「不貞慰謝料の金額について話がまとまった。示談書には何を書けばいい?」
「相手から示談書が送られてきたけれど、このまま署名して大丈夫だろうか。」
「今後一切連絡しないという条項や、高額な違約金が書かれている。」
「慰謝料を支払えば、本当にこれですべて終わるのだろうか。」

不貞慰謝料について話し合いがまとまった場合には、合意した内容を示談書や合意書として残すことがあります。

もっとも、不貞慰謝料の示談で決めることは、「慰謝料として○万円を支払う」ということだけではありません。

いつまでに、どのような方法で支払うのか。
今回の支払いによってほかの請求も終了するのか。
不貞相手との今後の接触をどうするのか。
約束に違反した場合に違約金を支払うのか。

こうした内容によって、示談後に当事者が負う義務や、今後できる請求は大きく変わります。

特に注意したいのが、「慰謝料の金額について合意したこと」と、「不貞に関する問題がすべて解決したこと」は必ずしも同じではないという点です。

示談書の内容が曖昧であれば、慰謝料を支払った後に追加の請求を受けたり、接触禁止や守秘義務をめぐって新たなトラブルになったりすることがあります。
反対に、早く解決したいからといって、内容を十分に確認せず、必要以上に広い義務や高額な違約金を受け入れてしまうことにも注意が必要です。

また、不貞相手との間で示談する場合には、不貞をした配偶者との関係や、慰謝料を支払った後の求償についても考えておく必要があります。

この記事では、不貞慰謝料の示談書を作成するときや、相手から提示された示談書を確認するときに、どのような条項を確認すればよいのか、それぞれの条項にはどのような意味があるのかを整理します。

この記事のポイント
01
不貞慰謝料の示談では、慰謝料の金額だけでなく、解決の条件全体を確認することが大切です。
支払期限や方法、清算条項、接触禁止、守秘義務、違約金など、示談後に当事者がどのような権利や義務を持つのかを明確にしておく必要があります。

02
清算条項や接触禁止、違約金は、その有無だけでなく「どこまでを対象にするか」が重要です。
範囲が曖昧だったり必要以上に広かったりすると、示談後に新たなトラブルが生じたり、想定していなかった義務を負ったりすることがあります。

03
不貞相手との示談では、慰謝料を支払った後の求償関係にも注意が必要です。
不貞をした配偶者への求償権を残すのか、放棄するのかによって、示談後の当事者間の関係が変わることがあります。

不貞慰謝料の示談書には何を書く?

不貞慰謝料について話し合いがまとまった場合には、合意した内容を示談書や合意書として残しておくことが一般的です。

示談書というと、「慰謝料として○万円を支払う」という内容を記載する書類をイメージするかもしれません。
しかし、不貞慰謝料の示談では、金額以外にも確認しておきたいことがあります。

例えば、慰謝料をいつ、どのような方法で支払うのか、今回の支払いによって不貞に関する問題をすべて解決するのか、今後、不貞相手との接触を禁止するのか、合意した内容に違反した場合にどうするのかなどです。

こうした内容を曖昧にしたまま慰謝料だけを支払うと、後になって追加の請求を受けたり、示談後の行動をめぐって新たなトラブルになったりすることがあります。

そのため、不貞慰謝料の示談書では、「いくら支払うか」だけではなく、「今回の問題をどのような条件で終わらせるのか」まで確認することが大切です。

慰謝料の金額・支払方法

慰謝料として支払う金額、一括払いか分割払いか、支払期限や振込方法などを定めます。

清算条項

示談で定めたもの以外に、今回の問題について互いに追加の請求をしないことを確認します。

接触禁止・守秘義務

今後、不貞相手と連絡や接触をしないことや、不貞や示談の内容を第三者に口外しないことなどを定める場合があります。

違約金

接触禁止などの約束に違反した場合に、一定の金銭を支払うことを定める場合があります。

求償権の取扱い

不貞相手との示談では、支払った慰謝料について、不貞をした配偶者に後から負担を求めることができるかも問題になることがあります。

示談書を作る目的は、合意した内容を明確にすること

話し合いの中で「慰謝料として100万円を支払えば、これで終わりにする」と合意していたとしても、その内容を書面に残していなければ、後から双方の認識が食い違うことがあります。

