誹謗中傷。
インターネットの問題を調べていると、
この言葉に、
突然ぶつかることがあります。
書かれた。
見られている。
消えない。
気づけば、
「どこに相談すればいいのか」
という問いが、
頭の中に残ります。
警察か。
弁護士か。
それとも、
「削除業者」なのか。
ただ、
先に一つだけ、
前提を整理しておきます。
いわゆる削除業者の「削除代行」は、
業務の中身によっては、
法的評価を前提に
相手方や運営に削除を求める行為になりやすく、
弁護士以外が報酬目的で行うことに
強いリスクが出る領域です。
だから、
この回では、
削除業者を主軸の選択肢としては置きません。
その代わり、
警察と弁護士、
そして本人ができる対応を中心に、
「何を目的に、どの順番で」
動くかを整理します。
急がせるためではありません。
争わせるためでもありません。
選択肢を整えて、
自分の生活を守るために、
どこから始めるかを決めるためです。
相談先は「目的」で決まる
誹謗中傷の相談先は、
「どこが一番強いか」
で決まりません。
結論から言うと、
相談先は、
あなたの目的で決まります。
目的は大きく三つです。
① 身の安全を守りたい
② 投稿を見えなくしたい
③ 書いた人を特定したい
①が最優先なら、
中心は警察です。
危害予告やつきまとい、
住所や勤務先の晒しなど、
現実の生活に踏み込む兆しがあるときは、
投稿の評価より先に、
安全の確保が必要になります。
②が中心なら、
まずは本人ができる
通報や申告で収束するかを確認します。
それで足りないとき、
法的な主張や裁判所の手続が必要になりそうなら、
弁護士の領域になります。
③が目的に入るなら、
基本的に弁護士の領域です。
特定は、
運用ではなく、
法的な設計と証拠の問題になることが多いからです。
相談先を地図にする:警察/弁護士/本人対応
相談先は、
警察。
弁護士。
そして、
本人ができる対応。
この三つに分けると整理しやすくなります。
警察は、
刑事事件としての対応と安全確保の領域です。
弁護士は、
削除、
特定、
請求、
必要なら刑事との並走も含めて、
選択肢を法的に組み立てる領域です。
本人対応は、
通報や申告など、
プラットフォームの仕組みで収束できる可能性をまず試す領域です。
これは優劣ではありません。
担当領域の違いです。
警察に相談するのが合う場面:安全と刑事の領域
警察に相談する意味が大きいのは、
現実の生活に踏み込む兆しがあるときです。
危害予告。
つきまとい。
執拗な脅しや連絡。
住所や勤務先の晒し。
家族や職場への波及。
こうした場合、
削除や特定より先に、
安全の確保が優先になります。
また、
刑事事件として警察が動く場合、
警察側で投稿者特定に向けた捜査が進むことがあります。
その結果として、
被害者側が弁護士を立てて発信者情報開示をするより、
費用と時間の負担が小さく済むこともあります。
ただし、
警察が動くかどうかは、
事件性と緊急性に左右されます。
名誉毀損や侮辱のように
評価の問題が中心になる場合、
すぐに刑事として進むとは限りません。
また、
捜査で特定が進んでも、
その情報が被害者に当然に共有されるとは限りません。
警察は、
安全と刑事の局面で頼れる一方で、
目的によっては他の手段と組み合わせて考える必要があります。
弁護士に相談するのが合う場面:削除・特定・請求を設計
弁護士に相談する意味は、
争うためだけにあるわけではありません。
弁護士の役割は、
いま起きている問題を法的に扱える形に整え、
目的に合わせて順番を設計することです。
削除。
発信者情報開示。
損害賠償。
刑事との並走。
そして、
何もしないという選択。
選択肢を一つの地図に並べて、
自分の生活に合う道を選ぶ。
これが弁護士相談の中心になります。
最初から
「特定まで考えたい」
「再発防止を組み込みたい」
「区切りをつけたい」
という目的があるなら、
早い段階で地図を作っておく意味があります。
削除を考えるときの現実的な順番:本人対応→弁護士
削除を考えるときの現実的な順番は、
次の二段階になります。
第一に、
本人が通報・申告で収束できるかを確認する。
第二に、
それで足りないなら、
弁護士に相談して法的に組み立てる。
通報・申告で大切なのは、
強い言葉で押し切ることではなく、
必要な情報を揃えて淡々と出すことです。
結局どこに相談する?目的別チェックリストで決める
迷うときほど、
