資金繰りが厳しくなり、法人破産という言葉が頭をよぎり始めた。そんなとき、多くの経営者がまず考えるのは「今すぐ何をすべきか」という点だと思います。しかし、支払いが苦しいことと、法人破産を選ぶことは、本来は別の話です。

会社の資産や負債、代表者の連帯保証、従業員や取引先との契約関係を整理しないまま対応を進めると、後になって「あのとき何を確認しておけばよかったのか」がわからなくなることがあります。逆に言えば、現状を整理できれば、法人破産が選択肢になるのか、他の方法があり得るのかを、落ち着いて判断しやすくなります。

法人破産は、支払不能または債務超過に陥った法人について、裁判所の手続の下で財産関係を整理する制度です。申立てをすれば終わりではなく、破産管財人による調査や換価、債権者への対応を経て手続が進んでいきます。この記事では、主に株式会社や合同会社などの事業会社を想定し、法人破産を検討し始めた段階から、申立て、開始決定、管財人による手続、終了後の整理までを、時系列に沿って説明していきます。

差押えの予告や従業員への対応など、急を要する事情がある場合でも、資産の移転や特定の相手への優先的な支払いを急いで行うことは、後に問題となる可能性があります。まず必要なのは、会社の現状を事実として把握することです。

法人破産は、会社を整理するための一つの選択肢です。大切なのは、焦って結論を出すことではなく、会社がいつまで事業を続けられるのか、代表者個人にはどのような影響があるのかも含めて整理し、必要な対応の順序を見通すことです。

【この記事のポイント】
法人破産を検討する前に、事業継続の見込み、会社の資産・負債、代表者の保証関係を確認しておくと、選択肢を判断しやすくなります

法人破産は「検討・準備」「申立準備」「破産申立て」「開始決定」「管財手続」「終了後」という段階で進みます

段階 主な内容 経営者・代表者が確認すること
検討・準備 資産・負債・保証・契約関係を整理する 帳簿・通帳・電子データを保全する
申立準備 弁護士への相談、資料収集、方針決定 事業停止の時期、従業員、取引先、賃貸借・リース等を確認する
破産申立て 裁判所へ申立書類を提出する 必要費用、社内の意思決定・権限関係を確認する
開始決定 破産管財人が選任されることが通常 財産・帳簿・印鑑・アカウント情報を引き継ぐ
管財手続 財産調査、換価、債権調査、契約整理 資料・財産・資金移動の経緯を事実に沿って共有する
終了後 配当、廃止または終結、登記等の整理 保証債務、税務・労務上の残務を確認する

特定の債権者だけへの返済や、会社財産の名義変更、帳簿・データの削除、会社資金の私的利用などは、直ちに違法・無効と決まるわけではありませんが、後にその経緯や理由の説明を求められることがあります。実行する前に、金額・相手方・時期・そのときの会社の資金状況を整理し、自己判断で進めないことが重要です。

法人破産とは|検討する前に整理したい会社の状況と選択肢

法人破産という言葉には、会社が終わる手続という重いイメージがあります。しかし実際には、法人破産は数ある選択肢のうちの一つであり、破産原因や手続の仕組みを踏まえたうえで検討するものです。以下では、法人破産の制度としての内容、他の選択肢との違い、そして代表者個人との関係について順に見ていきます。

法人破産は、支払不能または債務超過の法人の財産関係を整理する手続

法人破産の手続開始原因は、主に「支払不能」または「債務超過」です。支払不能とは、支払能力がなく、弁済期にある債務を継続的に弁済できない状態を指します。債務超過とは、負債の総額が資産の総額を上回っている状態です。「事業を続けるのが厳しい」という感覚は破産を考える契機にはなりますが、それ自体が法律上の破産原因というわけではありません。

破産手続が開始されると、通常は裁判所によって破産管財人が選任されます。管財人は会社財産を管理・処分し、換価した財産を、手続費用や法定の優先関係を踏まえたうえで債権者への配当に充てます。会社は破産手続開始決定によって解散しますが、破産手続上の清算を行う目的の範囲では、その後も法人格は存続します。

法人破産には、個人の自己破産のような「免責」の手続はありません。これは、法人が債務を負ったまま存続することを前提としていないためです。法人破産では、会社の財産を調査・換価して債権者への配当などを行い、法人そのものを清算していきます。通常、こうした清算が終了すれば法人格も消滅します。

