示談書(合意書)。

話合いで「終われそう」になったとき、最後に揉めるのがこの紙です。

慰謝料や解決金の金額だけでなく、条項で揉めることも多いです。

口外禁止の範囲が広すぎる。
謝罪が的を得ていない。
再発防止の内容が曖昧で、違反しているかどうかの判断で揉める。
清算内容が弱くて、後から蒸し返される。

示談書は、勝つための文書ではなく、終わらせるための文書です。

このページでは、ネットの誹謗中傷トラブルで、示談書(合意書)に入れることが多い条項のうち、合意前、合意後に揉めやすいポイントを「落とし穴」として整理します。

先に落とし穴を知っておくと、交渉が安定します。
盛りすぎない。
曖昧にしない。
蒸返しを止める。

そのためのチェックリストとして読めるようにしておきます。

まず基本的な書式・ひな形を確認したい人は、先にこちらをどうぞ。
示談書(合意書)テンプレ|蒸返しを止める最小構成(条項例つき)

揉めやすい条項は4つ(口外禁止/謝罪/再発防止/清算)

示談書(合意書)で揉める条項は、実はだいたい決まっています。

ネットの誹謗中傷トラブルで典型的に揉めるのは、次の4つです。

  • 口外禁止(守秘義務)条項

  • 謝罪条項

  • 再発防止(再投稿・再言及の禁止)条項

  • 清算条項(蒸返し防止)

金額は交渉で動くので「揉める」のは当然です。

一方で、上の4つは、書き方ひとつで「まとまらない」「まとまっても後で揉める」ことにつながります。

なぜここで揉めるのか(目的のズレ:勝ちたい条項 vs 終わらせたい条項)

示談書の本来の目的は、勝つための契約ではありません。

終わらせるための契約です。

ただ、揉めるときは「終わらせたい」よりも先に、条項が勝ちたい方向に引っ張られていることが多いです。

  • 普通以上に相手を縛りたい(広い口外禁止、強い違約金)

  • 全面的に認めさせたい(断定の謝罪文)

  • 二度と関わりたくない、触れさせたくない(過剰に広い再発防止)

  • あとから追加で言いたいことも残したい(弱い清算)

こうなると、相手は「この条件は飲めない」となり、まとまりません。

逆に、終わらせるための必要最小限にすると、交渉が進みやすくなります。

「入れる/入れない」より「強度」と「射程」で揉める

よくある誤解は、「その条項を入れるかどうか」で揉める、という見立てです。

実際は違います。

揉めるのは、ほとんどの場合、

  • 強度(どれくらい強く縛るか/どれくらい断定するか)

  • 射程(どこまで広げるか:人・媒体・期間・行為類型)

の2点です。

たとえば、

  • 口外禁止:家族や職場への説明まで禁止するのか/SNSだけ止めたいのか

  • 謝罪:「違法だ」と断定するのか/「迷惑・不利益」を認めるところで止めるのか

  • 再発防止:「一切言及禁止」まで広げるのか/誹謗中傷行為に限定するのか

  • 清算:本件投稿に限るのか/名目を問わず将来の一切の請求も止めるのか

だから、示談書を作るときは順番が大事です。

  • まず「最小構成」で骨格を作る

  • 次に「強度」と「射程」を必要最小限で整える

  • 迷う条項は足さない(後から足す方がまだ容易)

次からは、この4条項それぞれについて、

どこで揉めやすいか/どう書くと揉めにくいか

を順番に整理します。

口外禁止の落とし穴(広げすぎると、結局まとまらない)

口外禁止(守秘義務)は、ネット問題の示談書でほぼ必ず出てくる条項です。

ただし、ここは「入れるか/入れないか」より、広げすぎないことの方が重要です。

強くしすぎると、相手は飲めません。飲めたとしても、あとで生活が不自由になり過ぎてトラブルが再燃します。

口外禁止を入れる意味(蒸返し防止)と、副作用(生活上の支障)

口外禁止を入れる意味はシンプルです。

  • 蒸返しを止める(SNSでの再燃、第三者への拡散、まとめ転載の誘発を防ぐ)

