謝罪文。
ネットの誹謗中傷トラブルが示談で終わるとき、最後に効くのは、金額よりも「文面」です。
ただし、謝罪文を強く書けば終わるわけではありません。
断定を入れすぎると、相手が引く。逆に弱すぎると、蒸し返しが止まらない。
つまり勝負は、「入れる/入れない」ではなく、強度と射程です。
このページでは、示談で使える謝罪文を、断定せずに終わらせるための型として整理します(被害者側=相手に書かせる設計/投稿者側=自分が提出する文面)。
※「断定しない謝罪文」がなぜ効くのか(逆に断定がなぜ揉めるのか)は、示談書で揉めやすい条項(謝罪条項の落とし穴)で先に整理しています。
示談書(合意書)で揉めやすい条項とは?口外禁止・謝罪・再発防止・清算条項の落とし穴
謝罪文で揉めやすいのは「断定」:事実/評価/法的評価を分けて書く
誹謗中傷の問題で、そもそも合意書とは別に謝罪文を別に作らないことも多いですが、もし示談の際に謝罪文を使うとすれば、謝罪文は、長さや美しさより、どこまで断定する内容かで展開が変わります。
断定が強すぎると、相手が引いて交渉が止まったり、あとで条項(清算・違約金・再発防止)に波及して話が重くなったり、そのときは気がつかない内心的な不満が残ったりして、別の争いが生まれやすくなります。
まず分ける:事実/評価/法的評価
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事実:何をしたか(投稿した/削除した/どの表現を使った)
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評価:表現が不適切だった/配慮が足りなかった/誤解を招いた
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法的評価:違法である/名誉毀損に当たる/損害賠償義務がある
示談でまとまりやすいのは、基本的に「評価」の層で止める書き方です。
相手の感情に配慮しつつ、法的評価まで固定しないため、条件交渉(削除・清算・金額)が前に進みやすくなります。
もし、被害者側の立場で、相手に法的責任があることを認めさせたいというのが一番重要であれば仕方ありませんが、
今後の問題を未然に防ぐとか、きちんと関係を清算して解決するということを目的にするのであれば、
法的評価にこだわる必要はありません。
そのほかの、慰謝料、解決金、謝罪などの条項が入った合意書があれば、相手が一定の責任があることを認めていることは明らかです。
投稿者側も、一定の責任があることは自覚しても、文章で「違法行為をした」「名誉毀損をした」「損害賠償義務がある」と書かれるのは、少し躊躇するものです。
示談に乗せやすい「評価層」の言い方
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「本件投稿により迷惑・不利益を与えたことを自覚し、反省の上、謝罪する」
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「配慮に欠け、誤解を招く表現が含まれていたため、謝罪する」
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「表現が不適切であったことを認め、謝罪する」
避けたい断定(NGワードの例)
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虚偽(事実の断定になりやすい)
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違法/名誉毀損(法的評価の固定になりやすい)
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全責任(射程が広くなりやすい)
ポイントは、謝罪文を「勝ち負けの認定」にしないことです。
終わらせるために必要な強度だけを置き、残りは条件(削除・再発防止・清算・金額)で確定させる方が、全体としてまとまりやすくなります。
被害者側:謝罪文は「自分で書く」より「相手に書かせる」設計
被害者側で謝罪文を“書いてあげる”と、交渉は一見スムーズに見えます。
ただ、あとで揉めやすいのは「文面の責任」と「射程(どこまで謝ったことになるか)」が曖昧になるときです。
だから実務的には、被害者側が全文を作るより、相手に書かせて、こちらは枠だけ決める方がまとまりやすいことが多いです。
合意書本文に盛らない:謝罪文は合意書とは別にしたり、合意書の「別紙」としてまとめる
合意書の本文に謝罪文を長々入れると、修正のたびに条項全体が揺れます。
運用としては、合意書本文は簡潔な謝罪の言葉を短く、
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「本件投稿により迷惑・不利益を与えたことを自覚し、反省の上、謝罪する」