例えば、支払った側は「100万円を支払えばすべて解決した」と考えている一方で、請求した側は「100万円は慰謝料の一部として受け取っただけ」と考えているかもしれません。

また、「今後は連絡を取らない」と話していたとしても、電話やLINEだけを禁止するのか、職場などで偶然会った場合まで問題になるのかなど、その意味について認識が異なることもあります。

示談書を作成することで、何について、どのような条件で合意したのかを明確にし、後から認識の違いが生じることを防ぎやすくなります。

示談書に書けば、どのような条件でもよいわけではない

もっとも、不貞について示談するからといって、相手から提示された条件をすべて受け入れる必要があるわけではありません。

例えば、接触禁止の範囲が必要以上に広かったり、違反した場合の違約金が非常に高額であったりすることがあります。
また、清算条項や求償権について十分に確認しないまま合意すると、想定していなかった権利まで放棄する内容になっていることもあります。

反対に、慰謝料を請求する側にとっても、金額だけを決めて示談してしまうと、支払期限が守られなかった場合や、不貞関係がその後も続いていた場合などに問題が生じることがあります。

そのため、示談書を確認するときには、一つひとつの条項について、「この条項によって誰が、何を約束することになるのか」を確認することが重要です。

示談書を見るときのポイント

不貞慰謝料の示談書は、単に慰謝料の金額を確認するための書類ではありません。

金額や支払方法だけでなく、追加請求の有無、今後の接触、約束に違反した場合の扱いなども含めて、今回の問題をどのような条件で解決するのかを確認するための書類です。

では、具体的にそれぞれの条項について、どのような点を確認すればよいのでしょうか。
まずは、示談の中心となる慰謝料(解決金)の金額と支払方法から見ていきます。

慰謝料の金額・支払方法で確認したいこと

不貞慰謝料について示談するときには、まず慰謝料(または解決金など)として支払う金額を明確にします。

もっとも、金額について合意するだけでは十分ではありません。
いつまでに支払うのか、一括で支払うのか分割で支払うのか、どの方法で支払うのかなども決めておく必要があります。

特に分割払いにする場合には、途中で支払いが止まった場合にどうするのかまで確認しておくことが重要です。

慰謝料の金額

今回の不貞について、慰謝料(または解決金など)としていくら支払うのかを明確にします。

支払期限・支払方法

いつまでに支払うのか、どの口座へ振り込むのかなど、実際の支払方法を決めます。

分割払いの条件

分割払いにする場合には、毎回の支払額、支払日、支払回数などを具体的に定めます。

支払いが遅れた場合

分割払いが滞った場合の期限の利益の喪失や、遅延損害金について定めることがあります。

慰謝料として支払う金額を明確にする

まず、今回の不貞について慰謝料(または解決金など)としていくら支払うのかを明確にします。

特に、慰謝料以外の金銭も含めて話し合いをしている場合には、示談によってどの範囲の問題を解決するのかが曖昧にならないよう注意が必要です。

また、慰謝料の金額について合意する前には、そもそも提示されている金額が事案に照らして妥当なのかを検討する必要があります。

不貞慰謝料の金額は、不貞の期間や回数、婚姻期間、不貞によって別居や離婚に至ったかなど、さまざまな事情によって変わります。

不貞慰謝料はいくら?|請求できる条件・相場・金額が変わる事情

支払期限と支払方法を決める

慰謝料を一括で支払う場合には、「いつまでに支払うのか」を具体的に定めます。

例えば、「示談成立後速やかに支払う」といった表現では、いつまでに支払えばよいのかが明確ではありません。
「2026年○月○日まで」のように、支払期限を特定しておく方が分かりやすいでしょう。

