誹謗中傷の投稿者が特定できた。
ここから先は「勝てるか」よりも、どう終わらせるかで結果が変わります。
示談提案は、強く言えば通るものではありません。
逆に弱すぎると、蒸返しが止まりません。
大事なのは、相手を追い込むことではなく、相手が飲める形で、蒸返しが起きないように止めることです。
このページでは、被害者側の目線で、投稿者に出す示談提案を「要求セット」としてどう組むかを、順番と強度で整理します。
※前提として、発信者情報が開示された後の流れ(交渉/訴訟/止まる)を俯瞰したい場合は、先にこちらをどうぞ。
発信者情報が開示された後どうなる?損害賠償までの流れ
示談提案は「セット」と「順番」で決まる
示談は、要素を盛るほど強くなるわけではありません。むしろ、盛りすぎると相手が引いて終わります。
基本は要求セットを5つに固定して、順番で出すことです。
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謝罪:区切りを作る
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削除:問題の根を切る
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金額:条件セットに釣り合った金額
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再発防止:蒸返しを止める
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清算:追加請求を止める
順番は、原則として謝罪 → 削除 → 金額 → 再発防止 → 清算の方がまとまりやすいです。
要求セットの中身(最小構成)
ここからは、この順番どおりに「中身」を決めます。
大事なのは、全部を強くしないことです。
強くするのは、蒸返しを止めるために必要な部分(対象特定・削除・清算)だけ。
1)謝罪:まず「区切り」を作る(断定で固めない)
最初に謝罪を置くのは、交渉の入口で相手の感情を落ち着かせるからです。
ただし、表現の仕方によっては、かえって相手の被害感情を刺激してしまうことがあるので注意が必要です。
かといって、何が悪かったのか理解していない態度では、話合いが進みにくいので、きちんと相手の立場や感情を理解するよう努めて考えることが必要です。
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安全ライン:「迷惑・不利益を与えた」「配慮不足」「表現が不適切」
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避けたい断定:「虚偽」「違法」「全面的に非を認める」
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運用:謝罪文を求めるなら別紙(本文に詳しく書かない)
2)削除:問題の根を切る(対象特定が命)
削除は「やります」で終わらせず、対象を特定しておくのがコツです。
ここが曖昧だと、示談後に「消えてない」「対象外だ」で蒸返しが起きます。
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別紙で特定:媒体/URL/投稿日時/該当箇所
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範囲:本件投稿+直結する関連(引用・固定・まとめ)まで
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期限:現実的な日付(即日固定は揉めやすい)
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削除済みでも:「削除済み」と明記して対象から外さない(蒸返し防止)
3)金額:条件セットに釣り合いをつける(内訳より「落とし所」)
金額は「相場」ではなく、そのほかの条件のセットと合わせてこの金額で終われるかで決めます。
この段階では、内訳を細かく争うより、「解決金」「慰謝料」「損害賠償」等全体をまとめた表現と金額で、落とし所(支払条件まで)を調整した方がまとまりやすいです。
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名目:解決金(慰謝料や損害賠償という表現もあり)
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支払期限:具体日
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方法:振込(手数料は相手負担)
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分割なら:回数・各期限だけ(違約金はこの段階では盛らない)
4)再発防止:蒸返しを止める(違反認定で揉めない形)
再発防止は対象を広げるほど、安心に、そして勝った気がしますが、広いほど「違反かどうか」で揉めます。
ポイントは、対象と行為類型で縛ることです。
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対象:被害者(甲)に関する投稿に限定
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媒体:インターネット上(SNS等)で足りる
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行為類型:評価低下/侮辱/プライバシー侵害などを1行定義しておく
5)清算:追加請求を止める(蒸返し防止の核心)
最後に清算条項を置くのは、ここまでの条件(謝罪・削除・金額・再発防止)と引き換えに、
「これで終わり」を確定させるためです。
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本件投稿限定が合意しやすい:「本件投稿に関し」を入れる
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包括清算にするなら要注意:「本件投稿に関し」を外す場合は、他の火種(別投稿・別件請求)も含めて終わらせる合意だと双方で明確に確認しておく。
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強度:「以後名目を問わず一切請求しない」まで入れる
この5点が揃えば、示談提案としては十分に機能します。
次は、これを相手に出すときの「提案書の書き方(1枚で足りる)」を整理します。
提案書の書き方(1枚で足りる)
示談提案は、長文にすると揉めます。
理由はシンプルで、論点が増えるからです。
ここでは、要求セット(謝罪→削除→金額→再発防止→清算)を1枚で通すための型だけ置きます。
結論:本文は「挨拶+5点セット+期限」だけでいい
提案書でやることは次の3つだけです。
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① 終わらせ方の提示(要求セットを固定)
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② 期限の提示(返答期限を置く)
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③ 窓口の提示(以後の連絡方法を固定)
逆に、ここでやらない方がいいのは、
「違法性の論証」「経緯の長い説明」「感情の追及」です。
それはまとまらない方向に働きやすいです。
書き方のコツ:強く言うより「淡々と確定させる」
