車を手放さなければならないかもしれない、という不安から、自己破産の相談に踏み出せずにいる方は少なくありません。通勤や通院、子どもの送迎、介護など、車が生活の一部になっている場合はなおさらです。

結論からいえば、自己破産をしても、すべての車を必ず手放すわけではありません。ローンが残っているか、車検証上の所有者が誰か、現在いくらで売れる車かによって、扱いは大きく変わります。

とくに、信販会社やディーラーに所有権が留保されているローン中の車は、返却・引き揚げの対象となることが多くあります。他方で、ローンを完済していて時価が低い車であれば、換価されずに手元に残ることもあります。

「自己破産をすれば必ず車を失う」「時価20万円以下なら必ず残せる」という単純な二択ではなく、自分の車がどちらに近いのかを、ローン・所有関係・時価・生活上の必要性から確認していきます。申立て前に名義変更や売却を急ぐ必要はありません。

【この記事のポイント】
自己破産をしても、車が必ず処分されるわけではない。ローン・所有関係・時価によって扱いが変わる
車検証上の「所有者」「使用者」に加え、ローン契約や売買契約の内容、支払状況も確認する
所有権留保付きのローンが残っている車は、返却・引き揚げとなることが多い
ローン完済済みで時価が低い車は、換価されずに済む場合がある。ただし「20万円以下なら必ず残せる」という法律上の一律基準ではない
通勤・通院などの必要性は考慮される事情の一つだが、それだけで結論が決まるわけではない
家族名義の車は購入資金や契約当事者、会社名義の車は使用条件、リース車は契約内容をそれぞれ確認する
売却・名義変更・特定のローンだけの優先返済は、自己判断で進める前に確認すべき事項がある

まず確認したい4点

  1. 車検証上の所有者は誰か

  2. ローンまたはリース契約は残っているか

  3. 車は現在いくら程度で売れるか

  4. 車が使えない場合、生活や仕事にどのような影響があるか

ケース別の見通し表

車の状況 原則的な見通し まず確認すること
ローン中で、信販会社・ディーラーが所有者 返却・引き揚げとなることが多い 車検証、ローン契約、残債、契約条項
ローン完済・本人所有・時価が低い 換価されずに済む可能性がある 現在の査定額、申立先裁判所の運用
ローン完済・本人所有・時価が高い 換価・処分の対象となり得る 時価、他の財産、生活上の必要性
家族名義で、家族が購入・管理している 原則として本人の財産ではない 購入資金、ローン契約者、使用実態
会社の社用車を借りている 通常は本人の財産ではない 所有者、使用条件
リース車 返却が問題となる可能性が高い リース契約、未払額、解除条項

この表は最終的な結論を示すものではなく、次に何を確認すべきかを整理するための目安です。実際の扱いは、契約内容や車の価値、申立先裁判所の運用などによって異なります。

自己破産で車がどうなるかは、まず「ローン・所有者・時価」で整理する

自己破産をすると車をどう扱われるかは、車種や年式だけで決まるものではありません。実際には、ローンの契約内容、車検証上の名義、そして現在の車の価値という、いくつかの要素が組み合わさって結論が変わります。

「車を残せるか」を先に知りたい気持ちは自然ですが、まずはこの3つの軸で自分の車の状況を整理しておくと、後の章の内容が自分のケースに当てはまるかどうかを判断しやすくなります。

自己破産では、本人が持つ一定の価値ある財産が換価の対象になり得る

自己破産の手続では、破産開始決定の時点で本人が持っている財産が、原則として債権者への配当に充てられます。これは、借金を整理する代わりに、一定の財産を清算するという自己破産の基本的な仕組みによるものです。

車も、本人が所有する財産である以上、価値があれば換価・処分の対象になる可能性があります。ただし、これは「車を持っていれば必ず処分される」という意味ではありません。

車の売却価格が低く、売却費用などを差し引くと配当に回せる金額がほとんど残らないような場合には、あえて換価の手続を取らず、そのまま残る扱いになることもあります。どのような場合に換価されずに済むのかは、後の章で車の時価と合わせて詳しく説明します。

ローンの有無だけではなく、所有権留保や担保の有無が重要

「車のローンが残っているから、車は諦めるしかない」「ローン残高が車の価値より大きいから、財産としての価値はない」といった理解を耳にすることがありますが、どちらも一律に正しいとは言えません。

