいな形に圧縮されていくこと。

ここでも、
状況を一つの言葉でまとめた瞬間に、
考えるための手がかりが減ってしまいます。

だからこの先では、
いきなり「何をするか」には入らず、
まず「これはどんな状況なのか」を
分けて見るところから始めます。

分けることは、問題を小さく見せるためではありません。
逆に、どこが本当に問題なのかを見失わないための作業です。

次の章では、状況を分けるための軸をいくつか提示します。
答えを出すための道ではなく、判断の前提を整えるための道具として使ってください。

状況を分けるための軸

出来事を一つの話にしない、というのは、
感覚的な注意喚起ではありません。

実際には、状況を分けて考えるための、
いくつかの視点があります。

たとえば、どこが問題として気になっているのか。
投稿に書かれている事実関係なのか、
それとも、その書き方や評価の部分なのか。

また、
その投稿を見た人が、
自分や自分の会社のことを書いていると分かるのか。
分かるとすれば、
どのくらいの範囲の人に伝わるものなのか。

そして、
その投稿は、
いつからどのように続いていて、
どのくらいの広がりで見られているのか。

これらは、
どれか一つだけを見れば足りる、というものではありません。
それぞれ、具体的な状況は千差万別であるはずです。

にもかかわらず、
最初から他の人の話と同じような内容としてまとめて考えてしまうと、
「大きな問題なのか」「小さな問題なのか」
といった感覚的な印象だけが残りやすくなります。

ここで扱う「軸」は、
問題を軽く見るためのものではありません。
むしろ、どこに重さがあるのかを、
見誤らないための整理です。

まだ具体的な判断は始めません。
まずは、分けて考えるための視点がある、
ということだけを頭に置いておいてください。

分けて考えると、見え方が変わる

出来事を分けて考える、というと、
頭の中だけの整理に聞こえるかもしれません。

けれど実際には、
分け方が変わるだけで、
問題の見え方や重さはかなり変わります。

「事実と違うことが書かれている」のか、
「事実かどうかより、印象が悪い書き方と感じている」のか。

あるいは、
多くの人に広く見られている状況なのか、
限られた範囲でだけ続いているのか。

これらを分けずに考えていると、
なんとなく「大きな問題」に感じてしまいがちです。
一方で、分けて見てみると、
どこに一番引っかかっているのかが、
少しずつ輪郭を持ち始めます。

輪郭が見えてくると、
次に考えるべき内容も変わります。
すぐに何かを決める必要があるのか、
それとも、もう少し様子を見てもいいのか。

この段階で大切なのは、
結論を出すことではありません。
「同じように見えていた状況が、
実は同じではなかったかもしれない」
と気づけること自体が、整理です。

分けて考えることは、
判断を遠ざけるための作業ではありません。
むしろ、判断を雑にしないための準備だと考えてください。

この段階では、結論を出さなくていい

ここまでで見てきたのは、
何かを決めるための材料ではありません。

状況を他の人の話と同じ話にせず、
分けて考えるための視点でした。

この段階で、
「どう対応するか」
「何を選ぶべきか」
といった結論を出す必要はありません。

むしろ、
まだ結論を出さないこと自体が、
整理としては自然な状態です。

分けて見てみた結果、
思っていたほど急ぐ話ではなかった、
ということもあります。
逆に、
自分がどこで強く引っかかっているのかが、
はっきりしてくることもあります。

どちらであっても、
それは判断が前に進んだというより、
判断の前提が整い始めた、という変化です。

からは、
ここで触れた軸を一つずつ取り上げながら、
状況の整理をもう少し具体的にしていきます。

判断を急がないための準備として、
まずはここまで確認できていれば十分です。