一方で、会社の借入れを保証している代表者や、会社とは別に責任を負う役員などの債務・責任まで、会社の破産によって当然になくなるわけではありません。

法人破産を検討しやすい状況

法人破産は、次のような状況が重なったときに、選択肢として具体的に浮かび上がってくることが多くなります。

  • 売上の回復、金融機関等からの追加融資、スポンサー支援、事業譲渡などについて、具体的な見込みが乏しい
  • 会社財産を換価しても、債務全体を整理・弁済できる見通しが立たない
  • 債権者が多数にのぼり、個別の交渉による整理が難しい
  • 差押え、督促、取引停止などが生じ、通常の営業継続そのものが難しくなっている
  • 事業を終了し、会社財産を債権者間で公平に整理する必要がある

事業を続けたいという気持ち自体は自然なものですが、そこで確かめておきたいのは、売上回復の具体的な根拠、資金調達の可能性、支援者の有無、資産売却による資金化の見通しなど、事実として示せる材料があるかどうかです。時間の経過とともに手元資金が減り、選べる方法が変わることもあります。

法人破産以外の選択肢も、状況に応じて検討する

会社の債務整理には、法人破産以外にもいくつかの方法があります。

  • 民事再生:事業の継続を前提とすることが多い手続ですが、事業譲渡等を伴う場合もあります。
  • 私的整理:裁判所を介さず、主に金融機関等と協議して債務を整理する方法です。債権者の理解と協力が得られるかどうかが方向性を左右します。
  • 通常清算:会社財産で債務を弁済しながら清算を進める方法です。清算の過程で、会社財産をもって債務を完済できないことが明らかになった場合には、原則として破産手続開始の申立てを行う必要があります。
  • 特別清算:解散した株式会社を対象に、裁判所が関与して行う清算手続です。通常清算のままで清算を終えられるか、特別清算や破産へ移行するかは、会社の資産状況や債権者との協議状況によって変わります。

それぞれの制度の詳細な比較は他の記事に譲りますが、ここで押さえておきたいのは、「何を優先したいか」によって選ぶべき方法が変わってくるという視点です。事業を続ける可能性が残っているか、会社財産で債務を弁済できる見込みがあるか、債権者との協議に応じてもらえる状況か。これらを整理することで、自社にとってどの選択肢が現実的かが見えやすくなります。

会社が破産すると経営者個人も破産する?代表者保証は分けて考える

会社が破産することと、代表者個人が破産することは、法律上別の手続です。会社と代表者は別人格ですから、会社が破産したからといって、代表者が当然に自己破産するわけではありません。同様に、会社債務について、会社が破産しただけで代表者や役員が当然に個人責任を負うわけでもありません。

一方で、会社の借入れについて代表者が連帯保証をしている場合や、個人の不動産などを担保として提供している場合には、会社が支払えなくなった後に、代表者個人の保証債務や担保の問題を整理する必要があります。

また、会社から代表者や役員への貸付金がある場合や、仮払金について会社に対する返還義務が認められる場合には、破産管財人から返済・返還を求められることがあります。反対に、代表者が会社に資金を貸し付けている場合は、代表者自身も会社に対する債権者という立場になり得ます。

反対に、代表者が会社に資金を貸し付けている場合は、代表者自身も会社に対する債権者という立場になり得ます。

代表者に連帯保証がある場合には、会社の破産とあわせて、個人破産や保証債務の整理、経営者保証に関するガイドラインの利用など、個人側の対応を検討する場面も出てきます。「会社を破産させたら自分も破産する」と最初から決めつけるのではなく、会社の債務と代表者個人の債務・保証関係を分けて把握することが大切です。

申立て前に行う準備|会社をたたむ前に確認したいこと

法人破産を検討する段階では、「何を申し立てるか」よりも先に、「会社が今どういう状態にあるか」を把握しておくことが、その後の判断材料になります。以下で挙げる確認事項は、申立てを決めた場合だけでなく、まだ検討段階にある場合にも役立ちます。