でも副作用も同じくらいシンプルです。

  • 生活の中で説明できなくなる(家族・職場・専門家への相談ができない)

「誰にも言うな」「一切口外するな」をそのまま書くと、現実的に守れません。

守れない条項は、後で揉める条項になります。

例外を入れないと詰む(家族/職場/弁護士/税理士/裁判所・行政・金融機関など)

口外禁止を入れるなら、例外(開示してよい相手)を最初から置く方が安全です。

典型は次の範囲です(この“逃げ道”がないと、結局はトラブルの種に)。

  • 家族(同居家族、配偶者など。必要最小限)

  • 勤務先(必要がある場合に限る。人事・上司など最小限)

  • 弁護士(相談先の弁護士など。ここを例外にしない守秘は現実に無理)

  • 税理士・社労士等(支払い・会計処理が絡む場合に限る)

  • 裁判所・行政機関(紛争処理・照会への対応が必要になった場合)

書き方のコツは、「例外の対象」を並べるだけではなく、目的も縛ることです。

  • 「本件の解決・履行・相談に必要な範囲で」

  • 「必要最小限の範囲で」

こうしておくと、「例外を広げすぎた」扱いになりにくいです。

「SNSだけ禁止」など射程の切り方(広い守秘より、燃える場所を止める)

口外禁止は、広げるほど揉めます。

目的が「蒸返し防止」なら、射程は問題になりやすい場所に限るのも合理的です。

  • SNS・掲示板・口コミサイトへの投稿(再投稿・匂わせ・引用含む)

  • 第三者への拡散行為(DMで晒す、まとめに投げる等)

逆に「私的な場面」まで縛ると、守れない→違反→トラブル再燃、になりがちです。

だから、守秘義務条項を入れるなら、

  • 公開・拡散に直結する行為を止める

  • 生活上必要な説明は例外で逃がす

この形の方が、現実的にまとまりやすいです。

違約金をセットにする場合の危険(重すぎると崩壊)

口外禁止と違約金はセットで加えようとすることがあります。

ただ、違約金を重くすると、交渉が崩れやすくなります。

  • 重すぎる違約金:相手が飲めない(飲んでも後で揉める)

  • 射程が広い守秘義務×高額違約金:軽微な違反が起きた瞬間にトラブルが再燃する条項になる

特に、「何が違反か」の判断が曖昧な守秘条項に高額違約金を付けると、

  • 違反認定で揉める

  • 「脅しの契約」に見えて反発が増える

  • 結果として合意が崩れる

という流れになりやすいです。

違約金を入れるなら、まず先にやることは一つです。

守秘義務の射程を狭くして、違反類型をはっきりさせる(SNS投稿・第三者拡散など)。

そのうえで「必要なら」違約金、くらいの感覚が安全です。

次は、もう一つ揉めやすい条項──謝罪の落とし穴を整理します。

謝罪条項の落とし穴(“断定”で固めるほど危ない)

示談書で謝罪条項はほぼ入ります。

ただ、ここは「入れる/入れない」より、“断定で固めない”ことが重要です。

断定を重ねるほど、あとで争点がズレたり、別紛争(追加請求・蒸返し)に発展しやすくなります。

謝罪=なるべく「全部認める」にしない整理(事実/評価/法的評価)

謝罪条項で揉める典型は、謝罪を「責任の全面認定」と同一視してしまうことです。

示談は“終わらせる契約”なので、一定の責任を認める、認めさせるのは現実的です。
ただし、認め方には層があります。

  • 事実:投稿した/削除した/どの表現を使った

  • 評価:表現が不適切だった/配慮が足りなかった/誤解を招いた

  • 法的評価:違法である/損害賠償義務がある/名誉毀損に当たる

謝罪条項は、投稿者側が全面的に責任を認める場合はそれでいいのですが、どちらの立場でも示談でまとめたいのであれば、基本的には評価の層で止めるのが定石と言っていいかもしれません。

