「法人破産をしたくても、その費用すら用意できない」——資金繰りに行き詰まった経営者から、こうした言葉を聞くことは少なくありません。弁護士費用や裁判所に納める予納金のことを考えると、会社をどう畳めばよいのか、そもそも畳めるのかさえ分からなくなってしまう状況です。

法人破産では、弁護士費用のほかに、裁判所へ納める申立費用や予納金などが必要になります。この点だけを見ると、手元に現金がない会社は身動きが取れないようにも思えます。しかし、会社の口座残高がゼロに近い場合でも、売掛金、在庫、敷金の返還請求権、保険の解約返戻金など、確認すべき財産が残っていることがあります。一方で、裁判所への予納金等をまったく確保できない場合には、申立てをそのまま進めることが難しい場面があるのも事実です。

だからこそ、費用が足りないと感じたときほど、焦って会社の財産を処分したり、特定の取引先や関係者だけに優先して支払ったりする前に、会社に何が残っているのか、何をいつまでに対応する必要があるのかを整理することが、次の判断につながります。特に、訴状や支払督促、差押命令が届いている場合、従業員の給与支払い、賃貸物件やリース契約の期限が迫っている場合には、対応の時期を早めに確認しておく必要があります。

この記事では、法人破産にかかる費用の大まかな金額感と内訳を押さえたうえで、会社の資産や緊急性のある事情を確認する方法、費用を確保するために検討できる選択肢、そして会社のお金や財産を動かす前に気をつけたい点までを、順を追って整理していきます。

【この記事のポイント】
法人破産では、弁護士費用に加え、裁判所に納める申立費用・予納金などが必要です。会社の規模や事案によっては、全体で100万円前後またはそれ以上の費用が必要になることがあります

手元資金が乏しくても、会社の預金、売掛金、在庫、敷金、保険などを確認することで、費用の見通しを立てられる場合があります。ただし、担保や差押え、リース、預り金が絡む財産は、会社が自由に使えないことがあります

会社の資金を破産申立てに必要な費用へ充てることは検討できますが、特定の取引先や親族、役員への優先的な返済、関係者への低額売却などは、後の破産手続で問題になる可能性があります

費用の有無だけで破産する・しないを決めず、財産、負債、従業員、契約、代表者保証をあわせて整理することが判断の土台になります

法人破産にかかる費用の内訳|まず「何の費用か」を分けて考える

法人破産を検討し始めると、「結局いくら必要なのか」という金額がまず気になります。しかし、法人破産の費用は一つの固定額ではなく、性質の異なる複数の費用が組み合わさってできています。まずは「何にかかる費用なのか」を分けて理解することが、費用が足りないときの検討の出発点になります。

法人破産では、通常は管財事件として費用が問題になる

個人の自己破産では、めぼしい財産がなく、免責に問題がないと判断される場合に、破産管財人を選任せずに手続を終える「同時廃止」という形がとられることがあります。この場合、裁判所へ納める費用は比較的少額です。

一方、法人破産では、会社の財産状況、帳簿の内容、取引先との関係、従業員への対応などを調査・整理する必要があるため、通常は破産管財人が選任される管財事件として進みます。

ここで押さえておきたいのは、「会社にほとんど財産が残っていないから、個人の同時廃止のように費用もほとんどかからない」とは考えにくいという点です。資産が乏しい会社であっても、会社の財産や取引経過を調査するために破産管財人が選任され、その業務に必要な予納金を裁判所へ納める必要があります。

具体的な予納金の額や事件の運用は申立先の裁判所や会社の状況によって異なるため、実際の申立てでは、申立先の運用を確認する必要があります。

法人破産には実際いくらかかる?費用の大まかな目安

法人破産では、裁判所へ納める費用だけでなく、申立代理人となる弁護士の費用も必要になります。そのため、全体として数十万円では収まらず、100万円前後またはそれ以上の費用が必要になるケースがあります。

たとえば、東京地方裁判所の少額管財では、破産管財人に引き継ぐ予納金として20万円が一つの目安となっています。これとは別に、申立手数料、郵券、官報公告に必要な費用などもかかります。ただし、少額管財を利用できるかどうかや、必要となる予納金の額は、会社の規模、財産関係、調査すべき事項などによって変わります。

弁護士費用についても全国一律の金額はありませんが、小規模から中小規模の法人破産では、50万円から100万円程度以上の費用設定がされていることがあります。債権者が多い、従業員がいる、不動産や在庫が多い、帳簿が整理されていない、関係会社や役員との取引を調査する必要があるといった場合には、それ以上になることもあります。

