発信者情報が開示された。

この瞬間、いちばん怖いのは「次に何が来るのか分からない」ことです。

いきなり訴状が届くのか。

高額の請求が来るのか。

会社や家族に連絡が行くのか。

そして、もう戻れないのか。

でも現実は、一直線ではありません。

開示=即裁判、でもない。

開示=即破滅、でもない。

この段階から先は、

「相手が何を目的にしているか」と、

「こちらがどこで止めたいか」で、分岐します。

この記事では、

開示後に起こりやすい流れを、順番と分岐で整理します。

怖がらせるためではなく、

慌てずに“次の一手”を選べるようにするためです。

「開示された」といっても、まずは届いた通知書・請求書の内容を確認してください。

相手の言い分の段階なのか、正式に開示を受けた前提で話が進んでいるのかで、動き方が変わります。

なお、まだ「意見照会の段階」で混乱している人は、
先にそちらを整理しておくと、見え方が安定します。

発信者情報開示の意見照会とは?届いたらどうなるか(無視のリスクも含めて解説)

発信者情報が開示された後、まず何が起きるのか

この段階で、多くの人が想像するのは「次は裁判だ」という流れです。

でも実務では、いきなり訴状が届くケースはそこまで多くありません。

まず起きやすいのは、「連絡」です。

相手本人からの通知。

あるいは、弁護士名義の内容証明郵便。

そこに書かれているのは、

  • 投稿が権利侵害にあたるという主張
  • 謝罪や削除の要求
  • 損害賠償の請求額
  • 回答期限

つまり、開示=即裁判ではなく、

「まずは直接の請求・交渉に入る」という流れが一般的です。

ここで大事なのは、相手の“目的”を見ることです。

相手が本当に欲しいのは何か。

お金なのか。

謝罪なのか。

再発防止なのか。

あるいは、公開の訂正なのか。

目的によって、その後の動きは変わります。

たとえば、

被害の拡大を止めたいだけなら、早期の謝罪や削除で収束することもあります。

一方で、

名誉や営業への影響が大きい場合は、損害賠償請求が中心になることがあります。

そしてもう一つ。

開示されたからといって、必ず何かが起きるとも限りません。

費用対効果。

証拠の厚み。

相手側の体力や方針。

そうした事情で、請求が来ないケースもゼロではありません。

だから、ここで持つべき視点は一つです。

「直線ではなく、分岐で見る」

開示はゴールではありません。

むしろ、次の交渉段階への入口です。

ここから先は、

① 通知・請求で収束するのか。

② 訴訟まで進むのか。

③ 何も起きずに止まるのか。

この三つのどこに向かうかを、冷静に見ていくことになります。

次に、その典型的なルートを整理します。

開示後の典型ルートは3つある

発信者情報が開示されたあと、流れは一つではありません。

実務で見ると、大きく三つのルートに分かれます。

① 交渉で終わるルート

いちばん多いのは、まず通知や請求が届き、そこから話し合いに入るパターンです。

内容証明郵便や弁護士名義の書面で、

  • 謝罪
  • 投稿削除
  • 訂正・反論文の掲載
  • 損害賠償金の支払い

といった要求が示されます。

ここで示談が成立すれば、訴訟には進みません。

金額も、裁判基準より柔軟に調整されることがあります。

双方が「ここで終わらせる」判断をすれば、比較的早期に収束します。

② 訴訟まで進むルート

交渉がまとまらない場合、損害賠償請求訴訟に進むことがあります。

ここからは公開の場での争いになります。

裁判では、主に次の点が争点になります。

  • その投稿は違法か(名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害など)
  • 同定可能性はあるか
  • 公共性・公益目的はあるか
  • 真実性または真実相当性はあるか
  • 損害はいくらか