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断定しすぎない(相手が引けなくなる)
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曖昧にしない(蒸返しが止まらない)
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対象と期限は必ず入れる(削除・支払い・返答)
提案書テンプレ(1枚版)
貴殿の投稿(別紙記載。以下「本件投稿」)により、当方は迷惑・不利益を被っております。
今後の蒸返しを防ぎ、訴外で解決するため、下記条件での合意(示談)をご提案します。
1 謝罪
貴殿は、本件投稿により当方に迷惑・不利益を与えたことを自覚し、反省の上、謝罪する。
2 削除・非公開化
貴殿は、本件投稿及び関連投稿(別紙記載の範囲)を、令和 年 月 日までに削除(又は非公開化)する。
3 解決金
貴殿は、本件の解決金として金 円を、令和 年 月 日までに当方指定口座へ振込送金して支払う(振込手数料は貴殿負担)。
4 再発防止
貴殿は、以後、インターネット上で当方に関する誹謗中傷(社会的評価を低下させ、侮辱し、又はプライバシーを侵害する内容の発信)を行わない。
5 清算
上記履行を条件に、当方と貴殿は、本件投稿に関し、以後名目を問わず一切の請求を行わない。
上記提案について、令和 年 月 日までにご回答ください。
連絡は(メール/書面)にてお願いします(電話・SNSでの連絡はお控えください)。
以上
別紙の出し方:本文は短く、特定は別紙で固める
本文にURLや投稿全文を入れると長くなります。
特定は別紙に逃がして、本文は1枚で完結させるのが安定です。
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媒体/URL/投稿日時/該当箇所
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削除対象の範囲(本件+直結する関連)
次は、この提案書を「いつ・どう出すか」(送付の作法/期限設定/相手が弁護士のとき)を整理します。
いつ・どう出すか(送付の作法/期限設定/相手が弁護士のとき)
示談提案は、中身より先に「出し方」で失敗することがあります。
強すぎる形式で相手の反発を招く。
弱すぎて放置される。
期限が雑で、相手に“次の一手”(提訴・無視)を選ばせてしまう。
ここでは、提案書を通しやすい形で出すために、
送付方法/期限の置き方/相手が弁護士のときの作法を、最小限に整理します。
結論:期限は「7〜14日」。短期で追い込まない
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本人宛:原則10〜14日(検討時間が要る)
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代理人弁護士宛:原則7〜10日(判断が速い)
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急ぐ事情がある場合でも、理由は長く書かず「期限を書く」だけにする
期限は圧ではなく、交渉を前に進める区切りです。
短すぎる期限は、相手に「争う」理由を与えやすいです。
宛先:代理人がいるなら、原則「代理人宛」に一本化
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代理人がいる:本人へ直接連絡しない(感情を刺激しやすい)
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代理人が不明:本人宛に出し、代理人がついたり、代理人がいることが分かったら代理人宛て
送付方法:迷ったら「追跡できる」方法
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レターパック・特定記録・書留:追跡でき、圧は強すぎない
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内容証明(+配達証明):追跡でき、圧は強い。損害賠償請求などについて従来からの一般的な方法。
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メール:記録は残るがサーバーの問題や迷惑メールの運用などでちゃんと届いたかどうか確実には確認できないことも。
「強い形式」ほど良いわけではありません。
目的が“終わらせる”なら、相手が検討しやすい形を優先します。
控えの残し方:最低限「3点セット」
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提案書(本文+別紙)の控え(PDF保存)
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送付の証跡(追跡番号/配達証明/メール送信履歴)
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対象投稿の証拠一式(URL・日時・スクショ・文脈)
示談が不成立でも、この3点が揃っていると次の手(訴訟等)が安定します。
交渉が壊れる典型(これだけ避ければいい)
提案書の中身を整えても、交渉が壊れるのはだいたい同じ理由です。
「勝ちに行く条項」を盛ってしまう。
あるいは、順番を間違えて相手の反発スイッチを押す。
逆に言えば、次の5つだけ避ければ、交渉はかなり安定します。
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口外禁止を広げすぎる(例外なしで生活が詰む)
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謝罪を断定で固める(虚偽・違法・全面責任)
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再発防止が広すぎて違反認定で揉める
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違約金を高くする(一発で話が止まる)
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金額だけ先行(買収・口止めに見えて反発が増える)
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合意書の骨格を先に固めたい人へ。
示談書(合意書)書式・ひな形|蒸返しを止める最小構成(条項例つき)
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どの段階から整理しますか
インターネット問題は、必ずしも手続から始まるわけではありません。
いまの自分の状況に合わせて、整理する段階を選ぶことができます。
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何が起きているのか構造から考える|判断の入口
投稿を見たとき、まず何が起きているのか。 感情と事実を切り分けるための入り口です。
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削除や開示を選ぶ前に、 自分が何に困っているのかを静かに整理する記事群です。
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表現の自由、名誉毀損、発信者情報開示など、 実際に起きる問題を題材に、 判断を具体化していくシリーズです。