車の扱いを考えるうえで重要なのは、ローンが残っているという事実そのものよりも、車の所有権が契約上どうなっているかという点です。自動車ローンの多くは、完済するまで信販会社やディーラーが車検証上の所有者となる「所有権留保」という仕組みを取っています。この場合、車検証上の使用者が本人であっても、契約上は信販会社やディーラーに所有権が留保されていることがあり、返却・引き揚げの見通しは、ローン契約や売買契約の条項、これまでの支払い状況、所有権留保や担保権の有無を合わせて確認する必要があります。

一方で、車検証上の所有者が本人であり、契約上も所有権留保や担保権が設定されていない場合には、車は通常、本人の財産として扱いを検討することになります。この場合は、ローンの残債とは切り離して、車の現在の価値をもとに扱いを考えることになります。

つまり、ローン残高と車の時価を単純に差し引いて「価値がある・ない」を判断できるわけではなく、契約上の所有関係と支払状況の両方を確認することが出発点になります。

車検証では「所有者」と「使用者」を確認する

車の所有関係を確認する際は、車検証(自動車検査証)、または電子車検証であれば自動車検査証記録事項に記載されている「所有者」と「使用者」の欄がまず手がかりになります。

ここで注意したいのは、使用者として自分の名前が記載されていても、所有者が自分であるとは限らないという点です。所有者欄に信販会社やディーラーの名称が記載されている場合は、所有権留保が設定されている可能性があるため、ローン契約書や売買契約書もあわせて確認します。

電子車検証では、券面自体には所有者情報が表示されないこともあるため、その場合は自動車検査証記録事項の確認方法を調べておく必要があります。

車検証の記載は重要な手がかりですが、これだけで所有関係のすべてが決まるわけではありません。ローンの完済状況や契約上の所有権留保・担保権の有無、家族名義や会社名義であれば購入資金や使用実態なども関わってきます。家族名義・会社名義の車については、後の章で改めて取り上げます。

まずは車検証を確認したうえで、ローン契約書や売買契約書があれば所有権に関する条項も見ておくと、次のステップを考えるための土台になります。

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ローン中・リース中の車はどうなる?返却や引き揚げが問題になりやすいケース

ローンが残っている車の扱いは、ローンが残っていること自体ではなく、契約上車の所有権が誰にあるか、どのような取り決めになっているかによって左右されます。ここでは、ローン中・リース中の車について、返却や引き揚げが問題になりやすい場面を整理します。

所有権留保付きのローンでは、車の返却・引き揚げとなることが多い

自動車ローンでは、完済するまで信販会社やディーラーが車検証上の所有者となる契約が一般的です。これを所有権留保といい、ローンが完済されるまでは、車の所有権が購入者ではなく信販会社等に留保されている状態になります。

このような所有権留保がある場合、自己破産によってローンの返済を続けることが難しくなると、信販会社やディーラーから車の返却や引き揚げを求められることがあります。ローン契約書に、支払いが滞った場合や自己破産の申立てをした場合の取り扱いが定められていることも多く、その内容によって具体的な流れは変わってきます。

ただし、「ローン中の車は必ず引き揚げられる」と一律に決まるわけではありません。実際にどうなるかは、ローン契約の内容、これまでの支払い状況、所有権留保の設定の有無や範囲などによって異なります。まずは契約書やローンの明細を確認し、車検証上の所有者欄がどうなっているかを照らし合わせておくと、状況を把握しやすくなります。

家族がローンを支払っても、当然に使い続けられるとは限らない

「本人が自己破産をしても、家族が代わりにローンを支払えば車を使い続けられるのではないか」と考える方もいます。実際、家族が自己資金でローンの支払いを引き継ぐ方法が検討されることはあります。

ただし、家族が支払いを続ければ当然に契約が維持され、車を使い続けられるとは限りません。ローン契約は信販会社等との契約であり、第三者による支払いの継続や、契約者・所有者の変更を認めるかどうかは、契約内容や信販会社等の判断によります。事前に確認せず支払いだけを続けても、状況が変わらない場合があります。

また、破産手続との関係でも注意が必要です。本人の財産や収入を使って、特定の車のローンだけを優先的に返済すると、他の債権者との公平を害する行為として問題になるおそれがあります。家族が自分の資金で直接支払う場合と、本人が家族からお金を受け取って返済する場合とでは、事情の見え方が異なることもあります。どちらの方法を取るにしても、独断で進める前に、契約内容と手続上の位置づけの両方を確認しておく必要があります。