法的評価まで断定すると、「違法性が確定した前提」で他条項(高額化・違約金化・別件請求)に波及しやすくなり、ここでも話が進まなくなる可能性が高くなります。

書き方の安全ライン(迷惑・不利益/配慮不足/表現が不適切 等)

謝罪条項は、言い切りを減らし、終わらせるのに十分な強度に置くのがコツです。

安全に置きやすい表現は、このあたりです。

  • 「本件投稿により甲に対し迷惑・不利益を与えたことを自覚し、反省の上、謝罪する」

  • 「本件投稿は配慮に欠け、誤解を招く表現が含まれていたため、謝罪する」

  • 「本件投稿の表現が不適切であったことを認め、謝罪する」

逆に、揉めやすいのはこの方向です。

  • 「本件投稿は虚偽である

  • 「乙は違法に名誉を毀損した

  • 「乙は全ての責任を認める

“終わらせたい”のに、法的評価や事実断定を重ねると、むしろ終わりが遠のくことがあります。

公開謝罪を求められたときの扱い(やるなら範囲と媒体を限定)

公開謝罪は、当事者の納得を作る一方で、再燃の燃料にもなります。

特にネット案件では、公開謝罪が拡散されて「第二の炎上」になることがあります。

だから、公開謝罪を入れるなら、最低限ここを縛ります。

  • 媒体:どこに出すか(X/掲示板/ブログ等を特定)

  • 範囲:公開先・公開期間(例:○日間掲示、固定の有無)

  • 文面:別紙で確定(後述)

  • 二次拡散:双方とも拡散しない(必要なら口外条項と整合させる)

公開謝罪は「強い」分、射程が広いとトラブルになる確率が上がります。
やるなら、狭く・短く・媒体を限定が基本です。

「謝罪文別紙」の運用(本文に盛らない)

公開謝罪条項で一番揉めるのは、条項そのものより「謝罪文の中身」です。

だから運用としては、

  • 本文:「別紙謝罪文のとおり謝罪文を公開する」

  • 別紙:謝罪文の全文を確定

に分けた方が安定します。

本文に謝罪文のディテールを盛ると、

  • 条項が長文化して読みづらい

  • 清算条項や守秘条項との整合が崩れやすい

  • 修正のたびに合意書本文の調整が必要

という形で、まとまりにくくなります。

公開謝罪はもともと合意が成立しづらくなることもありますが、もし盛り込むとしても「終わらせるための必要量」で足ります。
ここでも、断定で固めるほど危ないので、認めるのは評価層で止めて、別紙運用が一番事故が少ないです。

次は、再発防止(再投稿禁止)の落とし穴に行きます。ここも“広げすぎ”で揉めやすいポイントです。

再発防止(再投稿禁止)の落とし穴(“違反認定”で揉める)

再発防止条項は、入れるのが普通です。

ただ、ここで揉める本質は「入れる/入れない」ではありません。

広げすぎて、あとから「違反しているかどうか」が微妙になって揉める──これが典型です。

広くするほど安心に見えるが、広いほど揉める

「今後一切書かない」「一切言及しない」と書くと、気持ちは安心に見えます。

でも条項が広いほど、次の問題が起きやすいです。

  • 違反の線引きが曖昧(どこからが言及?どこまでが再投稿?)

  • 生活上の説明まで塞がる(家族・職場・取引先への説明が必要な場面)

  • 相手の“疑い”で蒸返しが起きる(「これも違反だ」と言われる)

  • 第三者投稿に巻き込まれる(引用・転載・スクショ拡散で誤認される)

つまり、広い条項ほど「終わる」より「監視が続く」状態を作りやすい。

蒸返し防止が目的なら、違反認定で揉めない線に落とす方が強いです。

対象の縛り方:相手(甲)限定/媒体限定/行為類型

再発防止条項は、次の3つの軸で“射程”を調整できます。

(A)対象:まず「甲に関する投稿」に限定する

最小構成なら、対象は甲(被害者)に関する投稿に限定するのが基本です。

これだけで「別件まで巻き込む」事故を避けられます。

(B)媒体:原則は「インターネット上」で足りる

媒体は、実務だと「インターネット上(SNS、掲示板、口コミサイト、ブログ等)」で十分なことが多いです。

あえて媒体限定(例:Xのみ)にするのは、
「そもそも争点がその媒体だけ」「生活上の必要があって他は残したい」など、理由がある場合です。

一方で、「インターネット上(SNS、掲示板、口コミサイト、ブログ等)かどうかを問わず」
といった形にすることもあります。
下記の行為類型を明確認することにより、問題にならないことも多いです。

