「投稿は問題だと思う」
「消してほしいと思っている」
「名誉を傷つけられた気がする」
そこまでは、
かなりはっきり言葉にできているのに、
いざ、
どう動くかを考え始めると、
話が止まってしまうことがあります。
その理由の一つは、
「何が問題か」と、
「自分がどこで一番困っているか」が、
必ずしも同じではないからです。
この回では、
投稿の是非や、
法律の結論ではなく、
いま自分が、
この出来事の中で、
どこに一番引っかかっているのか、
という点から、
状況の整理を続けていきます。
ここでも、
結論を急ぐ必要はありません。
まずは、
自分の中の
「一番つらい場所」が、
どこにあるのかを、
静かに見ていくところから始めてください。
見えている問題と、実際に困っている場所は違うことがある
インターネットの投稿トラブルでは、
最初に意識されやすいのは、
投稿の内容そのものです。
何が書かれているか。
それは事実なのか。
誹謗中傷にあたるのか。
違法性はあるのか。
もちろん、
こうした点を整理することはとても大切です。
けれど、
実際に相談の場で話を聞いていると、
「問題の内容」と、
「本人が一番困っている場所」が、
少しずれていることがよくあります。
例えば、
投稿の表現そのものよりも、
それを見た職場の反応が一番つらい人。
書かれた内容よりも、
家族に知られてしまったことを、
何より気にしている人。
あるいは、
世間の評価よりも、
書いた相手にどう思われているのかが、
気になって仕方がない人。
ほかにも、
取引先や顧客に見られてしまったことで、
仕事に影響が出るのではないかと
不安になっている人や、
自分の名前で検索したときに、
この投稿がずっと残り続けるのではないかと、
それだけを気にしている人もいます。
同じ投稿をめぐる出来事でも、
困り方は人によってかなり違います。
法律的に問題があるかどうかと、
本人がどこで一番苦しんでいるかは、
必ずしも一致しません。
ここを整理しないまま、
削除や開示といった話に入ってしまうと、
「手続は進んだけれど、
気持ちはあまり楽にならなかった」
という結果になることもあります。
まず大切なのは、
その投稿が問題かどうかよりも、
「自分は、
この出来事の中で、
何が一番つらいのか」
を、
静かに確かめておくことです。
では、
自分はこの出来事の中で、
「誰に知られたこと」や、
「どんな関係」が、
一番つらいと感じているのでしょうか。
困っている場所によって、見える問題は変わってくる
投稿トラブルで感じるつらさは、
「何が書かれたか」だけではなく、
「誰に知られてしまったか」によって、
大きく変わります。
同じ内容の投稿でも、
知られた相手が違えば、
受け止め方も、
その後の影響も、
まったく別のものになります。
家族や職場に知られてしまった人
例えば、
不特定多数に見られることよりも、
家族に知られてしまったことの方が、
何倍もつらいと感じる人がいます。
配偶者や親にどう思われたのか、
子どもに知られてしまわないか。
この場合、
投稿が削除されたとしても、
「もう知られてしまった」
という事実そのものは、
消えるわけではありません。
また、
職場や取引先に見られてしまった人は、
評価や立場がどう変わるのかを、
一番心配していることが多くあります。
投稿の内容よりも、
「これから仕事に影響が出るのではないか」
という不安の方が、
ずっと大きな問題になっていることもあります。
このような場合、
削除や開示をしても、
すぐに安心できるとは限りません。
広がることや、検索に残ることが怖い人
一方で、
「とにかく知られたくない」
「これ以上広がるのを止めたい」
という人もいます。
まだ周囲にはあまり知られておらず、
検索結果や拡散だけが心配な場合には、
削除や非表示の対応が、
比較的そのまま不安の軽減につながることもあります。
書いた相手のことだけが気になってしまう人
さらに、
誰に知られたかではなく、
「書いた相手にどう思われているか」だけが、
どうしても気になってしまう人もいます。
この場合、
相手がどんなつもりで書いたのか、
誰なのかが分からないこと自体が、
一番の不安になっていることもあります。
相手を特定したり、
事情を知ったりすることで、
それまで抱えていた緊張が、
少し和らぐこともあります。
「何もなかったこと」にしたくない人
さらに、
投稿が削除され、
これ以上広がる心配もなくなったのに、
それでも気持ちが整理できない、
という人もいます。
この場合、
一番引っかかっているのは、
被害そのものよりも、
「相手が何の責任も取っていない」
という感覚であることがあります。
自分だけが傷ついて終わり、
相手は何事もなかったかのように
日常に戻っている。
その不均衡が、
ずっと心の中に残ってしまう人もいます。
こうした人にとっては、
投稿を消すことや、
相手を特定することよりも、
「やったことに対して、
きちんと責任が生じた」
という形が残ることの方が、
気持ちの整理につながる場合があります。
損害賠償を請求するという選択は、
相手を罰したいというよりも、
「この出来事は、
何もなかったことではない」
と、
自分の中で区切りをつけるための
手続になることもあります。
大切なのは、
削除や特定、請求といった手続の前に、
「自分は、
誰に知られたことが、
一番つらいのか」
「何が、
いちばん引っかかっているのか」
を、
一度はっきりさせておくことです。
それによって、
手続が本当に自分の助けになるのか、
それとも、
別のところに
一番の問題が残っているのかが、
少し見えやすくなります。
では、
自分はいま、