リース車は、契約内容と支払い状況を確認する

リース契約で利用している車は、通常、リース会社が所有者となっています。この点は、所有権留保付きローンと似た面がありますが、契約の形式や解除条件はリース会社ごと、契約ごとに異なります。

リース料の支払いが難しくなった場合や、契約上定められた解除事由に該当する場合には、リース会社から車の返却を求められる可能性が高くなります。また、未払いのリース料や、契約途中で解約する場合の清算金について、請求が問題となる場合もあります。

「リース車は必ずすぐに返却しなければならない」と決めつける必要はありませんが、契約書に記載された解除条件や、これまでの支払い状況を確認しておくと、今後どのような連絡や対応があり得るかを見通しやすくなります。

保証人がいる車のローンは、家族への影響も確認する

車のローンに保証人や連帯保証人が付いている場合は、もう一つ確認しておきたい点があります。本人が自己破産をしても、保証人の支払義務が当然になくなるわけではないという点です。

本人の返済が止まると、ローン会社から保証人に対して残りの支払いを求める請求が及ぶ可能性があります。保証人が家族や親族である場合、車の問題にとどまらず、その方の生活にも影響が及ぶことがあります。

保証人への影響や対応方法については論点が広いため、ここでは概要にとどめます。詳しくは、自己破産と保証人・連帯保証人への影響を扱った記事も参考にしてみてください。

ローン完済済みの車は残せる?時価と「20万円」の目安を確認する

ローンをすでに完済し、車検証上の所有者も本人になっている場合、車は本人の財産として扱われます。この場合に問題となるのは、車がいくらの価値を持つかという点です。ここでは、時価の考え方と、よく話題になる「20万円」という目安について整理します。

車の価値は、購入価格や年式ではなく現在の時価で見る

自己破産の手続で車の価値を考えるとき、基準になるのは購入時の価格やローン残高、自動車税の額ではなく、現在の時点で売却したらいくらになるかという時価です。

年式が古い車であっても、人気車種や生産終了によって希少性が出ている車、海外への輸出需要がある車などは、想定より高い査定額が付くことがあります。反対に、比較的新しい車でも、走行距離や車の状態、市場の状況によっては、それほど高く売れない場合もあります。

このため、車の価値を確認する際は、買取専門店やディーラーなどから実際に査定を取ることが望まれます。可能であれば、複数の査定を取り、資料として残しておくと状況を説明しやすくなります。オンライン査定サービスは目安を知るうえで参考になりますが、手続で必要となる評価資料として使えるかどうかは、依頼先の専門家に確認しておくと安心です。

「20万円以下なら必ず残せる」は正確ではない

自己破産と車について調べると、「時価20万円以下なら車を残せる」という情報を目にすることがあります。この20万円という数字は、実務上の目安として参照されることがありますが、全国どこでも当てはまる法律上の絶対基準ではありません。

時価が低い車であっても、法律上当然に破産財団(債権者への配当に充てられる財産の範囲)から外れるわけではない、という点も押さえておく必要があります。実務上は、車の価値が低い場合、売却や保管にかかる費用を考えると、換価してもほとんど配当に回せる金額が残らないことから、結果として処分されずに済むケースがある、という位置付けです。

また、実際の扱いは、申立てを行う裁判所の運用、手続が同時廃止事件になるか管財事件になるか、他にどのような財産があるか、換価にかかる費用などによって変わります。「20万円以下なら必ず同時廃止になる」「20万円を超えたら必ず管財事件になる」といった理解も、正確ではありません。自分の車の時価がどのあたりに位置するかを把握したうえで、個別の事情として確認していく事柄だといえます。

通勤・通院などで車が必要な事情は、判断材料の一つになる

車がなければ通勤、通院、介護、子どもの送迎、事業の継続が難しくなる、という事情がある場合、その事情は車の扱いを考えるうえで無視できない要素になり得ます。ただし、必要性があるからといって、それだけで高額な車を当然に残せるわけではありません。

車が実際に残る場面には、性質の異なる二つがあります。一つは、前述のとおり車の時価が低く、売却費用等を考えると換価してもほとんど配当に回せないために、結果として処分されない場合です。

もう一つは、一定の価値があり本来は破産財団に含まれ得る車について、生活再建上の必要性、車の価値、代替手段の有無、家計状況などを踏まえて、裁判所が自由財産として手元に残すことを認める場合です。これを「自由財産の拡張」と呼びます。車が生活に必要であることだけで当然に認められる制度ではなく、裁判所の運用や個別の事情によって判断が分かれます。管財事件では、破産管財人の意見も考慮されることがあります。