(C)行為類型:違反認定で揉めない“型”に寄せる

「誹謗中傷」という言葉だけだと、当事者の感情で意味が膨らみやすいです。

なので、ひな形としては、行為類型(名誉毀損・侮辱(名誉感情侵害を含む)・プライバシー等)を明確にしておくと揉めにくい。

たとえば、

  • 「名誉毀損する」or「甲の社会的評価を低下させる」

  • 「侮辱する」

  • 「プライバシーを侵害する」

をセットで置くと、違反の議論が“法的評価と重ねられるので、感情で膨らみにくいです。

「一切言及禁止」にしたい場合の現実的な代替

被害者側としては「名前も出すな」が理想になりがちです。

ただ、これをそのまま条項にすると、違反認定が荒れて揉めます。

そこで現実的な代替は2つです。

代替①:「誹謗中傷行為」を1行だけ定義して、行為禁止に寄せる

「一切言及禁止」ではなく、誹謗中傷行為の禁止に寄せるやり方です。

(例:定義を1行入れる)

本書にいう「誹謗中傷行為」とは、甲の社会的評価を低下させ、侮辱し(名誉感情侵害を含む)、又は甲のプライバシーを侵害する内容の発信をいう。

この1行があるだけで、「何が禁止か」が見えます。

代替②:誹謗中傷に加えて「同一内容の蒸返し禁止」を加える

どうしても言及禁止に近づけたいなら、全面禁止ではなく、

  • 甲の社会的評価を低下させ、侮辱し(名誉感情侵害を含む)、又は甲のプライバシーを侵害する行為の禁止

  • 本件投稿と同一・同種内容の再投稿禁止

  • 本件投稿の引用・転載・再掲の禁止

のように、本件投稿に紐づけた縛りを加えた方が揉めにくいです。

「一切言及禁止」は強そうに見えて、実務では“監視と疑い”が残りやすい条項です。

蒸返しを止めたいなら、違反認定が荒れない線に落とすのがいちばん強いです。

次は、清算条項の落とし穴に行きます。ここは「終わらせる契約」の核心なので、弱いと蒸返しが起きます。

清算条項の落とし穴(弱いと蒸返しが止まらない/強すぎると拒否される)

清算条項は、示談書(合意書)の「終わらせる力」そのものです。

ここが弱いと、あとで蒸返しが止まりません。

でも強くしすぎると、相手が飲めずにまとまらない。

だからポイントは「正解探し」ではなく、合意形成しやすい形で、蒸返しを止めることです。

本件限定か、包括か(どっちが正解かではなく「合意形成しやすさ」)

清算条項には大きく2タイプあります。

(A)本件限定(この投稿・この紛争だけ閉じる)

合意形成しやすいのはこっちです。

対象(本件投稿/別紙)と紐づくので、「どこまで終わるのか」が当事者にも裁判所にも説明しやすい。

(例:本件限定の清算)

甲及び乙は、本件投稿に関し、本書に定めるほか何らの債権債務がないことを相互に確認し、以後名目を問わず一切の請求を行わない。

※「本件投稿に関し」の射程は、「本件投稿」の特定方法とセットで決まります。

「本件投稿に関し」を入れるだけで、射程が安定します。

(B)包括(当事者間の一切を終わらせる)

“二度と関わりたくない”という動機から、包括で終わらせたくなる場面もあります。

ただ、包括だと注意が必要です。
たとえば、

  • 被害者側からすれば、「後から知らない投稿が見つかっても合意の範囲だと判断されてしまう」

  • 投稿者側からすれば、「被害者側にも問題のある投稿があるのに責任追及できなくなる」

となるため、交渉が止まる原因になります。

「名目を問わず一切請求しない」の射程

このフレーズは強いです。

蒸返し防止として効きますが、同時に相手が怖がるポイントでもあります。

揉めるのは、だいたいこの2つです。

  • 「いつまで」効くのか(将来請求まで全部消えるのか)