また、会社の借入れについて代表者が連帯保証をしており、法人とあわせて代表者個人も自己破産する場合には、代表者個人の申立てにかかる弁護士費用として、さらに数十万円程度が必要になることがあります。法人と代表者を同時に申し立てる場合の裁判所費用や予納金の扱いは、申立先の裁判所や事案によって異なります。

したがって、「会社の口座にあと50万円あるから、それで法人破産できる」といったように、現在の預金残高だけから判断することはできません。会社と代表者の双方についてどのような手続が必要になるのかを確認し、申立てまでに必要となる費用全体を見積もることが大切です。

費用は「弁護士費用」「裁判所に納める費用」「周辺費用」に分ける

法人破産にかかる費用は、大きく三つに整理できます。

費用の区分 主な内容 金額が変わる事情
弁護士費用 申立書類の作成、財産・負債の調査、債権者対応、裁判所対応など 債権者数、資産の内容、帳簿の整備状況、従業員の有無、代表者個人の手続の有無
裁判所に納める費用 申立手数料、郵便切手代、官報公告に必要な費用、予納金など 申立先裁判所の運用、事件の種類、財産・調査事項の複雑さ
申立て前後の周辺費用 賃貸物件の明渡し、在庫・書類の保管、残置物の処分、会計資料の整理、従業員対応など 事務所・倉庫の有無、在庫量、従業員数、契約内容

こうして分けてみると、「弁護士費用さえ用意すれば済む」というものではないことが分かります。裁判所に納める費用は弁護士費用とは別に必要になりますし、事務所の明渡しや在庫の処分といった周辺費用も、事業の規模によっては無視できない金額になることがあります。

なお、官報公告に必要な費用については、裁判所への予納金の中に含まれる形で納付する運用もあります。「官報公告費」と「予納金」が常に別々の費目として請求されるとは限らないため、見積もりを受ける際には、どの費目が何を含んでいるのかを確認しておくと分かりやすくなります。

予納金とは何か|少額管財を利用できるとは限らない

予納金は、破産管財人が行う財産調査、換価(財産を金銭に換えること)、債権者への対応といった破産手続を進めるために必要な費用として、裁判所に納めるものです。法人破産では、この予納金が申立費用の中でも大きな割合を占めることがあります。

予納金の額は、負債の総額だけで決まるわけではありません。会社にどのような資産が残っているか、帳簿がどの程度整理されているか、取引関係が複雑かどうか、役員や関連会社との取引など追加の調査が必要な事情があるかによっても変わります。

こうした中で、「少額管財」という運用を利用できる場合があります。少額管財は、弁護士が申立代理人となって事前に必要な調査・整理を行うことなどを前提に、通常の管財事件よりも比較的簡易・迅速に手続を進め、予納金を低く設定する裁判所の運用です。

ただし、少額管財は全国共通の制度として法律で定められているものではなく、利用できる条件や予納金額は裁判所によって異なります。帳簿に大きな不備がある、関係者との間で不自然な取引がある、役員への貸付がある、財産の処分経緯が複雑であるといった事情がある場合には、より詳しい調査が必要となり、通常の管財事件として扱われることもあります。

そのため、「費用がないから少額管財にすればよい」というものではありません。自社の状況でどのような運用が見込まれるのかを、費用の見積もりとあわせて確認することが重要です。

費用の見積もりを受けるときに確認したいこと

弁護士へ相談し、費用の見積もりを受ける際には、金額の大小だけでなく、その金額に何が含まれているかを確認すると、事務所ごとの違いを比較しやすくなります。

  • 弁護士費用にどの業務が含まれているか(書類作成、債権者対応、従業員対応などの範囲)
  • 裁判所に納める費用と弁護士費用が明確に分けて示されているか
  • 予納金の見込み額と、少額管財を利用できる可能性
  • 代表者個人の自己破産や保証債務の整理を同時に行う場合、追加でどの程度の費用がかかるか
  • 従業員対応、賃貸物件の明渡し、資料整理、在庫の保管・処分といった周辺費用の扱い
  • 弁護士費用について、分割払いや積立てに対応してもらえるか

弁護士費用と裁判所費用は分けて確認する

弁護士費用については分割払いや積立てに応じてもらえる場合がありますが、裁判所に納める予納金等について、同じように分割や後払いができるとは限りません。弁護士費用と裁判所費用は性質が異なるため、「支払い方法」についても、どちらの費用についての話なのかを分けて確認しておく必要があります。