銀行振込で支払うのであれば、振込先の口座も示談書に記載しておくことがあります。
また、振込手数料をどちらが負担するのかについても定めておけば、支払いの際の認識の違いを防ぐことができます。

一括で支払えない場合には、分割払いを定めることもできる

慰謝料の金額については合意できても、一括で支払うことが難しい場合があります。

その場合には、相手との合意によって分割払いにすることも可能です。

分割払いにするのであれば、単に「毎月分割して支払う」とするのではなく、毎月の支払額、支払日、支払回数、最終回の支払額などを具体的に決めておくことが大切です。

例えば、100万円を毎月5万円ずつ支払うのであれば、初回の支払日から最終回まで、いつ、いくら支払うのかが分かる内容にしておくとよいでしょう。

分割払いでは、支払いが滞った場合の扱いも確認する

分割払いの場合には、途中で支払いが滞る可能性も考えておく必要があります。

そのため、一定の支払いを怠った場合には、それ以降の分割払いを認めず、残額を一括して支払うという「期限の利益喪失条項」を定めることがあります。

もっとも、一度でも数日の支払いの遅れがあれば直ちに残額全額を支払わなければならないとするのか、一定額以上の滞納があった場合に限るのかなど、条件の定め方はいくつか考えられます。

また、支払期限を過ぎた場合について、遅延損害金を定めることもあります。

分割払いを認める側にとっては、長期間にわたって確実に支払いを受けられる内容になっているか、支払う側にとっては、わずかな遅れによって過度に重い負担が生じる内容になっていないかを確認することが大切です。

支払条件は具体的に決める

慰謝料について示談するときは、「いくら支払うか」だけでなく、「いつ、どのように支払うか」まで具体的に決めておきましょう。

特に分割払いでは、毎回の支払額や期限だけでなく、支払いが滞った場合の扱いまで確認しておくことで、示談後のトラブルを防ぎやすくなります。

慰謝料の金額と支払方法を決めたら、次に重要になるのが、その支払いによって今回の問題をどこまで解決するのかという点です。
次に、示談後の追加請求を防ぐために重要な清算条項について見ていきます。

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清算条項|示談後の追加請求を防ぐために確認する

不貞慰謝料の示談書で特に重要な条項の一つが、清算条項です。

清算条項とは、簡単にいえば、示談書に定めたもの以外には、当事者間に今回の問題について債権や債務がないことを確認する条項です。

慰謝料として一定の金額を支払っても、それだけで当然に「今回の不貞について今後一切請求しない」という合意になるとは限りません。

そのため、今回の支払いによって不貞に関する問題を最終的に解決するのであれば、そのことが分かるように清算条項を定めておくことが大切です。

追加請求をしないことを明確にする

合意した慰謝料を支払った後に、同じ不貞行為についてさらに慰謝料を請求されないよう、今回の問題をどこまで解決するのかを明確にします。

清算する範囲を確認する

どの不貞行為について、誰と誰との間の権利関係を清算するのかを確認します。清算条項の文言が広すぎないかにも注意が必要です。

慰謝料を支払っただけでは、追加請求の問題が残ることがある

例えば、不貞相手が配偶者から100万円の慰謝料を請求され、その金額を支払うことで合意したとします。

支払う側としては、「100万円を支払えば、今回の問題はすべて終わる」と考えていることが多いでしょう。

しかし、示談書に慰謝料100万円を支払うことしか書かれていなければ、その支払いによって今回の不貞に関する損害をすべて清算する趣旨なのか、それとも請求の一部について支払っただけなのかが明確でない場合があります。