まずは会社の資産・負債・資金繰りを一覧化する

最初に行いたいのは、手元資金と直近の支払予定の確認です。給与、家賃、リース料、借入返済、税金・社会保険料など、いつ・いくらの支払いが控えているかを把握しないまま対応を続けると、選択肢を検討する時間そのものが失われてしまいます。

あわせて、会社の資産と負債を一覧化します。資産側では、預金、売掛金、在庫、設備、不動産、保険、保証金・敷金などを洗い出します。負債側では、借入金、買掛金、未払賃金、税金、社会保険料、リース債務、保証債務などを確認します。

債権者一覧を作る際には、債権者名や連絡先、債務額だけでなく、担保や保証の有無、督促や訴訟の状況もあわせて記載しておくと、後の整理がしやすくなります。担保付きの借入れ、所有権留保のある商品、リース契約にかかる債務は、一般の取引債務とは扱いが異なる場面が出てくるため、早い段階で区別しておくことが重要です。

もっとも、これらをすべて整理してからでなければ弁護士に相談できないわけではありません。現時点で分かる範囲を整理できていれば十分で、金額が分からない債務や見つからない資料、整理しきれない取引がある場合には、その点も含めて相談時に伝えることができます。弁護士と一緒に資料や事実関係を確認しながら整理していくことも、法人破産の準備の一部です。

事業をいつ止めるかは、資金繰り・従業員・取引先をまとめて考える

法人破産を考え始めたとき、経営者にとって難しい判断の一つが、「いつまで営業を続けるのか」という問題です。法人破産を検討しているからといって、その日のうちに営業を停止しなければならないわけではありません。一方で、資金が尽きるまで営業を続ければよいとも限りません。

判断する際には、現在の手元資金、今後の売上・売掛金の入金予定、給与や家賃などの支払予定、現在受注している仕事を完了できるか、新たな契約を履行できる見込みがあるか、申立てに必要な費用を確保できるかなどをまとめて確認します。

事業を停止する時期は、従業員への説明や解雇、取引先への連絡、店舗・事務所の明渡し、在庫や預り物の管理にも影響します。そのため、「資金がなくなった日を廃業日にする」という単純な問題ではなく、会社全体の状況を見ながら順序を決める必要があります。

特に、返済や履行の見込みが十分でない状態で新たな借入れや取引を続けることには別の問題が生じる可能性があります。事業をいつ止めるか迷っている段階であれば、完全に資金が尽きるまで判断を先送りするのではなく、その時点の資金繰りと今後の支払予定を整理しておくことが重要です。

帳簿・通帳・契約書・電子データを保全する

会社の状況を正確に説明するためには、資料の保全が欠かせません。決算書、試算表、総勘定元帳、会計ソフトのデータ、資金繰り表、通帳、請求書、領収書、借入契約書、リース契約書、賃貸借契約書などを整理しておきます。

あわせて、履歴事項全部証明書、定款、株主関係資料、印鑑関係資料、許認可関係書類といった会社の基本資料も確認しておくと、後の手続がスムーズになります。

見落とされやすいのが、メール、クラウドストレージ、販売管理システム、会計ソフト、契約管理システムなどのログイン情報です。これらは会社の財産状況や取引状況を把握するうえで参照が必要になることがあります。個人情報や営業秘密を含むデータについては、漏えいを防ぎながら、必要な引継ぎができる状態を保っておく視点が求められます。

帳簿やデータをどれだけ整理・保存できているかは、後の説明のしやすさに直接影響します。「資料が散らばっている」状態自体が直ちに問題になるわけではありません。まずは削除・廃棄せず、どこに何があるのかを把握するところから始めれば十分です。

従業員・取引先・契約関係を確認する

従業員がいる場合は、従業員数、未払賃金、退職金、社宅の有無、雇用保険・社会保険の加入状況を確認します。破産手続開始決定が出たこと自体によって、従業員との雇用契約が当然に終了するわけではありません。事業を停止し、解雇を行う場合には、解雇予告や解雇予告手当、未払賃金、退職金、社会保険・雇用保険に関する手続などをあわせて検討する必要があります。

未払賃金の一部については、未払賃金立替払制度を利用できる場合がありますが、対象となる賃金の種類・期間・金額には要件や上限があり、未払分がすべて補償される制度ではありません。