費用を検討する際は、「とにかく安い事務所を探す」ことよりも、必要となる総額と、その中にどこまでの業務・費用が含まれているのかを確認する方が、実際の資金計画を立てやすくなります。

費用がないときに最初に確認すること|資産・負債・期限を一覧にする

必要となる費用の金額感がわかっても、「自社でいくら用意できるのか」が見えなければ、次の判断はできません。ここでは、資金をどう作るかという話の前に、会社に今どのような資産・負債・期限が存在しているかを確認します。

すべてを一度に完璧に整理する必要はありません。まず対応期限のある事項を押さえ、そのうえで資産、負債、従業員・契約関係へと視野を広げていけば十分です。分からない金額や見つからない資料がある場合には、その点も含めて弁護士に伝え、一緒に整理していくことができます。

先に対応時期を確認したいサイン

会社の状況によっては、費用の見通しを立てる作業と並行して、対応時期そのものを確認しておいた方がよい事情があります。

  • 裁判所から訴状、支払督促、仮差押え・差押えに関する書類が届いている
  • 預金や売掛金が差し押さえられるおそれがある
  • 従業員の給与支払い、退職、解雇予告などの対応期限が近い
  • 賃料、リース料、担保権実行、明渡しなどに関する期限がある
  • 預り金、顧客から預かった商品、個人情報、許認可が関わる事業など、第三者への影響が大きい事情がある
  • 事務所や倉庫に、在庫、帳簿、リース品、顧客情報を含む機器などが残っている

これらに該当する事情があるからといって、必ず破産申立てを急ぐべきだと決まるわけではありません。ただし、期限のある問題を把握しないまま時間が過ぎると、選べたはずの対応が選べなくなることがあります。「いつまでに」「誰に対して」「何をする必要があるか」を書き出しておくと、相談時にも状況を伝えやすくなります。

会社に残る現金・財産・入金予定を確認する

次に、会社にどのような資産が残っているかを確認します。手元資金がほとんどないと感じていても、預金以外の財産が残っていることがあります。

  • 会社口座の預金残高、手元現金
  • 売掛金、未請求の売上、継続中の入金予定
  • 在庫、設備、車両、機械、什器備品
  • 保険契約と解約返戻金
  • 敷金・保証金の返還請求権
  • 仮払金、貸付金、役員貸付金、関連会社との債権債務
  • 電子決済サービス、オンライン口座、暗号資産などがある場合の残高
  • 差押え、担保権、所有権留保、リース契約、債権譲渡の有無

ここで確認しておきたいのは、財産の「有無」だけでなく、「会社が自由に扱える財産かどうか」です。売掛金や在庫があっても、担保が設定されていたり、既に差押えを受けていたり、リース契約や所有権留保の対象になっていたりすると、会社の判断だけで処分や費消ができるとは限りません。預り金や預り商品も同様で、会社の財産のように見えて、実際には第三者に返還すべきものである場合があります。

「会社に財産がない」と思っている場合でも、敷金、保険、未回収の売掛金などが残っていることがあります。この段階では、すぐに売却・解約して現金化するのではなく、まず何があるのかを一覧にすることが大切です。

負債と支払期限を確認する|金額だけでなく種類を見る

資産と並行して、負債についても確認します。

  • 金融機関からの借入金
  • 買掛金、外注費、未払費用
  • 家賃、リース料、通信費、継続課金サービス
  • 未払い給与、退職金、源泉所得税
  • 税金・社会保険料
  • 訴訟、差押え、督促、担保権実行の可能性
  • 代表者保証、第三者保証、担保設定

負債については、総額だけを見るよりも、「いつまでに」「誰に」「どの根拠で」支払う必要があるのかを一つずつ確認する方が、状況を把握しやすくなります。同じ未払いでも、通常の請求段階にあるものと、既に訴訟や差押えの段階に進んでいるものとでは、対応の緊急性が異なります。

税金や社会保険料の滞納がある場合でも、会社の負債を代表者が当然にすべて個人で肩代わりすることになるわけではありません。もっとも、代表者保証の有無や第二次納税義務など、個別事情によっては代表者個人への影響が問題となる場合があります。この段階では、保証や個人責任につながり得る事情があるかを確認しておけば十分です。