時間はかかります。

精神的負担も大きくなります。

ただし、必ず高額になるわけではありません。

慰謝料の水準は、内容・影響範囲・悪質性で大きく変わります。

③ 実質的に止まるルート

開示されたものの、その後請求が来ないケースもあります。

理由はいくつか考えられます。

  • 損害の立証が難しい
  • 費用対効果が合わない
  • 感情の整理がついた
  • 別の手段で収束した

ただし、このルートは「安心していい」という意味ではありません。

一定期間は動きがなくても、後から請求が来る可能性はあります。

だから重要なのは、

「開示された=必ず裁判」ではないこと。

そして、「何も起きない=安全確定」でもないこと。

発信者情報の開示は、責任の可能性が現実に近づいた段階です。

ここからは、

・早く終わらせるか

・争うか

・様子を見るか

この判断を、状況に応じて設計する局面になります。

次は、多くの人が一番気になる部分、

「実際、いくらくらい請求されるのか」という現実を整理します。

実際いくら請求されるのか

発信者情報が開示されたあと、いちばん気になるのは金額です。

「いくら請求されるのか。」

「人生が終わる額なのか。」

不安は、ここに集まります。

まず前提として、請求額と、最終的に認められる額は、同じとは限りません。

むしろ、多くの場合は違います。

① 請求書に書かれる金額

示談交渉の段階では、比較的高めの金額が提示されることがあります。

200万円や300万円、内容によってはそれを超える請求が来ることもあります。

ここで重要なのは、

「請求額=裁判で確定する額」ではないということです。

示談は交渉です。

ある程度の“幅”を見込んで提示されることが多く、提示額には、交渉の余地を残すための「上振れ」が含まれることがあります。

逆に、証拠や違法性の見通しが弱い案件では、強気の額でも実際は動かないこともあります。

② 「高額請求=終わり」ではない

請求書に大きな金額が書いてあると、思考が止まります。

でも、ここで止まるのが一番危ない。

見るべきなのは金額だけではありません。

  • 投稿は本当に違法評価される可能性が高いのか
  • 同定可能性は強いか
  • 真実性や公益性の主張余地はあるか
  • 拡散の規模はどの程度か

金額は、法的評価の“結果”です。

評価の強度が弱ければ、交渉の余地は広がります。

③ 示談の現実

実務では、裁判基準よりやや低めで収束するケースもあれば、

早期解決のためにやや高めで終えるケースもあります。

大切なのは、

「いくら払えるか」だけで判断しないことです。

払える額ではなく、

どこで区切るのが合理的か。

ここを考えます。

争えば減る可能性がある。

でも時間と負担は増える。

早く終わらせれば精神的負担は減る。

でも金額はやや高めになることもある。

正解は一つではありません。

だから、

「怖いから払う」でもなく、

「絶対払わない」でもなく、

状況を分解して選びます。

開示後は、感情より構造です。

金額だけを見ると不安が膨らみます。

争点を見ると、判断材料になります。

示談交渉:ここで決まるのは「金額」だけではない

発信者情報が開示された後、多くの場合、最初に来るのは「損害賠償請求書」や「示談の提案書」です。

ここで多くの人が考えるのは、いくら払うことになるのか、という一点です。

でも、示談交渉で決まるのは金額だけではありません。

むしろ、本当に影響が残るのは「条件」の方です。

示談は、単なる支払いのやり取りではありません。

これで何を終わらせ、何を残さないかを決める「契約」です。

① 何を求められやすいか

示談交渉で求められやすい内容は、次のようなものです。

  • 一定額の損害賠償金の支払い
  • 謝罪文の提出(場合によっては公開)
  • 投稿の削除
  • 訂正文の掲載
  • 今後同様の投稿をしないという約束(再発防止条項)
  • 守秘義務(口外禁止)