  • 「何を」消すのか(本件に紐づく請求だけか、それ以外もか)

だから実務的には、次のどちらかで整理すると合意しやすいです。

  • 本件限定+一切請求しない(射程を「本件投稿に関し」で縛る)

  • 包括にするなら、射程の説明を足す(例:「本合意成立までの投稿に限る」、など)

逆に、清算内容を弱くしてしまう典型はこれです。

(弱くて蒸返しが残りやすい例)

甲及び乙は、本書に定めるほか何らの債権債務がないことを確認する。

これでも清算にはなっていますが、人によっては「結局、追加請求できる?」みたいな疑問が残ります。

蒸返し防止を目的にするなら、「以後名目を問わず一切の請求を行わない」まで入れるのが強いです(ただし射程は要調整)。

投稿者側の譲歩(削除・支払・謝罪)とのバランス

清算条項は、単独では成立しません。

被害者側が納得するかは、投稿者側の譲歩とのバランスです。

ざっくり言うと、こんな感覚です。

  • 投稿者側の譲歩が軽い(削除だけ等) → 清算を強くすると被害者側は拒否しやすい

  • 投稿者側の譲歩が厚い(削除+金銭+謝罪+再発防止等) → 清算を強くしても通りやすい

「清算を強くしたい」なら、投稿者側の譲歩も“終わらせる厚み”に寄せる。

逆に「投稿者側の譲歩が薄い」なら、清算は本件限定で丁寧に縛る。

これが合意形成のコツです。

ここまでのまとめ:清算は“終わらせる力”だが、射程とバランスで決める

  • 本件限定は合意しやすい(「本件投稿に関し」で縛る)

  • 包括清算は注意が必要(特に、本件以外にも問題の投稿があるとき)

  • 「名目を問わず一切請求しない」は禁止が明確になる

  • 清算の強度は、削除・支払・謝罪など投稿者側の譲歩とのバランスで決まる

違約金条項は“入れない”が最小構成(入れるならこの条件)

違約金条項は、最小構成の示談書(合意書)では基本「入れない」のが安全です。

理由はシンプルで、入れた瞬間に「終わらせる条項」ではなく、次の紛争を作る条項になりやすいからです。

入れた瞬間に揉める理由(強度・故意過失・立証)

違約金が揉めやすいのは、だいたいこの3点です。

  • 強度(額・一律・自動発生):高額・一律・即発生の設計だと相手が警戒して話合いが止まる。

  • 故意過失(うっかり違反の扱い):ミスでも即違約金、だと「怖すぎて署名できない」になりやすい。

  • 立証(違反認定で揉める):「どれが違反か」「誰が投稿したか」で次の争いが始まる。

つまり、違約金条項は、抑止力と引き換えに、争点(揉めどころ)を増やします。
最小構成の目的(蒸返しを止めて終わらせる)と相性が悪いことが多いです。

入れるなら:対象行為を限定/金額を低め/段階的(まず催告→違約金)

それでも違約金を入れるなら、条件は3つです。

① 対象行為を限定する(広げない)

「一切の違反」みたいに広くすると、違反認定で必ず揉めます。

入れるなら、対象行為は違反が分かりやすいもの、違法性があるものに寄せます。

  • 名誉毀損・侮辱(名誉感情侵害含む)・プライバシー侵害

  • 削除義務に反して残存している

  • 守秘義務違反のうち、SNS等の公開行為に限る

② 金額を低めに置く(高額は合意を壊す)

違約金を高くすると、相手は「脅し」「過剰な縛り」と感じて合意を拒みやすいです。

最小構成なら、抑止として“現実的に飲める額”に落とします(ここは案件次第で調整)。

③ 段階的にする(まず催告→是正→それでもダメなら違約金)