従業員・契約・代表者保証を確認する

あわせて、従業員、契約関係、代表者保証についても確認します。

  • 従業員数、未払い賃金、退職予定者の有無
  • 給与台帳、雇用契約書、就業規則、社会保険関係書類
  • 賃貸借契約、リース契約、フランチャイズ契約、継続課金サービス
  • 事務所・倉庫に残る在庫、帳簿、PC、リース品、顧客情報
  • 代表者の連帯保証、担保提供、個人名義の借入れ

事業を停止したり、破産申立てを検討し始めたりしたとしても、従業員との雇用契約が当然に終了するわけではありません。解雇や退職の対応には、解雇予告や解雇予告手当などの問題が関わります。また、未払い賃金については、要件を満たせば未払賃金立替払制度を利用できる場合があります。

代表者保証についても、まずは「あるか、ないか」を確認します。法人が破産しても、代表者の連帯保証債務は当然にはなくならないため、法人の問題と代表者個人の問題を分けて把握しておくことが、その後の費用や手続を考えるうえでも重要です。

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法人破産の費用をどう確保するか|検討できる資金源と手続上の選択肢

会社の資産や負債を確認したあとは、「その中から何を費用に充てられるのか」を検討します。ここで大切なのは、資金源を見つけることと、その資金を自由に動かせるかどうかを分けて考えることです。

また、弁護士費用の支払方法や少額管財の利用可能性など、必要となる費用そのものを調整できる場合もあります。ただし、いずれも希望すれば必ず利用できるものではないため、自社の状況を踏まえて確認する必要があります。

会社の預金・売掛金・在庫などを費用原資にできる場合がある

法人破産は会社自身の債務を整理するための手続であるため、会社に残っている資金や財産を、申立てに必要な弁護士費用や裁判所費用の原資として検討することがあります。

確認する資金・財産 費用原資となる可能性 主な注意点
会社の預金・現金 あり得る 申立費用以外の支払いも含め、資金の使途を整理する
売掛金 あり得る 回収経緯、請求書、入金記録を残す
在庫・設備・車両 あり得る 適正価格での売却、関係者への低額譲渡に注意する
敷金・保証金返還請求権 あり得る 明渡し時期、原状回復費用、相殺の有無を確認する
保険の解約返戻金 あり得る 契約者、受取人、担保設定、解約条件を確認する
役員・関係会社への債権 あり得る 実態・回収可能性・関係者取引を確認する

会社財産を費用原資にする場合も、先に全体を確認する

法人破産の申立てに必要な弁護士費用や裁判所費用について、会社に残っている資金をその原資として検討することがあります。ただし、破産直前の会社資金の使途は、後の破産手続で確認されることがあります。支払先、業務内容、金額、振込記録、領収書などを残し、何のために支出したのかを説明できる状態にしておくことが重要です。

また、会社財産を売却して費用を確保する場合には、売却先や価格にも注意が必要です。特に親族、役員、関連会社への売却については、適正な価格であったかが問題になりやすいため、市場価格との比較や査定資料、契約書、代金の入出金記録などを残しておく必要があります。

費用が足りないからといって、相談前に慌てて財産を売却する必要はありません。どの資産をどのように扱うのかも含めて、今後の破産申立てとの関係を確認したうえで進める方が安全です。

少額管財を利用できるかを見積もり時に確認する

少額管財を利用できる場合には、通常の管財事件と比べて予納金を抑えられることがあります。利用できるかどうか、どの程度の予納金が必要となるかは、申立先の裁判所や会社の帳簿・取引内容によって異なります。

帳簿が整っていない場合や、役員貸付、親族間取引、過去の財産処分など調査すべき事項が多い場合には、より詳しい調査が必要になることがあります。費用の見積もりを受ける際には、自社の場合にどの程度の予納金を想定すべきかもあわせて確認しておくと、必要な資金を把握しやすくなります。

代表者・家族などからの資金援助は、資金の性質を明確にする

会社の資産だけでは費用が足りない場合、代表者やその家族が資金を援助したり、費用を立て替えたりすることが検討される場面があります。この場合には、誰が、どの費用を、どのような性質で負担したのかを明確にしておくことが、後の整理をしやすくします。

代表者が会社の費用を負担すること自体が直ちに問題になるわけではありません。ただし、代表者自身も支払不能に近く、個人の自己破産や債務整理を予定している場合には、代表者個人の資産状況との関係も考える必要があります。

また、代表者が会社へ貸し付けた資金について、後になって他の債権者に先立って会社から返済を受ければ、その返済が問題となる可能性があります。資金を入れる場面だけでなく、その後の返済についても自己判断で進めない方がよいでしょう。