ここで重要なのは、これらは「組み合わせ」で提示されることが多いという点です。

金額を下げる代わりに謝罪文を出す。

支払いは抑える代わりに守秘義務を強くする。

条件は、交渉の中で動きます。

つまり、示談は「いくら払うか」ではなく、

「何と引き換えに終わらせるか」を決める場です。

② 示談は“記録を残す契約”である

示談が成立すると、通常は示談書を作成します。

この示談書は、後から覆すことが極めて難しい正式な契約です。

ここで特に重要になるのが、次のような条項です。

  • 清算条項(これで全て解決したと確認する条項)
  • 蒸し返し防止条項
  • 違約金条項
  • 守秘義務条項
  • 謝罪文の内容・公開範囲

たとえば、清算条項が曖昧だと、後から追加請求が来る可能性を残します。

守秘義務の範囲が広すぎると、家族や職場にすら説明できなくなることがあります。

違約金が高額に設定されていると、軽い違反でも大きな負担になります。

示談は「終わらせる」ためのものですが、

中身次第では「縛りを残す」契約にもなります。

③ 交渉の落とし穴

示談交渉の場面で、やってしまいがちな失敗があります。

一つ目は、軽い自白です。

「ちょっと言い過ぎました」「確認不足でした」といった一文が、違法性を確定させる材料になることがあります。

二つ目は、追加投稿です。

「事実を説明しただけ」と思っても、交渉中にさらに投稿をすると、悪質性を補強する材料になります。

三つ目は、SNSでの反論です。

「言論の自由だ」「圧力だ」と投稿すると、そのスクリーンショットがそのまま証拠になります。

交渉中は、沈黙も戦略の一つです。

感情で動くほど、条件は悪くなります。

④ 金額は“相場”ではなく“事情”で動く

損害賠償の金額には、一定の傾向はあります。

しかし、実際の金額は投稿内容の強度、拡散状況、悪質性、反省の有無、削除対応などで動きます。

早期削除や謝罪があれば下がることもあります。

反発や追加投稿があれば上がることもあります。

金額は固定されたものではなく、行動で変わります。

⑤ 「勝つ」より「終わらせ方」を設計する

示談交渉で大切なのは、勝ち負けではありません。

どこで区切るかです。

長期化すれば、時間も費用も精神的負担も増えます。

裁判に進めば、公開の場での争いになります。

一方で、早期に整理すれば、生活への影響を最小限にできることもあります。

示談は、金額の交渉ではなく、出口の設計です。

仕事を守るのか。

家族への影響を抑えるのか。

原則を通すのか。

何を守りたいのかを決めないまま交渉に入ると、判断が揺れます。

発信者情報が開示された後は、すでに匿名ではありません。

ここからは、現実の生活と直結する段階です。

だからこそ、感情より構造。

反射より設計。

それが、負担を最小限にする道になります。

示談で終えると決めたときに大事なのは、
「何を約束するか」だけでなく、
「どこまでを約束しないか」も含めて出口を設計することです。

示談書(和解書)で揉めやすい条項や、
入れがちな落とし穴は、別の記事で整理します。

支払うことになりやすい費目

発信者情報が開示された後、示談や裁判で問題になるのは「いくら払うか」ですが、

実際には、その中身はいくつかの費目に分かれています。

ここを構造で押さえておくと、

請求書の見え方が変わります。

① 慰謝料(精神的損害)

もっとも中心になるのが、慰謝料です。

名誉毀損やプライバシー侵害などによって受けた精神的苦痛に対する賠償です。

ただし、慰謝料は「一律いくら」というものではありません。

裁判所が考慮するのは、たとえば次のような事情です。

  • 投稿内容の強さ(断定か、意見か、誇張か)
  • 事実の有無や裏付けの程度
  • 拡散の規模(閲覧数、リツイート、まとめ転載など)
  • 投稿の継続性(単発か、繰り返しか)
  • 削除や謝罪の有無
  • 被害者側の社会的立場や影響の大きさ

同じ「悪口」でも、

影響の範囲と悪質性で金額は大きく変わります。

だから、ネット上で見かける「相場○万円」といった数字は、

そのまま自分に当てはまるとは限りません。

一般的な傾向としては、

  • 軽度の投稿:数万円〜30万円前後
  • 影響が一定程度ある場合:30万円〜80万円前後
  • 悪質・拡散大・社会的影響大:100万円前後またはそれ以上

※ここでの数値は、あくまで傾向を掴むための目安で、事案によって大きく上下します。

② 調査費用(発信者情報開示にかかった費用)

次に問題になりやすいのが、調査費用です。

具体的には、発信者情報開示手続に要した費用が含まれます。

  • 弁護士費用(開示手続分)
  • 裁判所への申立費用
  • ログ保存や調査にかかった実費

被害者側は、「あなたの投稿がなければ、この費用は発生しなかった」と主張します。

もっとも、すべてがそのまま認められるわけではありません。

必要性や相当性の範囲で調整されることが多いです。

③ 弁護士費用(損害賠償請求に関する相当額)