契約関係についても、賃貸借契約、リース契約、継続的な取引契約、保守契約、業務委託契約、預り金や預り物の有無を確認しておきます。破産手続開始決定が出たとしても、すべての契約が当然に終了するわけではなく、履行が済んでいない契約については、その後の手続の中で扱いが検討される場合があります。

資金繰りが厳しいときに、自己判断で進めないほうがよい対応

資金繰りが厳しくなってくると、長年付き合いのある取引先や、生活のかかっている従業員、あるいは身近な親族への支払いを優先したいと考えるのは、決して不自然なことではありません。

ただし、特定の債権者への返済、担保の設定、資産の売却、役員報酬の支給、会社資金の移動といった行為は、時期や金額、相手方、そのときの会社の財務状況によって、後に問題となる可能性があります。こうした行為が常に違法・無効になるわけではありませんが、破産手続の中で説明を求められたり、否認や責任追及の対象として検討されたりすることがあるため、自己判断で進めるのではなく、事実関係を整理したうえで確認することが望まれます。

特に、親族や関係会社への資産移転、名義変更、市場価格から大きく外れた安値での売却、通帳や帳簿の廃棄・改ざん、会社資金の私的な利用は、慎重な確認が必要な行為として意識しておきたいところです。また、返済や履行の見込みが十分でない状態での新規の借入れや新規取引も、相手方との関係で問題になる場合があります。

「これをすれば違法になる」と一律に線を引くことは難しいものの、判断に迷う行為があれば、実行する前に事実関係を整理し、必要に応じて専門家に確認するという順序を踏むことで、後になって説明に窮する事態を避けやすくなります。

申立ての準備では、費用・権限・連絡方法も確認する

法人破産の申立てには、申立手数料、郵券、官報公告費用、予納金、弁護士費用などが必要になります。資金が尽きる直前まで事業を続けてしまうと、申立費用そのものの確保が難しくなり、選択できる方法が狭まってしまう場合があります。とはいえ、「申立費用を残すために、どの支払いを止めるべきか」は会社ごとの状況によって異なり、一律に決められるものではありません。

会社自身が申立てを行う場合には、代表者の権限、社内の意思決定手続、会社の実印や必要書類の所在なども確認しておきます。

弁護士に依頼した場合、債権者への受任通知が出されることがあります。受任通知は、債権者からの連絡窓口を整理するうえで役立つ場合がありますが、通知が出されたことだけで、差押えや訴訟、担保権の実行といった法的な手続が当然に止まるわけではありません。

これらの準備を一通り確認できると、「今どこまで整理できていて、何が足りないか」が見えやすくなります。法人破産を申し立てると決める前の段階でも、この整理自体が、事業を続けるのか、いつ停止するのか、別の方法を検討できるのかを判断する材料になります。

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法人破産の手続きの流れ|申立てから破産手続開始決定まで

法人破産の手続きは、会社側で申立ての準備が整った段階から、裁判所への申立て、審理、破産手続開始決定という順序で進みます。実際の申立てでは、弁護士を申立代理人として、申立書の作成や裁判所とのやり取りを進めることが一般的です。代表者が裁判所手続を一人で進めるというよりも、弁護士から必要な資料や確認事項について説明を受け、それに沿って資料を準備し、会社の状況を説明していくことになります。

以下では、申立代理人が行う手続も含めて全体の流れを説明します。代表者としては、「自分で何をしなければならないか」というより、申立て後にどのような手続が進み、どの場面で資料の提出や説明が必要になるのかを把握しておくとよいでしょう。

裁判所へ破産申立てを行う

法人破産の申立ては、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に対して行うことが基本ですが、主たる営業所や事務所の所在地、他の関連事件の有無などによって管轄が異なる場合があります。実際にどの裁判所に申し立てるかは、事前に確認しておく必要があります。

申立てにあたっては、申立書のほか、債権者一覧表、財産目録、収支に関する資料、直近の決算書、預金通帳の写し、主要な契約書、登記事項証明書などの提出が求められるのが一般的です。どこまで詳細な資料を求められるか、書式がどのようなものかは、裁判所の運用や会社の規模・事案の複雑さによって異なります。

なお、本記事は主に会社側から申立てを行う場面を想定していますが、法人破産は債権者からの申立てによって始まる場合もあります。債権者申立ての手続や留意点は、会社側からの申立てとは異なる部分があるため、ここでは詳しく扱いません。