そこで、示談書では、今回の不貞に関して、示談書に定めたものを除いて当事者間にほかの債権債務がないことを確認する清算条項を設けることがあります。

これによって、合意した条件を履行すれば、同じ問題について後から追加の請求を受けないという解決の範囲を明確にすることができます。

清算条項は「何について清算するのか」が重要

清算条項があればよいというだけではなく、どの範囲の権利関係を清算する内容になっているのかを確認することも重要です。

不貞慰謝料の示談であれば、通常は、今回問題となっている不貞行為に関する慰謝料などの権利関係を解決することが中心になります。

一方で、「当事者間には一切の債権債務が存在しない」と広く定めた場合には、不貞とは別の理由で当事者間に金銭の貸し借りなどがあれば、それについても清算の対象となるのかが問題になる可能性があります。

そのため、ほかにも当事者間の権利関係がある場合には、今回の示談によって何を解決し、何を残すのかを意識して文言を確認する必要があります。

清算条項があっても、その後の新たな行為まで許されるわけではない

清算条項を定めたからといって、示談後に行われた新たな不貞行為についてまで、当然に責任を負わなくなるわけではありません。

例えば、過去の不貞について慰謝料を支払い、その問題を清算した後に、再び同じ相手との不貞関係を続けた場合には、示談後の行為について新たな問題が生じることがあります。

清算条項は、基本的には示談の対象となった過去の問題について権利関係を確定させるためのものです。
示談後に新たな行為があった場合まで、過去の示談によってすべて解決済みになるとは限りません。

不貞相手との示談では、配偶者との関係とは分けて考える

不貞慰謝料では、不貞をした配偶者と不貞相手の双方が関係するため、誰との間で示談するのかも重要です。

例えば、妻が夫の不貞相手と示談した場合、その示談書の清算条項は、基本的には妻と不貞相手との間の権利関係について定めるものです。

その示談によって、当然に妻と夫との間の慰謝料や離婚に伴う問題まで解決するわけではありません。

また、不貞相手が慰謝料を支払った後、不貞をした配偶者に対してその一部の負担を求める求償の問題もあります。
これについては、清算条項とは別に確認しておく必要があります。

清算条項を確認するポイント

清算条項では、「これで終わり」と書かれているかだけではなく、「誰と誰の間で、何について終わりにするのか」を確認することが大切です。

今回の不貞について追加請求を残さない一方で、関係のない権利まで意図せず放棄する内容になっていないか、示談の対象となる範囲を確認しましょう。

清算条項によって過去の問題をどこまで解決するのかを決める一方で、不貞慰謝料の示談では、示談後の行動について約束をすることもあります。
次に、接触禁止や守秘義務について、どこまで定めるべきかを見ていきます。

接触禁止・守秘義務はどこまで定める?

不貞慰謝料の示談では、慰謝料の支払いだけでなく、示談後の当事者の行動について約束をすることがあります。

代表的なものが、不貞相手との連絡や接触を禁止する「接触禁止条項」と、不貞や示談について第三者に口外しないことを定める「守秘義務条項」です。

特に、不貞関係を解消して夫婦関係を継続する場合には、「今後、不貞相手と一切連絡を取ってほしくない」と考えることもあるでしょう。
また、不貞や示談の内容を周囲に知られたくないという理由から、守秘義務を定めることもあります。

もっとも、こうした条項は、禁止する行為の範囲を必要以上に広くすると、示談後に「これは違反になるのか」という新たな争いが生じることがあります。

接触禁止条項

電話、LINE、SNS、面会など、不貞相手との今後の連絡や接触を禁止する条項です。どのような接触を禁止するのかを確認する必要があります。

守秘義務条項

不貞の事実や示談の内容などを第三者に口外しないことを定める条項です。何を、誰に伝えることまで禁止するのかが問題になります。

接触禁止では、何を禁止するのかを明確にする

接触禁止条項では、「今後一切接触しない」と定めるだけではなく、具体的にどのような行為を禁止するのかを確認しておくことが大切です。

例えば、直接会うことだけでなく、電話、LINE、メール、SNSのメッセージなどによる連絡を禁止することがあります。
また、自分から連絡することだけではなく、相手から連絡が来た場合に応答することも禁止するのかを検討することがあります。