条件だけで分けてみると楽になります。
A:まず警察を検討するサイン(安全と刑事)
- 危害予告や脅しがある
- 住所・勤務先・家族など現実の生活に関わる情報が晒されている
- つきまとい、執拗な連絡、実害の予兆がある
- 職場や家族に波及しそうで、安全面の不安が強い
- 投稿が単なる評価ではなく、明確に犯罪に接続しそうな内容を含む
B:まず本人対応で試すのが合うサイン(通報・申告で収束する可能性)
- 目的は「まず見えなくしたい(削除)」が中心
- プラットフォームの規約違反が比較的明確に見える
- 対象が1〜数件程度で、拡散も限定的
- いまは特定や賠償よりも、生活を落ち着かせたい
- 手続や争いに大きなエネルギーを使いたくない
C:最初から弁護士に相談するのが合うサイン(設計が必要)
- 削除だけでなく、再発防止や区切りまで考えたい
- 書いた人の特定(発信者情報開示)を視野に入れている
- 投稿数が多い/複数サイトにまたがる/繰り返される
- 通報しても動かない、判断が割れる、運営が応じない
- 実名や具体的事実が書かれ、仕事や人間関係に現実の影響が出ている
- 時間と費用の見通しも含めて、選択肢を整理したい
相談に行く前にやること:客観資料として残す
どこに相談するにしても、
先にやっておきたい共通作業があります。
それは、
証拠を、
「後から見ても同じ内容だと分かる形」
つまり、
客観資料として残しておくことです。
URLと投稿日時が分かる状態で保存する。
スクリーンショットは全体と拡大を残す。
可能ならPDF化して固定する。
連続投稿や拡散は時系列が分かる形にする。
影響が出ているなら、問い合わせやキャンセル通知などの裏付けも残す。
運営とのやり取りは送受信記録として残す。
先に固定する。
その上で、
警察に行くのか、
本人対応で進めるのか、
弁護士に設計を頼むのかを選ぶ。
費用と時間の現実:どこまでを「期待」するかを揃える
誹謗中傷の対応は、
「正しさ」だけで進む問題ではありません。
生活の中で、
どれだけの時間を割けるか。
どれだけの費用を許容できるか。
ここで無理をすると、
途中で判断が崩れやすくなります。
警察は原則費用がかからない一方、
目的は安全と刑事に限られます。
本人対応は費用をかけずに始められますが、
収束しないこともあります。
弁護士は費用と時間がかかる代わりに、
選択肢の設計ができます。
まとめ:相談先は「強さ」ではなく「担当領域」で選ぶ
安全と刑事の局面なら警察。
投稿を見えなくしたいなら、
まずは本人の通報・申告で収束するかを確認する。
削除が動かない。
繰り返される。
特定まで視野に入る。
そういう局面では、
弁護士に相談して設計に入る。
この順番が、
結果として回り道を減らします。
関連:削除と開示は、目的も構造も違う
削除請求の流れ・費用・期間・現実については、
こちらで整理しています。
書いた人を特定する発信者情報開示については、
こちらで全体像と判断軸を整理しています。
発信者情報開示とは?流れ・費用・期間と「本当にやるべきか」の判断軸
よくある誤解:Q&Aで期待値を整える
Q1:警察に相談すれば、投稿者を特定して教えてくれますか
警察が動く場合、
捜査の中で投稿者の特定が進むことはあります。
ただし、
削除や賠償のための特定ではなく、
刑事事件としての対応と安全の確保が目的です。
そのため、
捜査で得られた情報が当然に共有されるとは限りません。
Q2:通報すれば、投稿は必ず削除されますか
必ず削除されるとは限りません。
ただ、
費用をかけずに始められ、
早く収束することもあります。
Q3:削除できれば、それで解決ですか
解決になることもあります。
一方で、
繰り返される場合や、
見え方として残る場合もあります。
Q4:弁護士に相談すると、必ず特定できますか
必ず特定できるわけではありません。
証拠や時期、サービスの性質など、
条件で見通しは変わります。
Q5:相談したら、争う方向に引っ張られませんか
そうなる必要はありません。
争うことも、争わないことも尊重したまま、
生活に合う順番を作るための相談もあります。
この回では、
「どこに相談するか」
を整理しました。
いまの自分が、
どの段階から整理するのか。
それも、
選ぶことができます。
どの段階から整理しますか
インターネット問題は、
必ずしも手続から始まるわけではありません。
いまの自分の状況に合わせて、
整理する段階を選ぶことができます。