申立費用・予納金を納める

裁判所への申立てには、申立手数料、郵便切手代、官報公告費用のほか、予納金の納付が必要になります。予納金は、破産管財人が財産調査や換価などの業務を行うための費用に充てられるものです。

法人破産では、個人の破産と異なり、破産管財人が選任されることが通常です。そのため、一定額の予納金が必要になる場合が多くなります。具体的な金額や、少額管財等の運用を利用できるかどうかは、裁判所や会社の資産・負債の内容によって異なります。費用の金額感については、後の章で整理します。

裁判所の審理を経て、破産手続開始決定が出される

申立て後、裁判所は提出された書類や会社の状況をもとに、支払不能または債務超過といった破産手続開始の原因があるかどうかを確認します。この過程で、代表者に対する審尋が行われたり、追加の資料提出を求められたりすることがあります。

裁判所が破産手続開始の要件を満たすと判断すると、破産手続開始決定が出されます。この開始決定とあわせて、通常は破産管財人が選任されます。開始決定により会社は解散しますが、財産の整理や債権者対応のための手続はここから本格化するため、会社に関する処理がこの時点ですべて終わるわけではありません。

また、開始決定の内容や、今後の債権届出に関する情報は、裁判所を通じて債権者に通知されます。

開始決定直後に、代表者が対応すること

開始決定が出されると、会社財産の管理・処分権限は破産管財人に移ります。そのため、代表者が独自の判断で預金を引き出したり、在庫や設備を処分したりすることはできなくなります。

この段階で代表者が行うこととして、会社財産、帳簿、預金通帳、契約書、印鑑、鍵、会計データ、各種システムのIDやパスワードなどを破産管財人に引き継ぐ作業があります。あわせて、過去の資金移動や取引内容、役員との貸し借り、財産の処分状況などについて、管財人から説明を求められることもあります。

なお、開始決定が出たからといって、会社の営業活動がすべて即座に停止するとは限りません。在庫の処分、売掛金の回収、事業譲渡の検討などのため、管財人の判断により、一定の範囲で事業が継続されることもあります。

従業員や取引先への連絡についても、情報が錯綜すると混乱を招きやすいため、申立代理人や破産管財人と連携しながら進め方を確認しておくと、その後の対応を見通しやすくなります。

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開始決定後から手続終了まで|管財人による調査・換価・債権者対応

破産手続開始決定が出ると、会社財産の管理・処分は破産管財人に引き継がれます。ここからは、会社が主体的に動く局面から、管財人による調査・換価・債権者対応を経て手続が終わるまでの局面に移ります。代表者にとっては、会社を管理する立場から、管財人の調査に協力する立場へと役割が変わる時期でもあります。

破産管財人が行う主な業務

破産管財人は、開始決定と同時に選任され、会社財産の保全・管理・換価を進めます。具体的には、預金や現金の管理、売掛金の回収、在庫・設備・不動産などの売却、賃貸借契約やリース契約など未履行の契約について履行するか解除するかの判断などが含まれます。

あわせて、帳簿や通帳、資金移動の履歴、役員との取引状況についても調査が行われます。これは不正を疑うためだけではなく、会社の財産状況を正確に把握し、債権者への説明や換価・配当の判断につなげるためのものです。調査の結果によっては、債権回収のための訴訟や、一定の財産処分を後から取り消す否認権の行使が検討されることもあります。

代表者は、こうした調査に対して、資料の提供や説明を求められる場面が続きます。何を、いつ、なぜ行ったのかを事実に沿って説明できる状態にしておくことが、管財人による調査や財産整理を進めるうえでの前提になります。

担保付きの財産、リース物件、預り物は扱いが異なることがある

会社財産のすべてが同じように扱われるわけではありません。不動産や設備に抵当権・質権・譲渡担保などの担保権が設定されている場合、その担保権を持つ債権者は、一般の債権者とは異なる立場で権利を行使できる場合があります。

また、リース物件やレンタル品、所有権留保付きの商品、顧客から預かっている物品などは、そもそも会社自身の財産とはいえない場合があります。これらについては、返還や引渡しの要否が別途問題になることがあります。