生活に必要な事情は、手続の中でもきちんと説明すべき事情です。最初から諦める必要はありません。

生活上の必要性を説明するために整理しておきたい資料

車の必要性を説明する際は、「車がないと困る」という感覚的な説明よりも、どの場面で、どの程度困るのかを具体的に示せる資料があると状況を伝えやすくなります。たとえば、次のようなものが挙げられます。

  • 勤務先、勤務時間、通勤経路、公共交通機関の利用可否が分かる資料
  • 通院先や介護先との距離、通院・通所の頻度が分かる資料
  • 診断書、通院予約の記録、介護サービスに関する資料
  • 車検証、査定書、任意保険証券
  • 車の維持費を含めた家計の状況が分かる資料

これらを整理しておくと、車の時価や所有関係とあわせて、自分の場合の判断材料が具体的になります。

家族名義・会社名義・事業用の車は、誰の財産かを実態から確認する

自己破産の手続では、車検証に記載された名義だけで、その車が本人の財産かどうかが決まるわけではありません。家族名義の車、勤務先の社用車、個人事業主の事業用車では、名義と使用実態が異なることがあり、契約・取得経緯・費用負担も確認対象になります。

家族名義の車でも、購入資金や使用実態を確認する

家族が自分の収入で購入し、日常的に使用・管理している車であれば、原則として本人の財産には含まれません。車検証の名義が家族であることに加え、購入契約やローン契約の当事者、保険契約者、維持費の負担者などから見ても、家族の財産であることが説明できる状態です。

一方で、車検証上は家族名義であっても、本人が購入資金の一部または全部を負担していたり、本人が主に使用していたりする場合には、購入資金の性質や契約の経緯について説明を求められることがあります。本人が資金を出したことや主な使用者であることだけで、直ちに本人の財産と決まるわけではありませんが、次のような点は手続の中で確認事項になり得ます。

  • 購入契約・ローン契約の当事者は誰か
  • 購入資金をどちらが負担したか、負担した資金が贈与・貸付・立替えのいずれに当たるか
  • 車検証上の使用者は誰か、実際に主に運転しているのは誰か
  • 保険契約者、維持費(ガソリン代、駐車場代、車検費用など)の負担者は誰か

「家族名義だから申告しなくてよい」と判断するのではなく、購入の経緯と使用実態を事実として説明できるようにしておくことが、後の確認を進めやすくします。

勤務先の社用車と、個人事業主の事業用車は区別する

勤務先が所有する社用車を業務のために借りているだけであれば、通常はその車自体が本人の財産にはなりません。もっとも、通勤に社用車を使っているのか、業務専用なのか、私的な使用も認められているのかといった使用条件については、確認を求められることがあります。

これに対して、個人事業主が事業のために所有している車は、名義が本人であれば、原則として本人の財産として扱われます。事業に不可欠な車であるという事情は、生活・事業上の必要性を考えるうえで重要な要素にはなり得ますが、それだけで当然に処分対象から外れるわけではありません。

法人名義の車と、個人事業主名義の車とでは扱いが異なるため、自分の事業形態がどちらに当たるか、車の名義が法人か個人かを、あわせて確認しておくとよい整理材料になります。

親族が買い取る可能性がある場合も、先に売却を急がない

車を手放すことになりそうな場合、親族などが適正な価格で買い取ることが検討される場合があります。管財事件では、破産管財人による査定や売却手続の中で、親族が適正な条件で購入できることもあります。

このとき重要になるのは、価格が適正であったか、代金が実際に支払われたか、その代金の使いみちを説明できるかという点です。申立て前に価格や支払いの記録が曖昧なまま売買を済ませると、後から経緯の確認に時間がかかります。

親族間での売買を検討する場合は、査定書、売買契約書、代金の振込記録を残しておきます。これらの資料があれば、取引が適正な条件で行われたことを示しやすくなります。

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車について独断で動く前に、確認すること・しないほうがよいこと

車のローンや名義について、自己破産の申立て前に「先に何かしておいたほうがよいのでは」と考えることがあります。しかし、車に関する行動は、手続の進め方や結果に影響することがあります。ここでは、動く前に確認したいことと、独断で進めた場合に生じ得る問題を整理します。

売却・名義変更・優先返済を考えているときは、先に経緯を整理する

自己破産を検討している段階で、車の名義変更、親族への売却、低額での譲渡、あるいは車のローンだけを優先して返済することを考える方がいます。しかし、これらを自己判断で進めることは避けたほうがよい場面があります。