一方で、当事者が同じ職場で働いている場合や、仕事上どうしても連絡を取らなければならない関係にある場合には、「一切の接触を禁止する」という内容では現実的でないことがあります。

そのような場合には、私的な連絡や面会を禁止しつつ、業務上必要な連絡については例外とするなど、実際の関係に応じて内容を調整することが考えられます。

偶然会っただけで違反になるような内容には注意する

接触禁止条項を定める目的は、通常、不貞関係が再び始まったり、示談後も私的な関係が続いたりすることを防ぐことにあります。

そのため、当事者の意思とは関係なく偶然同じ場所に居合わせた場合まで、直ちに示談違反として扱う内容が適切とは限りません。

特に、勤務先が同じ場合や生活圏が近い場合などには、偶然の接触を完全に避けることが難しいケースもあります。

「接触」という言葉だけでは、どこまでの行為が禁止されるのか分かりにくいため、必要に応じて、禁止したい行為と、やむを得ない接触を区別できる内容にしておくことが重要です。

守秘義務では、何を誰に話してはいけないのかを確認する

守秘義務条項では、不貞の事実や示談の内容を第三者に口外しないことを定めることがあります。

例えば、不貞の事実を職場や知人に言いふらしたり、示談書の内容をSNSに投稿したりすることを防ぐという目的であれば、守秘義務を定める意味があります。

もっとも、「今回の件について第三者に一切話してはならない」と広く定めると、必要な相談までできなくなる可能性があります。

例えば、弁護士に示談書の内容を相談したり、税務上の問題について税理士に確認したり、裁判などの法的手続で必要な説明をしたりする場合まで禁止する必要は通常ありません。

そのため、守秘義務を定める場合には、弁護士などの専門家への相談や法令上必要となる場合などについて、例外を設けることも考えられます。

一方だけに義務を負わせるのか、双方が約束するのか

接触禁止や守秘義務については、誰が義務を負うのかも確認しておきたいポイントです。

例えば、不貞相手だけに「不貞をした配偶者へ連絡しない」という義務を負わせる場合もあれば、不貞をした配偶者からも連絡をしないことを前提として解決する場合もあります。

また、守秘義務についても、慰謝料を支払う側だけに口外禁止を求めるのか、請求する側も含めて双方が不貞や示談の内容を第三者に口外しないことを約束するのかによって、条項の意味は変わります。

示談書を確認するときには、禁止されている行為だけではなく、誰が誰に対してその義務を負う内容になっているのかも確認することが大切です。

示談後のルールは具体的に

接触禁止や守秘義務は、広く定めればよいというものではありません。

示談後に守ることのできる現実的な内容になっているか、何が禁止され、どのような場合が例外となるのかを確認しておくことで、新たなトラブルを防ぎやすくなります。

そして、接触禁止や守秘義務を定める場合には、「約束に違反したらどうするのか」として違約金が定められることもあります。
次に、違約金条項を設ける場合に確認しておきたいポイントを見ていきます。

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違約金条項を入れるときの注意点

不貞慰謝料の示談書では、接触禁止や守秘義務などの約束に違反した場合に、一定の金銭を支払うことを定めることがあります。

例えば、「今後、不貞相手と連絡や接触をした場合には、違約金として○万円を支払う」といった条項です。

違約金を定めておけば、示談後の約束を守るよう促すとともに、実際に違反があった場合の金銭的な処理をあらかじめ決めておくことができます。

もっとも、違約金条項を設ける場合には、単に金額だけを見るのではなく、どのような行為をすると違約金が発生するのか、違反の回数をどのように数えるのか、金額が過大ではないかといった点まで確認する必要があります。