どの資産にどのような権利関係が付いているかは、契約書や登記事項を確認しないと判断しにくい部分です。会社側で独自に返還や売却、処分を進めるのではなく、管財人との調整を経て扱いが決まっていく点は、あらかじめ理解しておくと戸惑いが少なくなります。

債権届出と債権者集会は何のために行われるか

開始決定後、裁判所が債権届出の期間を定めた場合には、債権者は裁判所からの通知や指定された方法に従って、自らの債権を届け出ることになります。届出や債権調査の進め方は、事件の内容や裁判所の運用によって異なり、届け出られた債権額や優先関係について争いがある場合には、確認作業に時間を要することもあります。

税金や社会保険料、未払賃金、担保付き債権などは、一般の取引債権とは異なる優先関係が問題になる場合があります。それぞれがどのような扱いになるかは、種類や発生時期によって変わるため、個別に確認が必要です。

手続の中では、債権者集会が開かれ、破産管財人から財産状況や調査の進捗、換価・配当の見通しなどが報告されます。法人破産では、代表者も通常、申立代理人弁護士とともに債権者集会に出席することになります。必要に応じて、裁判所や出席した債権者から質問を受けることもあります。

もっとも、債権者集会で突然すべてを一人で説明しなければならないというものではありません。具体的な進行や当日の対応については、事前に申立代理人や破産管財人から説明を受けながら準備していくことになります。

配当がある場合・ない場合で、手続の終わり方は異なる

財産の換価が進み、手続費用などを控除してなお配当に充てられる財源が残る場合には、債権者への配当が行われたうえで、手続が終結します。一方で、配当に充てられる財産が残らない場合などには、配当を行わないまま、裁判所の判断によって手続が廃止されることがあります。

どちらの形で終わるかは、会社に残っていた資産の内容や、売掛金・不動産の回収状況、調査の進み具合などによって異なります。「配当がないから早く終わる」「法人破産は必ず配当まで進む」といった一律の見方はできません。

破産手続が終わると、会社はどうなるか

会社は破産手続開始決定によって解散しますが、破産手続による清算を行うため、手続中はその目的の範囲で法人として存続します。破産管財人による財産の換価や配当などが終了し、破産手続が終結すれば、通常は会社の清算も終了し、法人格は消滅します。

そのため、通常の法人破産では、破産手続が終わった後に、元の代表者が改めて会社を清算するための手続を一から行うわけではありません。ただし、破産手続の終了後にも処理すべき財産が残っているなど、例外的に別途清算が必要になる場合があります。

なお、会社がなくなることと、代表者個人の保証債務がなくなることは別の問題です。代表者が会社債務を連帯保証している場合には、会社の破産手続が終了しても、個人側の保証債務について別途対応する必要があります。

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法人破産の期間・費用|手続の見通しを左右するもの

法人破産を検討するとき、「いつ終わるのか」「いくら用意しておけばよいのか」は、経営者にとって重要な判断材料です。特に費用は、会社の資金が完全になくなってから考えるのでは遅い場合があります。期間と費用は一律には決まりませんが、何によって変わるのかと、おおまかな金額感は把握しておきたいところです。

期間は「申立て準備」と「開始決定後の管財手続」に分けて考える

法人破産にかかる期間は、大きく二つの段階に分けて考えると見通しが立てやすくなります。

一つは、申立てまでの準備期間です。これは、資産・負債の把握状況、帳簿や資料の整備状況、従業員や取引先への対応、申立費用の準備などによって左右されます。資料がある程度整理された状態であれば比較的短期間で申立てに進めることもありますが、資料が散逸していたり、確認すべき契約関係が多かったりする場合は、その分だけ時間を要します。

もう一つは、開始決定後、破産管財人による調査・換価が進む期間です。こちらは、会社財産の内容、売掛金の回収状況、不動産や在庫の売却の有無、係属中の訴訟の有無、債権者数、資金移動の調査範囲などによって変わります。財産関係が比較的単純な事案でも、開始決定から手続終了までは通常数か月を要します。不動産の売却や訴訟対応、複雑な資産調査などが必要な場合には、半年、1年と長期化することもあります。

「法人破産は必ず○か月で終わる」と一律に見込むことは難しく、自社の資産・契約関係の複雑さがどの程度かを把握しておくことが、期間の見通しを立てる手がかりになります。