すでに困っているのでしょうか。
それとも、
これから起きるかもしれないことを、
一番怖れているのでしょうか。
いま困っているのか、それとも関係が壊れるのが怖いのか
同じ投稿トラブルでも、
「いま何が一番つらいのか」は、
人によってかなり違います。
すでに現実の生活に影響が出ていて、
仕事に支障が出ている人もいれば、
いまのところは特に問題は起きていないけれど、
「このまま放っておいて大丈夫なのか」
という不安だけを抱えている人もいます。
ここで大きく分かれるのが、
「すでに困っている人」と、
「これから困りそうなことを怖れている人」
の違いです。
例えば、
職場ですでに噂が広がっていて、
評価に影響が出始めている人にとっては、
時間をかけて様子を見ること自体が、
大きな負担になります。
この場合は、
できるだけ早く動いて、
状況を止めることや、
整理することが、
現実的な助けになることもあります。
一方で、
投稿はあるけれど、
まだ周囲にはほとんど知られておらず、
実際の被害は起きていない人もいます。
この場合、
一番大きいのは、
「これから何か起きるのではないか」
という不安そのものです。
不安が強いと、
すぐに何か決めなければならないような
気持ちになりますが、
実際には、
まだ状況が動いていない段階では、
選択肢がいくつも残っていることも少なくありません。
動くべきかどうかを考えるときは、
投稿の内容だけでなく、
「いま、
現実に何が起きているのか」
を、
一度静かに確認してみることが大切です。
すでに起きている問題なのか、
それとも、
これから起きるかもしれない問題なのか。
この違いだけでも、
取るべき対応や、
考えるべき順番は、
かなり変わってきます。
そして、
まだ何も起きていない段階では、
「いま決めない」という選択が、
いちばん負担の少ない答えになることもあります。
では、
自分はいま、
本当に何かに追い込まれているのでしょうか。
それとも、
まだ起きていない出来事を、
先回りして怖れているだけなのでしょうか。
相手を動かしたいのか、自分の生活を守りたいのか
投稿トラブルで悩んでいると、
いつの間にか、
「相手に何をさせるか」
ということばかり考えてしまうことがあります。
削除させたい。
謝らせたい。
責任を取らせたい。
こうした気持ち自体は、
とても自然なものです。
何も悪くないのに傷つけられた以上、
相手に何かをさせたいと思うのは、
無理のないことだと思います。
けれど、
少し視点を変えてみると、
ここで考えているのは、
本当は
「相手をどうするか」ではなく、
「自分がどうなりたいか」
なのかもしれません。
例えば、
謝罪や賠償を求めたい人の中にも、
本当は、
相手を懲らしめたいというより、
「これ以上傷つかずに済む状態に戻りたい」
「元の生活に近い形に戻りたい」
と感じている人が多くいます。
一方で、
どうしても、
「このまま何もなかったことにされたくない」
という気持ちが強く、
相手にきちんと責任を取らせること自体が、
自分の中での区切りになる人もいます。
どちらが正しい、という話ではありません。
ただ、
ここで大切なのは、
「相手をどう動かすか」よりも、
「自分の生活を、
どんな状態に戻したいのか」
を、
一度はっきりさせておくことです。
相手に何かをさせることと、
自分が楽になることは、
必ずしも同じではありません。
厳しい対応をしたことで、
気持ちはすっきりしても、
その後も不安や緊張が続くこともありますし、
逆に、
ある程度のところで区切りをつけたことで、
思っていたより早く、
日常に戻れることもあります。
「何をさせるか」を考える前に、
「自分は、
これからどう暮らしたいのか」
を考えてみる。
それだけで、
選択肢の見え方は、
少し変わってくるはずです。
では、
いま自分が一番求めているのは、
相手への対応なのでしょうか。
それとも、
自分の生活を取り戻すことなのでしょうか。
手続を考える前に、まず自分の「困りどころ」を決めておく
ここまで見てきたように、
投稿トラブルで困っている人の悩みは、
決して一つではありません。
誰に知られたことが一番つらいのか。
いま現実に困っているのか、
それとも将来が怖いだけなのか。
相手に何かをさせたいのか、
それとも自分の生活を守りたいのか。
同じ出来事でも、
どこで一番困っているかによって、
必要な対応や、
助けになる手続は、
まったく変わってきます。
削除が役に立つ人もいれば、
相手を特定することで楽になる人もいて、
責任の形を残すことで、
気持ちに区切りがつく人もいます。
逆に言えば、
ここを整理しないまま動いてしまうと、
「手続は進んだけれど、
本当につらかったところは、
あまり変わらなかった」
という結果になることも少なくありません。
だからこそ、
何かを決める前に、
まず一度、
「自分は、
この出来事の中で、
どこが一番つらいのか」
「何が、
いちばん引っかかっているのか」
を、
静かに確認しておくことが大切だと思います。
どこで困っているかが見えてくると、
「何をすればいいか」だけでなく、
「いま、
本当に何を決める必要があるのか」も、
少しずつ整理されていきます。
すべてを、
いまここで決めなくても構いません。
状況が動くのを待つことや、
何もしないという選択が、
いちばん負担の少ない答えになることもあります。
いま決めなければならないのは、
手続でしょうか。
それとも、
自分の困りどころを定めることなのでしょうか。
どの段階から整理しますか
インターネット問題は、
必ずしも手続から始まるわけではありません。
いまの自分の状況に合わせて、
整理する段階を選ぶことができます。