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(別紙としてまとめるなら)「乙は、別紙謝罪文のとおり謝罪する」
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(公開するなら)「乙は、別紙謝罪文を、別紙指定の媒体・期間で掲載する」
のように簡潔に書くのが安定します。
指定すべき3点:対象/削除・再発防止との連動/公開の有無
「謝りたい」を合意に変えるとき、被害者側が先に決めておくとズレが出にくいのは次の3点です。
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① 対象(本件投稿)
謝罪が抽象的だと、あとで「それは別の話」「そこまでは言ってない」という問題が起きるかもしれません。
謝罪文の冒頭に、媒体・投稿日時・URL等で何の言動を指しているのかを入れるのが基本です。 -
② 削除・再発防止と“連動”させる
謝罪だけ先に出ると、削除が遅れたり、再投稿が止まらない形で蒸返しが起きることがあります。
なので合意で、謝罪文(別紙)+削除期限+再発防止+清算をセットで動かす前提にしておく。 -
③ 公開の有無(やるなら射程を限定)
公開謝罪は被害者側の納得を作る反面、再燃の種にもなりやすい。
やるなら、媒体/掲載期間/固定の有無/文面(別紙)を限定して、「どこまで」を確定させます。また、被害者側だからといって、ネットの世界では、その立ち振る舞いも批評の対象になります。
過剰な要求などがあれば、逆に批判の対象になってしまうリスクがあるので謝罪の公開を求める場合には注意です。
「許します」を先に言わない(清算前に着地しない)
謝罪の連絡が来ると、感情として「許す/許さない」を言いたくなります。
でも、清算(これで終わり)が確定する前に「許します」と言うと、投稿者側は“終わった”になりやすく、被害者側は“終わってない”になりやすい。
先に言うのは、許しではなく、通知の受領/連絡窓口/次の手順で十分です。
次は、相手に書いてもらう前提で、または相手からの謝罪内容として期待できる別紙謝罪文の“文面例”を、書式・ひな形として置きます。
文面例(別紙で厚め)
ここでは「公開しない謝罪」を前提に、比較的厚め(経緯や悪かった部分に触れる)文面例を書式・ひな形として書きます。
ポイントは、事実の断定や法的評価に踏み込まず、特定の投稿を対象として、削除・再発防止に自然につながる形にすることです。
例1:被害者側が指定しやすい版(別紙で厚め)
私(乙)は、⚫︎⚫︎年⚫︎⚫︎月⚫︎⚫︎日に⚫︎⚫︎(Xなどの媒体)で行った投稿(URL:⚫︎⚫︎)(以下「本件投稿」という。)に関し、甲に対し、以下のとおり謝罪します。
私は、本件投稿により、甲に対して迷惑および不利益を与えたことを自覚し、反省の上、ここに謝罪いたします。
⚫︎⚫︎をきっかけとして、事実関係を十分に確認せず、本件投稿をしてしまいました。
また、甲の仕事、プライベート、関係者との関係などに影響を与え得ることに配慮できておらず、甲やその関係者の方々に迷惑をかけてしまいました。
本件投稿は削除(又は非公開化)し、今後、甲に関する同種内容の投稿、引用、再掲等を行いません。
以後、インターネット上(SNS、掲示板、口コミサイト、ブログ等を含む。)であるかを問わず、甲の社会的評価を低下させる、侮辱する(名誉感情侵害を含む)、またはプライバシーを侵害する等の誹謗中傷をしないことを約束いたします。
令和⚫︎年⚫︎月⚫︎日
乙:⚫︎⚫︎(署名)
※運用:合意書本文は「乙は別紙謝罪文のとおり謝罪する」と受けて、本文を長くしない。
一般的には、書かせる(提案する)まではしないまでも、投稿者側からの謝罪の内容としては、このくらいの内容を期待し、過剰な内容は期待しないほうが良いです。
裁判になった場合でも、謝罪文を強制的に書かせることはできず、公開謝罪が認められるのは限定的なケースです。
チェックリスト(送る前にここだけ)
謝罪文は、うまさよりも「後で揉めない形」かどうかが大事です。送る前に、ここだけ確認してください。
対象は特定されてる?
媒体/URL/投稿日時など、どの投稿の謝罪かがズレない形になっている(別紙運用なら別紙で特定できるようになっている)。
断定になってない?(法的評価・虚偽断定なし)
「虚偽」「違法」「名誉毀損」「全責任」などの確定を入れていない。置くなら「迷惑・不利益」「配慮不足」「表現が不適切」などの評価に留まっている。
削除・再発防止・清算に繋がる位置づけ?
謝罪だけで終わらせず、削除(または削除予定)/再掲・引用の防止/合意書(清算)へ接続できる書き方になっている。
公開するなら射程が限定されてる?
媒体(どこに)/期間(いつまで)/文面(別紙で確定)/拡散(双方の扱い)が決まっている。広く・長く・曖昧にしない。
※迷ったら「対象の特定」と「断定しない」を優先すると、示談で崩れにくいです。
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