ローン中の車は、契約によっては本人に所有権がないことがあり、その場合に無断で売却すると、契約上のトラブルにつながる可能性があります。また、不自然に安い価格での譲渡、財産の所在を分かりにくくする行為、特定の債権者だけを優先する返済、売却代金の使いみちが説明できない状態などは、手続の中で問題として扱われたり、事情の説明を求められたりすることがあります。

一方で、すでに売却や名義変更、ローンの一部返済をしてしまった場合であっても、それだけで手続が進められなくなるわけではありません。重要なのは、いつ、誰に対して、いくらで、どのような理由で行ったのかを、自分の記憶が新しいうちに整理しておくことです。事実関係を正確に伝えられる状態にしておくことが、その後の説明のしやすさにつながります。

破産開始決定後、管財人が選任された場合は指示に従う

自己破産を申し立てたからといって、その時点で車を含む財産の処分権限をすべて失うわけではありません。ただし、申立て後に車を売却したり、名義を変えたり、修理や車検のために大きな費用をかけたりする必要が生じた場合は、依頼している専門家に事前に確認しておくと、後の説明がしやすくなります。

とくに、破産開始決定が出て破産管財人が選任された場合、破産財団に含まれる車の管理や処分を行う権限は破産管財人に移ります。売却するかどうか、譲渡してよいか、引き渡す時期、使用を続けてよいか、車検を更新してよいかといった点は、事件の状況によって扱いが異なるため、その都度確認しながら進めることになります。

自己破産後に車を買うことはできるが、手続中と免責後は分けて考える

自己破産をしたあとに車を持てなくなるわけではありません。破産開始決定後に得た給与などの収入は、原則として本人の自由財産として扱われます。免責が確定したあとであれば、家計に見合う範囲で現金により車を購入すること自体は妨げられません。

一方で、手続がまだ続いている段階で高額な車を購入したり、出どころのはっきりしない資金を動かしたりすると、その資金がどこから来たのか、家計の状況と釣り合っているかについて説明を求められることがあります。購入の時期や金額に迷う場合は、進行中の手続を担当している専門家に確認しておくと判断しやすくなります。

なお、自己破産をしたあとは、信用情報への登録などの影響により、自動車ローンやカーリースの審査に通りにくくなる場合があります。この影響がどの程度の期間続くかは、信用情報機関への登録状況や各社の審査基準によって異なるため、一律の期間で説明できるものではありません。

車だけでなく、借金全体と生活再建の見通しから手続を考える

車を残せるかどうかだけで、自己破産を避けたり、他の手続を選んだりする前に、借金全体の状況とあわせて考えておきたい点があります。

任意整理では、債権者との合意や、返済を継続できる家計状況を前提に、自動車ローンを整理の対象から外し、支払いを続けることが検討される場合があります。ただし、これは当然に車を残せる制度ではなく、安定した収入と返済能力が前提になります。

個人再生には、住宅ローン特則のように自動車ローン付きの車を保護する特則はありません。所有権留保付きローンが残っている車は、個人再生を選んでも返却・引き揚げが問題になり得ます。一方、ローンを完済していて本人が所有する車は、個人再生で直ちに換価処分される仕組みではありませんが、車の評価額は清算価値として、再生計画で返済すべき額に影響することがあります。

手続を比較する際は、車を保有できるかどうかだけでなく、借金の総額、毎月無理なく返済できる金額、収入の安定性、車の維持費、他の財産、家族の生活への影響をあわせて見ておくと、車の扱い以外の判断材料も見えてきます。

まとめ|車について整理したい項目

車の扱いを考えるうえで、ここまでの内容を踏まえて確認しておきたい項目を、あらためて整理します。

  • 車検証上の所有者・使用者
  • ローン・リース契約の有無と契約内容
  • 現在の査定額
  • 購入資金、維持費、保険料を誰が負担しているか
  • 通勤・通院・送迎・仕事への具体的な影響
  • 売却、名義変更、親族への譲渡、ローン返済などをすでにしていないか
  • 車の維持費を含めても今後の家計が成り立つか

車を残せるかどうかは、多くの人にとって大きな関心事です。
しかし、本当に考えたいのは「車だけ」ではありません。
今後の返済を続けられるのか。
生活を立て直せるのか。
家計は無理なく維持できるのか。
車も、その判断材料の一つです。
車だけを切り離して考えるのではなく、借金全体と生活全体を整理することで、自分に合った選択肢 が見えやすくなります。

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