さらに、損害賠償請求そのものに関する弁護士費用の一部が、

「相当額」として加算されることがあります。

実務上は、慰謝料額の一定割合(例えば1割程度)が認められることが多いですが、

これも事案次第で変動します。

ここで注意が必要なのは、

「実際に支払った弁護士費用=全額そのまま請求できる」わけではない、という点です。

裁判所は、あくまで“相当な範囲”で判断します。

④ 金額は“投稿の強度と影響”で幅が出る

全体として言えるのは、

金額は固定された表では決まりません。

投稿の強度。

拡散の規模。

被害の現実性。

投稿後の対応(削除・謝罪・反論の仕方)。

こうした要素が重なって、幅が出ます。

逆に言えば、

金額は“過去の投稿”だけでなく、“その後の行動”でも動きます。

示談交渉では、

請求額そのものに驚くよりも、

その内訳がどう組み立てられているかを冷静に見ることが重要です。

金額は感情で見ると大きく見えます。

構造で見ると、交渉の余地が見えてきます。

裁判になると何が増えるのか

示談で終わらず、訴訟に進んだ場合。

増えるのは「金額」だけではありません。

時間。

費用。

精神的な負担。

そして、記録です。

① 時間が増える

裁判は、数週間で終わるものではありません。

数か月、場合によっては1年以上続くこともあります。

期日が入り、準備書面を出し、反論が返り、再反論が出る。

この往復が積み重なります。

その間、

「終わっていない状態」が続きます。

これが想像以上に消耗します。

② 費用が増える

訴訟になれば、

弁護士費用も本格的にかかります。

さらに、敗訴すれば、

慰謝料に加えて遅延損害金や訴訟費用の負担が生じることもあります。

「争えばゼロになる」わけではありません。

争った結果、負担が増える可能性もあります。

③ 精神的負担が増える

裁判は、法的な争いであると同時に、

自分の投稿が公の場で評価される過程でもあります。

準備書面に、自分の言葉が引用される。

違法性が論じられる。

過失の有無が検討される。

これを何度も読むことになります。

生活と並行して続くため、

思っている以上に心を削ります。

④ 記録が残る

判決になると、裁判所の判断が文章として残ります。

事件の性質によっては、公的な形で参照される可能性もあります。

「その場のやり取り」では終わらない、という点は押さえておくと安全です。

⑤ 裁判で争われるポイント

訴訟になると、争点は感情ではなく、構造で整理されます。

典型的には、次のような点です。

  • 同定可能性(その投稿が原告を指していると分かるか)
  • 真実性・真実相当性(事実の裏付けがあるか)
  • 公共性・公益目的(社会的意義があるか)
  • 違法性阻却の有無
  • 過失の有無(軽率だったかどうか)
  • 損害の範囲と金額