違約金が発生する条件

どのような行為をした場合に違反となるのかを明確にします。接触禁止などの元となる義務が曖昧だと、違約金が発生する場面も曖昧になります。

違約金の金額

約束の内容や違反によって生じ得る損害なども踏まえ、過度に高額な違約金になっていないかを確認します。

違反回数の数え方

「1回につき○万円」と定める場合には、LINEの送信回数や一連のやり取りをどのように数えるのかが問題になることがあります。

やむを得ない接触の扱い

同じ職場で働いている場合などには、業務上必要な連絡や偶然の接触まで違約金の対象にならないよう、条件を確認する必要があります。

まず「何をしたら違反になるのか」を確認する

違約金条項を確認するときには、金額に目が向きがちですが、その前に確認したいのが、違約金が発生する条件です。

例えば、「相手方と接触した場合には違約金を支払う」と定められていても、「接触」が何を意味するのかが曖昧であれば、後から違反の有無をめぐって争いになる可能性があります。

直接会うことだけを意味するのか、電話やLINE、SNSでの連絡も含むのか、相手から届いた連絡に返信した場合も含むのかなど、具体的な内容を確認する必要があります。

前の項目で説明した接触禁止条項そのものが曖昧であれば、それに連動する違約金条項も曖昧になります。
そのため、違約金の金額を決める前に、まず違反となる行為をできるだけ明確にしておくことが大切です。

「1回につき○万円」では、何を1回とするのかが問題になる

接触禁止に違反した場合について、「違反1回につき○万円を支払う」と定めることがあります。

このような条項では、何をもって「1回」と数えるのかも確認しておきたいところです。

例えば、一日のうちにLINEを何度も送り合った場合に、メッセージ1通ごとに1回とするのか、一連のやり取り全体を1回とするのかによって、違約金の金額は大きく変わります。

また、数日間にわたって連絡を取り合った場合や、一度会って数時間一緒に過ごした場合などについても、条項の内容によっては違反回数について認識が分かれることがあります。

違約金を定めるのであれば、後から金額を計算できるように、どのような単位で違反を捉えるのかも意識しておく必要があります。

違約金は高く設定すればよいわけではない

慰謝料を請求する側としては、「二度と連絡を取ってほしくない」という思いから、高額な違約金を設定したいと考えることもあるでしょう。

一方、慰謝料を支払う側にとっては、示談を成立させたいという理由から、高額な違約金条項を十分に検討せず受け入れてしまうことがあります。

しかし、違約金の金額は、高ければ高いほどよいというものではありません。
条項の目的や禁止される行為の内容、違反によって生じる影響などに照らして、著しく高額な違約金については、その効力が問題となる可能性もあります。

また、金額自体はそれほど高くなくても、「違反1回につき○万円」という定め方によって違約金が繰り返し発生するのであれば、結果として非常に大きな金額になることもあります。

そのため、違約金条項は、一回あたりの金額だけではなく、どのような場合に、何回発生する可能性があるのかまで含めて確認することが重要です。

違約金があれば、違反について何でも請求できるとは限らない

違約金条項を設ける場合には、その違約金がどのような趣旨で定められているのかも確認しておく必要があります。

例えば、約束に違反した場合の損害賠償額をあらかじめ定める趣旨で違約金を設定する場合には、実際に違反があったときの損害賠償との関係が問題になります。
違約金のみを請求できるのか、それを超える損害が生じた場合に追加の請求ができるのかなどは、条項の内容によって異なります。

示談後に再び不貞行為が行われた場合には、単なる接触禁止への違反だけでなく、新たな不貞行為そのものについて責任が生じることもあります。

そのため、違約金と新たな不貞行為の責任の関係についても、整理しておいた方がよいでしょう。

違約金は条件と金額をセットで確認する

違約金条項では、「いくら支払うのか」だけでなく、「何をしたら、何回、違約金が発生するのか」を確認することが重要です。

接触禁止などの義務の内容を明確にしたうえで、違反の数え方や金額まで確認し、示談後に新たな争いが生じにくい内容にしておくことが大切です。

ここまでの条項は、主に慰謝料を請求する側と支払う側との関係についてのものです。
一方、不貞相手が慰謝料を支払う場合には、不貞をした配偶者との間で、その慰謝料を最終的に誰がどの程度負担するのかという問題が残ることがあります。
次に、不貞慰謝料の示談で見落としやすい求償権について見ていきます。