弁護士費用の分割・積立てを確認する|法人破産に法テラスは使えない

弁護士費用については、法律事務所によって分割払いや積立てなどに対応している場合があります。会社の資金繰りに応じてどのような支払い方法が可能か、見積もりの段階で確認しておくと資金計画が立てやすくなります。

一方で、裁判所へ納める予納金等については、弁護士費用と同じように分割や後払いができるとは限りません。そのため、「弁護士費用を分割できるから、手元資金がなくてもすぐ申し立てられる」とは限らない点に注意が必要です。

また、法テラスの民事法律扶助は個人を対象とする制度であり、法人自身の破産申立費用には利用できません。代表者個人が自己破産や債務整理を検討している場合には、収入や資産などの要件を満たせば、個人の手続について利用できる可能性があります。

費用だけで破産を決めず、他の整理方法も含めて見極める

ここまで資金源や支払方法を見てきましたが、費用を用意できるかどうかだけで、法人破産が適切かどうかを決める必要はありません。債務を完済できる見込みがある会社であれば、解散・通常清算で足りる場合もあります。

また、事業を継続できる具体的な見込みが残っている場合には、破産以外の方法を検討できることもあります。反対に、債務超過の状態で解散登記だけをしても債務の問題が解決するわけではありません。

費用は重要な問題ですが、「破産費用を出せるか」だけではなく、会社の資産・負債、事業継続の可能性、債権者との関係、代表者保証などを踏まえて、どの方法が現実的なのかを考える必要があります。

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会社のお金や財産を動かす前に確認したいこと|迷いやすい対応と注意点

資金繰りが厳しくなった局面では、「誰にいくら支払うか」「何を処分するか」「事務所をいつ明け渡すか」といった判断を、経営者が迫られることがあります。

こうした判断は、支払いたい相手を助けたい、処分費用を抑えたい、賃料負担を減らしたいといった自然な事情から生まれることがほとんどです。しかし、不正な意図がなくても、結果として後の破産手続に影響する場合があります。会社のお金を動かす前に、特に確認しておきたい点を整理します。

特定の債権者だけに支払う前に、支払いの目的と時期を確認する

長年付き合いのある取引先、従業員、親族、役員、保証人などに、他の債権者より先に支払いたいと考えることは不自然ではありません。

ただし、会社が支払不能や支払停止に近い状態にあるときに、特定の債権者だけへ優先して返済すると、後に破産管財人から否認の対象とされるなど、問題となる可能性があります。これは、債権者間の公平を図るという破産手続の考え方に関わる問題です。

もっとも、会社からの支払いがすべて直ちに問題になるわけではありません。支払不能や支払停止の前後にあたるか、既存の債務を特定の相手だけに返済するものか、通常の支払時期・方法によるものか、役員・親族・保証人など利害関係者への支払いか、といった事情によって評価は変わります。

「もう破産を考えているから一切支払ってはいけない」と一律に考えるのではなく、支払いの目的・相手・時期・金額を整理し、判断に迷う支出については実行する前に確認することが現実的です。

財産を売却・移転する場合は、適正な価格と記録が必要になる

費用を確保するため、在庫や車両、設備などを売却したいと考える場面もあります。

このとき注意したいのは、売却先と価格です。親族や役員、関連会社への無償譲渡、相場より大幅に安い価格での売却、名義だけを移す取引などは、後の破産手続で問題になる可能性があります。

売却を検討する際は、査定資料、売却価格の根拠、売却先、契約書、代金の入出金記録を残しておくことが重要です。帳簿、通帳、請求書、契約書、会計データ、メールやクラウドサービスのデータについても、廃棄・削除・書き換えをせず、後から確認できる状態を保っておきます。

事務所・倉庫を明け渡す前に、在庫・書類・リース品の扱いを確認する

賃料負担を減らすために、事務所や倉庫をできるだけ早く明け渡したいと考えることもあります。

しかし、在庫、帳簿、パソコン、リース品、顧客情報を含む機器などが残ったまま明渡しを進めると、それらの保管・返却・処分をめぐって新たな問題が生じることがあります。原状回復費用や残置物の処分費用、保管費用が必要になる場合もあります。

鍵の返却、残置物の処分、リース物件の返却といった対応も、今後の破産申立てとの関係を確認しながら進める必要があります。費用を減らすために先に片付けた結果、必要な資料や財産まで失ってしまわないよう注意が必要です。