ここで重要なのは、

裁判は「気持ちが正しいか」ではなく、

「要件が満たされているか」で判断されるということです。

だからこそ、

示談で止めるか、裁判で争うかは、

意地ではなく、コストとリスクで考える必要があります。

裁判は悪ではありません。

でも、軽く踏み込む場所でもありません。

増えるものを理解した上で、選ぶ。

それが、後悔を減らす判断につながります。

開示後に「やってはいけないこと」

発信者情報が開示されたあと。

いちばん危ないのは、「パニックのまま動く」ことです。

この段階では一般に、

すでに相手はあなたの氏名や住所を把握している可能性があります。

だからこそ、動き方を誤ると、状況は一気に悪化します。

匿名や距離感の感覚が崩れると、
状況は一気に悪化します。

匿名投稿がどんな条件で「特定」に近づくのかは、
こちらで整理しています。

匿名の書き込みは本当にバレない?特定される仕組みを解説

① 無視を続ける

請求書や内容証明が届いても、

「そのうち何とかなる」と放置する。

これは一番リスクが読めなくなる行動です。

無視をすると、

相手は「交渉の余地がない」と判断し、

訴訟に進みやすくなります。

返すか争うかは別として、

何らかのリアクションは必要です。

② 感情的な返信

腹が立つ。

言い分がある。

納得できない。

そのままメールや書面でぶつける。

これは火に油です。

攻撃的な表現や挑発的な一文は、

交渉を難しくするだけでなく、

新たな紛争の材料にもなり得ます。

開示後のやり取りは、

「感情」ではなく「出口設計」の場です。

③ 追加投稿・SNSでの反論

一番やってはいけないのがこれです。

「言い分を書きたい」

「相手のほうがひどいと伝えたい」

その気持ちは自然ですが、

追加投稿は、損害を拡大させます。

新しい投稿は、

新しい請求の対象になります。

訴額が増えることもあります。

開示後は、沈黙が戦略になる場面もあります。

④ 証拠隠し・データ削除

投稿を削除する。

アカウントを消す。

端末を初期化する。

焦ってやりがちです。

ただ、削除は“解決”ではありません。

すでに証拠が保全されていることもありますし、動き方によっては心証に影響することもあります。

「なかったこと」にする行動は、

状況を良くするとは限りません。

削除やアカウント対応は、目的(拡散防止/再発防止)と手続状況を踏まえて、必要なら専門家に確認してから判断するのが安全です。

⑤ 連絡先を軽率に広げる

職場のメールアドレスを伝える。

会社代表番号を窓口にする。

SNSのDMでやり取りする。

これも危険です。

交渉の場が広がると、

生活や職場に波及する可能性があります。

連絡手段は、限定的に。

できれば、専門家を窓口にする。

これだけで、波及リスクは大きく下がります。

共通するポイント

開示後に大切なのは、

「取り返そう」とすることではありません。

「これ以上広げない」ことです。

無視しない。

煽らない。

増やさない。

隠さない。

この四つを守るだけで、

状況は必要以上に悪化しません。

開示はゴールではありません。

投稿者側の「最初の一手」チェックリスト

発信者情報が開示されたあと。

大事なのは、「正しいことをする」ことよりも、「順番を間違えない」ことです。

焦ると、動きが散らかります。

散らかると、出口が見えなくなります。

まずは、次の4点だけを順番に確認します。

① 何が請求されているのか(目的の特定)

相手は、何を求めているのか。

  • 金銭(慰謝料・費用)の支払いか
  • 謝罪文の提出か
  • 投稿の削除・訂正か
  • 再発防止の約束か
  • 単に話し合いの場を求めているのか

ここを読み違えると、対応がズレます。

たとえば、相手が「まずは話し合い」と書いているのに、

全面否定の反論を出せば、交渉は硬直します。

逆に、金額提示が明確なら、

争点は「支払うかどうか」ではなく、

「どの条件なら終われるか」に移ります。

まずは、相手の“目的”を言語化します。

② 投稿の証拠固定と時系列整理

次にやるべきは、防御ではなく整理です。

  • 問題とされている投稿の内容
  • 投稿日時
  • 投稿の前後関係(文脈)
  • 削除の有無・時期
  • その後のやり取り

これを時系列で並べます。

記憶は、時間とともに曖昧になります。

感情が混ざると、事実も揺らぎます。

だから、まずは事実だけを並べる。

評価はあとでいい。

この整理ができていないまま交渉に入ると、

その場の勢いで不利な認定をしてしまうことがあります。

③ 返答方針を決める(示談/争う/静観)

ここで初めて、方針を考えます。

  • 早期に終わらせたい → 示談方向
  • 違法性を争いたい → 争う方向
  • 相手の出方を見たい → 一定の静観(ただし無視ではない)