一発で違約金が発生する設計は揉めやすいです。

「まず直させる」を挟むだけで、合意形成もしやすく、運用も安定します。

(例:段階的な違約金の書き方/最小揉め版)

乙が第3条(削除)又は第5条(再投稿・再言及の禁止)に違反した場合、甲は乙に対し、相当期間を定めて是正を求めることができる。
乙が上記期間内に是正しないときは、乙は甲に対し、違約金として金○○円を支払う。

これでもなお、「何が違反か」で揉める可能性は残ります。
だから違約金を入れる場合ほど、再発防止条項(再投稿禁止)の射程を狭く・定義を置くのがセットになります。

ここまでのまとめ:違約金は“終わらせる”より“揉めを増やす”条項になりやすい

  • 最小構成は入れない:合意形成が止まりやすく、運用で揉めやすい

  • 入れるなら:対象行為を限定/金額を低め/催告→是正→違約金の段階設計

チェックリスト(最後にここだけ見ればいい)

合意書は、文章のうまさより「後で揉めない形になっているか」がすべてです。
迷ったら、最後にこのチェックだけ通してください。

口外禁止:例外は入ってる?範囲は広すぎない?

  • 目的は蒸返し防止になっている?(「勝つための封じ込め」になっていない?)

  • 例外が入っている?(家族/同居人/勤務先の必要最小限/弁護士/税理士/裁判所・行政・金融機関など)

  • 射程が広すぎない?(「一切口外禁止」だと生活説明が詰むことがある)

  • 媒体の限定は現実的?(まずは「SNS等の公開」を止める設計になってる?)

謝罪:断定になってない?公開の要否は限定されてる?

  • 断定で固めすぎてない?(「犯罪だった」「虚偽だった」などの確定が入っていない?)

  • 安全ラインに寄せてある?(迷惑・不利益/配慮不足/表現が不適切 等)

  • 公開謝罪があるなら、範囲・媒体・期間が限定されてる?(どこに・いつまで・どの文言で)

  • 謝罪文別紙運用になってる?(本文に盛りすぎてない?)

再発防止:違反認定で揉めない定義になってる?

  • 対象が縛れてる?(甲に関する投稿に限る、など)

  • 媒体が広すぎない?(まずはインターネット上で十分なことが多い)

  • 禁止行為の定義がある?(例:「社会的評価を低下させる/侮辱する/プライバシー侵害」等の1行定義)

  • 「一切言及禁止」になっていない?(入れるなら現実的な代替・定義で事故を減らす)

清算:蒸返し止まる強度?本件限定か?

  • 射程が決まってる?(本件投稿に関する清算/包括清算のどちらか)

  • 強度が足りてる?(「以後名目を問わず一切請求しない」まで入ってる?)

  • 投稿者側の譲歩とのバランスは取れてる?(削除・支払い・謝罪がセットで動く形になってる?)

署名押印/通数/別紙の特定

  • 署名押印(または記名押印)の形式が揃ってる?

  • 通数:2通作成・各1通保管になってる?

  • 日付:合意日が入ってる?

  • 当事者表示:住所・氏名(法人なら名称・代表者)が正確?

  • 別紙:URL/投稿日時/該当箇所/削除対象範囲が特定できてる?(「どれが対象か」で揉めない?)

このチェックを通っていれば、最小構成としてはかなり問題になりにくいはずです。

次に読む記事

まずは、基本的な書式・ひな形です。
示談書(合意書)書式・ひな形|蒸返しを止める最小構成(条項例つき)

開示後、相手(または代理人)から連絡が来た直後の初動・窓口の作り方・示談の進め方はこちら。
発信者情報が開示された後、相手から連絡が来たらどうする?|初動・窓口・示談の進め方

金額は「相場」より、条件の組み合わせで動きます。いまの状況を冷静に読むための整理はこちら。
ネット誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?金額が決まる基準と“幅”を実務目線で整理

どの段階から整理しますか

インターネット問題は、必ずしも手続から始まるわけではありません。

いまの自分の状況に合わせて、整理する段階を選ぶことができます。