費用は、裁判所費用・予納金・弁護士費用に分けて考える

法人破産にかかる費用は、大きく、裁判所へ納める申立手数料・郵券・官報公告費用、破産管財人の業務に充てられる予納金、申立てを依頼する弁護士費用に分けて考えることができます。

具体的な金額は、会社の規模、財産の内容、債権者数、申立先裁判所の運用、事案の難易度などによって異なりますが、法人破産では、裁判所費用だけでなく弁護士費用も必要になるため、全体として数十万円では収まらず、100万円前後またはそれ以上の費用が必要になるケースもあります。

また、会社の借入れについて代表者が連帯保証をしており、会社とあわせて代表者個人も自己破産する場合には、代表者個人の申立てにかかる弁護士費用として、さらに数十万円程度が必要になることがあります。会社と代表者を同時に申し立てる場合の裁判所費用や予納金の扱いは、申立先の裁判所や事案によって異なります。

さらに、事案によっては、在庫の保管費用、事務所や店舗の明渡し費用、従業員対応にかかる費用、データ保全にかかる費用などが生じることもあります。そのため、「借金を払えなくなるまで営業を続け、その後で破産費用を考える」という順序では、申立てに必要な資金まで不足する可能性があります。

法人破産を検討し始めた段階では、借入金の残額だけを見るのではなく、現在の手元資金から、今後の給与や家賃などの支払いと、会社・代表者の手続に必要となる費用をどのように確保するのかも含めて考えることが重要です。

法人破産を検討し始めた段階の整理チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、法人破産を検討し始めた段階で確認しておきたい事項を整理します。申立てをすると決めた後の最終確認ではなく、今の会社がどのような状態にあるのかを把握するための整理として使ってください。

すべての項目を確認し、資料を完璧にそろえてから相談する必要はありません。現時点で分かる範囲を整理し、分からないことや資料が見つからないことも含めて弁護士に伝えれば、その後に何を確認すべきかを一緒に整理していくことができます。資金繰りが厳しい状況では、資料をそろえることに時間をかけすぎるより、整理できていない部分を残したまま相談することも選択肢です。

会社の現状を知るための確認

  • 資産、負債、債権者、直近の支払予定を一覧化したか
  • 預金、売掛金、在庫、不動産、保険、保証金などを確認したか
  • 担保、リース、所有権留保、預り物の有無を確認したか
  • 事業を継続するための具体的な資金・収益改善策があるか
  • 現在の資金で、いつまで事業を続けられるか確認したか

会社をたたむ場合の影響を見通すための確認

  • 代表者の連帯保証、担保提供、会社と個人の資金関係を確認したか
  • 会社とあわせて代表者個人の債務整理が必要になる可能性を確認したか
  • 未払賃金、退職金、従業員対応、社会保険・雇用保険の状況を確認したか
  • 賃貸借、リース、主要取引先との継続契約を確認したか
  • 税金、社会保険料、許認可、預り金・個人情報の状況を確認したか
  • 法人破産の申立てに必要となる費用を確保できるか

自己判断で進めないための確認

  • 帳簿、通帳、会計データ、メール、契約書を保全したか
  • 特定債権者だけへの返済や不自然な財産処分を進めていないか
  • 会社資金を個人資金と混在させていないか
  • 新規借入れ・新規取引について、履行可能性を十分に確認しているか
  • 事業停止や従業員・取引先への連絡を、順序を決めずに進めようとしていないか

法人破産をするかどうかを、最初から決めておく必要はありません。まず確認したいのは、会社にどれだけの資産・負債があり、手元資金がいつまで持つのか、事業を続ける具体的な見込みがあるのかという現在の状況です。

そのうえで、代表者の保証関係、従業員、取引先、契約関係、申立てに必要な費用まで整理すると、「事業を続けるのか」「いつ会社を止めるのか」「法人破産以外の方法が残っているのか」といった次の判断がしやすくなります。

特に、差押えが迫っている、給与の支払いが難しい、代表者保証がある、会社財産を処分する必要がある、申立費用まで不足しそうといった事情がある場合には、対応の順序そのものが重要になります。会社をたたむことだけを先に決めるのではなく、まず今ある事実を整理し、その会社と経営者にとって現実的な方法を検討していくことが法人破産を考える出発点です。