重要なのは、「感情」ではなく「守りたいもの」で決めることです。

仕事か。

家族か。

金銭負担の最小化か。

名誉か。

何を守りたいのかを先に決めないと、

やり取りの途中でブレます。

④ 相談のタイミングを逃さない

相談は、揉めてからより、方針を決める前の方が意味があります。

特に次のような場合は、早めの相談が有効です。

  • 請求額が高額
  • 会社や職場に波及しそう
  • 投稿内容がグレーで判断が難しい
  • 自分の説明が感情的になりそう

開示後は、「何を言うか」よりも、

「どこで止めるか」の設計が重要です。

そして設計は、早いほど選択肢が多い。

まとめ

開示されたあとに必要なのは、

強い反論でも、過度な謝罪でもありません。

① 目的を読む。

② 事実を固定する。

③ 方針を決める。

④ 必要なら早めに相談する。

この順番だけ守れば、

状況はコントロール可能な範囲に戻せます。

開示は終わりではありません。

ここからどう終わらせるかが、本当の勝負です。

回答方法に「絶対の正解」はあるのか

内容証明で来たから、内容証明で返さなければならない。

そう思って固まる人がいます。

でも原則として、形式に絶対の正解はありません。

大切なのは「届くこと」と「記録が残ること」です。

① 通知書に書かれている連絡方法をまず確認する

代理人弁護士の住所が書かれているなら書面で送る。

FAX番号があればFAXも可能。

メールアドレスが明記されていればメールでも足ります。

電話番号があっても、いきなり電話で長時間説明するのは慎重に考えた方がよい場面が多いです。

② 内容証明は「必須」ではない

内容証明は、送った内容と日付を形式的に証明する手段です。

強い意味を持つ場面もあります。

しかし、常にそれが必要というわけではありません。

通常の書留や、受信確認の取れるメールで十分なことも多いです。

重要なのは、形式より中身です。

③ 電話だけで済ませるのは避ける

口頭だけのやり取りは、後から内容が争われることがあります。

話すなら、必ず書面やメールで確認を残します。

意見照会や開示後のやり取りは、

将来そのまま証拠になる可能性があります。

だからこそ、

「強い形式で返す」よりも、

「冷静な内容を、記録が残る形で返す」ことの方が重要です。

二手目・三手目で崩れないために

発信者情報が開示されたあと、多くの人は「最初の返信」で頭がいっぱいになります。

でも本当に差が出るのは、その次です。

一通目で感情をぶつけてしまうか。

それとも、交渉の構造を整えるか。

ここで、その後の負担が大きく変わります。

① いきなり“全部”説明しない

請求書や内容証明が届くと、

「全部説明しなければ」と思いがちです。

でも、一度送った文章は戻せません。

不用意な一文が、争点を固定してしまうことがあります。

まずは、何を争うのか、何を争わないのかを分けます。

全面回答は、その整理ができてからでも遅くありません。

② 事実と評価を分ける

交渉が混乱する原因の多くは、

「事実」と「評価」を混ぜてしまうことです。

その投稿をしたかどうかという事実の問題。

その投稿が違法かどうかという評価の問題。

金額が妥当かどうかという条件の問題。

これを分けて考えるだけで、議論は整理されます。

③ 主語を“感情”にしない

「納得できない」「ひどい」「やりすぎだ」。

気持ちは自然です。

でも交渉は、感情では進みません。

進むのは、条件です。

何を認めるのか。

何を否定するのか。

いくらなら終わるのか。

どこまでなら応じられるのか。

主語を条件に置くだけで、消耗は減ります。

④ 書面は“未来の証拠”になる

やり取りは、あとからそのまま裁判資料になる可能性があります。

その前提で読み返すと、送る文章は自然と変わります。

強い言葉は残る。

不用意な認定も残る。

逆に、冷静な整理も残ります。

開示された時点で、状況はすでに一段進んでいます。

だからこそ、次の一手は“反射”ではなく“設計”にします。

感情で返すと、三手目で苦しくなります。

構造で返すと、三手目で選択肢が残ります。

大きく動く必要はありません。

崩れない順番で、小さく整える。

それだけで、出口は変わります。

たとえば最初の返信は、

「受領したこと」「検討して改めて回答すること」「期限調整の希望(必要なら)」

この3点だけで十分な場面もあります。

まとめ:開示後は「分岐を読める人」が崩れない

発信者情報が開示されると、
すべてが一直線に進むように感じます。

損害賠償。
裁判。
支払い。
終わり。

でも現実は、
直線ではありません。

分岐です。

示談で終わることもある。

条件が整わず、請求が弱まることもある。

争って一部だけ責任が認められることもある。

相手が途中で引くこともある。

どの方向に進むかは、

  • 投稿の強度
  • 影響の大きさ
  • 証拠の状況
  • 双方の姿勢

こうした条件で決まります。

だからこそ、
いちばん大事なのは、

「いま何を守りたいか」を先に決めることです。

金額を抑えたいのか。

長引かせたくないのか。

責任を争いたいのか。

生活への波及を最小限にしたいのか。

目的が定まらないまま動くと、
途中で揺れます。

出口を先に置く。

そこから逆算して、

示談か。

交渉か。

裁判か。

どの分岐を選ぶかを決める。

開示後に崩れやすい人と、
崩れにくい人の違いは、
法律知識の量ではありません。

分岐を読めるかどうかです。

直線だと思うと怖い。

分岐だと分かれば、
設計できます。

設計できれば、
生活は守れます。

それが、
この回で伝えたかったことです。

どの段階から整理しますか

インターネット問題は、
必ずしも手続から始まるわけではありません。

いまの自分の状況に合わせて、
整理する段階を選ぶことができます。