不貞相手との示談では求償権にも注意する

配偶者ではなく、不貞相手との間で慰謝料について示談する場合には、「求償権」の取扱いも確認しておきたいポイントです。

不貞行為について、不貞をした配偶者と不貞相手の双方が責任を負う場合には、被害を受けた配偶者との関係では、共同不法行為として扱われる可能性が高いです。

そのため、不貞相手が慰謝料を支払った場合には、自分が負担すべき割合を超えて支払った部分について、不貞をした配偶者に負担を求めることができます。
これが求償の問題です。

慰謝料を請求する側

不貞相手から慰謝料を受け取った後、その不貞相手から自分の配偶者に求償される可能性があります。夫婦関係を継続する場合には、特に確認しておきたい問題です。

慰謝料を支払う側

求償権を放棄すると、不貞をした配偶者に後から負担を求めることができなくなります。示談条件として放棄するのかを確認する必要があります。

不貞相手が慰謝料を全額負担するとは限らない

例えば、夫の不貞によって妻に慰謝料100万円相当の損害が生じ、妻が不貞相手から100万円の支払いを受けたとします。

妻との関係では、不貞相手が100万円を支払うことで慰謝料の問題が解決したとしても、不貞をした夫と不貞相手との間の負担関係まで当然に解決するわけではありません。

不貞相手が、本来は夫も一定の割合を負担すべきだったと考える場合には、100万円を支払った後に、その一部について夫へ求償することが問題になることがあります。

どちらがどの程度を負担するのかは、常に半分ずつと決まっているわけではありません。
不貞関係に至った経緯や双方の関与の程度などを踏まえて、内部的な負担割合が問題になります。

夫婦関係を継続する場合には、求償されることの意味も考える

慰謝料を請求する側が、不貞をした配偶者との婚姻関係を継続する場合には、求償権が特に問題になることがあります。

例えば、妻が不貞相手から100万円を受け取った後、不貞相手が夫に対して50万円を求償し、夫がその50万円を支払えば、夫婦の家計全体で見ると、その分だけ金銭が外部へ支払われることになります。

そのため、不貞相手との示談によって問題を最終的に解決したい場合には、不貞相手から不貞をした配偶者への求償をどうするのかまで検討することがあります。

特に、夫婦関係を継続するケースでは、慰謝料額だけではなく、示談後に自分の配偶者へ求償される可能性も含めて、最終的な解決条件を考えることが大切です。

示談書で求償権を放棄することもある

こうした問題を残さないため、不貞相手との示談では、不貞相手が不貞をした配偶者に対する求償権を放棄するという条項を設けることがあります。

求償権を放棄すれば、不貞相手は、慰謝料を支払った後に、その負担の一部を不貞をした配偶者へ求めることができなくなります。

慰謝料を請求する側にとっては、示談後に配偶者へ請求が及ぶことを防ぐという意味があります。

一方、不貞相手にとっては、本来であれば配偶者にも負担を求めることができた可能性があるにもかかわらず、その権利を放棄することになります。

そのため、求償権の放棄を示談条件とする場合には、そのことを慰謝料額と切り離して考えるのではなく、求償権を放棄することも含めた全体の示談条件が妥当なのかを検討する必要があります。

清算条項だけでなく、求償権の取扱いを個別に確認する

前に説明した清算条項と、求償権の問題は区別して考える必要があります。

例えば、妻と不貞相手との間で「本件についてほかに債権債務がない」と確認したとしても、それだけで当然に、不貞相手が夫に対して持つ可能性のある求償権まで放棄したことになるとは限りません。

妻と不貞相手との清算と、不貞相手と夫との間の求償関係は、当事者の組合せが異なるからです。

求償まで含めて解決するのであれば、誰が誰に対するどの権利を放棄するのかが分かるように、その取扱いを示談書で明確にしておくことが重要です。

求償権まで含めて示談条件を見る

不貞相手との示談では、「いくら慰謝料を受け取るか」だけでなく、その後、不貞をした配偶者に求償される可能性も確認しておきましょう。

求償権を放棄する場合には、その放棄自体も示談条件の一つです。慰謝料額、清算条項などとあわせて、最終的に誰がどの範囲の負担をすることになるのかを考えることが大切です。

このように、不貞慰謝料の示談書では、慰謝料の金額だけでなく、清算条項、接触禁止、守秘義務、違約金、求償権など、示談後の関係まで考えて内容を決める必要があります。
最後に、示談書を作成するときに大切な考え方を整理します。

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示談書は「今回の問題をどう終わらせるか」を確認して作る

この記事では、不貞慰謝料について示談書を作成するときに確認しておきたい条項について説明してきました。

不貞慰謝料の示談では、どうしても「慰謝料をいくらにするか」に目が向きやすくなります。

もちろん、慰謝料の金額は重要です。
しかし、示談書を作成する目的は、単に支払う金額を書面に残すことだけではありません。

慰謝料をいつ、どのように支払うのか。
今回の支払いによってどこまで問題を清算するのか。
今後の連絡や接触をどうするのか。
約束に違反した場合にはどうするのか。
不貞相手が慰謝料を支払う場合には、求償権をどうするのか。

こうした点まで確認して、今回の不貞に関する問題をどのような条件で終わらせるのかを明確にすることが、示談書を作成する大きな意味です。

請求する側と支払う側では、確認したいポイントも異なる

慰謝料を請求する側であれば、合意した慰謝料が確実に支払われる内容になっているか、不貞関係が再び始まることを防ぐためにどのような約束が必要なのかなどを考えることになります。

一方、慰謝料を支払う側であれば、慰謝料を支払った後に同じ問題について追加請求を受けない内容になっているか、接触禁止や違約金などによって必要以上に重い義務を負うことになっていないかを確認する必要があります。

また、不貞相手との示談では、求償権を放棄するのかどうかによって、最終的な負担も変わることがあります。

そのため、相手から提示された示談書を見るときには、一つひとつの条項について、自分が何を約束し、相手が何を約束する内容になっているのかを確認することが大切です。

条項を増やせばよいわけではない

示談後のトラブルを防ぐためには、必要な事項を示談書に定めておくことが重要です。

もっとも、将来起こり得ることをすべて想定して、できるだけ多くの禁止事項や違約金を定めればよいというものでもありません。

例えば、接触禁止の範囲を広げすぎれば、偶然の接触や仕事上必要な連絡まで問題になることがあります。
守秘義務を広く定めすぎれば、専門家への相談など、必要な情報共有まで制限する内容になりかねません。

また、曖昧な義務に高額な違約金を組み合わせると、示談によって問題を解決したはずなのに、今度は示談違反をめぐって新たな争いになることもあります。

示談書では、相手にできるだけ多くの義務を負わせることではなく、今回の問題を解決するために必要な内容を、双方が理解できる形で具体的に定めることが重要です。

不貞慰謝料の示談書で大切なのは、「いくら払うか」だけではなく、「これで何を終わらせ、示談後にどのような関係にするのか」を明確にすることです。

慰謝料の金額や支払方法、清算条項、接触禁止、守秘義務、違約金、求償権など、それぞれの条項が自分にどのような権利や義務を生じさせるのかを確認したうえで、今回の問題に合った示談内容を考えることが大切です。

不貞慰謝料について示談を考えるときには、そもそも慰謝料を請求できるのか、適切な金額はいくらなのか、請求された場合にはどのように対応すればよいのかなどを整理しておくことも重要です。
気になるテーマがあれば、関連記事も参考にしてください。

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