解散・休眠・債権者申立てを「費用ゼロの解決策」と考えない

費用が用意できないとき、「いったん解散だけする」「会社を休眠させる」「債権者が破産を申し立てるまで待つ」といった方法を考えることがあります。

しかし、解散登記をしても会社が直ちに消滅するわけではなく、清算の手続が必要です。会社の財産で債務を弁済できない状態であれば、解散しただけで債務の問題が解決するわけではありません。

休眠状態にした場合も、借入金、税金・社会保険料、契約関係などが自動的になくなるわけではありません。

また、債権者から法人破産を申し立てる「債権者申立て」によって手続が始まる場合もあります。この場合、通常は申立債権者が裁判所に必要な予納金等を納めますが、会社側が手続の時期や進め方を選べるわけではありません。突然手続が進み、代表者には帳簿・資料の提出、財産や取引経過の説明、破産管財人への引継ぎなどが求められることになります。

解散、休眠、債権者申立てを待つことが直ちに不適切というわけではありませんが、「自分では破産費用を用意しなくてよいから」という理由だけで選ぶものではありません。まずは会社の財産、負債、期限のある問題を把握し、その会社にとって現実的な方法を確認することが必要です。

法人破産の費用を確認する順番|全部整理してから相談する必要はない

ここまで多くの確認事項を挙げてきましたが、法人破産を相談する前に、会社の財産・負債や資料をすべて完璧に整理する必要はありません。資金繰りが厳しいときほど、資料をそろえることに時間をかけるより、まず現在分かっている範囲で状況を確認することが重要です。

まず確認したいのは「資金・期限・従業員」の3点

最初に確認したい3点

  1. 会社口座・現金の残高

    口座残高、手元現金、直近の入出金予定を確認します。売掛金など近いうちに入金される予定があるかも分かれば整理しておきます。

  2. 期限のある問題

    訴状、支払督促、差押命令、督促状、賃貸借・リースに関する通知などが届いていないかを確認します。

  3. 従業員・事業所への直近の対応

    次の給与支払日、従業員数、賃料の支払期限、事務所や倉庫に残っている在庫・書類・リース品などを確認します。

この3点だけでも、会社にどの程度の時間と資金が残っているのかを把握する手がかりになります。そのうえで、通帳、決算書、借入資料、売掛金・買掛金一覧、契約書、代表者保証に関する資料など、手元にあるものから確認していけば十分です。

分からない債務がある、帳簿が整理できていない、資料が見つからないという状態でも、それだけで相談できないわけではありません。何が分かっていて、何が分からないのかを伝えれば、弁護士と一緒に必要な資料や事実関係を整理していくことができます。

相談するときは「破産できるか」だけでなく、費用と今後の順番を確認する

法人破産について相談する際には、「破産できますか」とだけ尋ねるより、会社の現在の状況を伝えたうえで、次のような点を確認すると判断しやすくなります。

  • 法人破産が現時点で適切な選択肢か
  • 破産以外に検討できる方法があるか
  • 必要となる弁護士費用・裁判所費用・予納金の概算
  • 現在の会社資金や財産のうち、申立費用の原資として検討できるものがあるか
  • 少額管財を利用できる見込みがあるか
  • 弁護士費用の分割・積立てが可能か
  • これから支払うもの、支払いを慎重に判断するものをどう整理するか
  • いつまで事業を続けるのか、従業員や取引先へいつ対応するのか
  • 代表者保証や個人債務をあわせて整理する必要があるか

法人破産の費用が足りないと感じている場合ほど、単に「あと何万円必要か」だけではなく、会社のお金を今後どのような順番で使い、いつ事業を止め、どの手続を選ぶのかまで含めて確認することが重要です。

よくある疑問

法人破産の費用は会社のお金から支払ってよいですか?

法人破産の申立てに必要な弁護士費用や裁判所費用について、会社に残っている資金をその原資として検討することがあります。ただし、破産直前の会社資金の使途は後の手続で確認されることがあるため、費用以外の支払いも含め、自己判断で資金を動かす前に全体の状況を確認することが重要です。

会社の預金がゼロでも法人破産はできますか?

預金残高がゼロだから直ちに法人破産できないというわけではありません。まずは、売掛金、在庫、敷金、保険、役員や関係会社に対する債権なども含め、会社全体としてどのような財産が残っているかを確認します。

それでも申立てに必要な費用を確保できない場合には、法人側から直ちに破産申立てを進めることが難しいことがあります。その場合でも、解散や休眠をすれば債務が自動的になくなるわけではありません。会社をそのまま放置する前に、現在の財産、債権者への対応、従業員、契約、代表者保証を含め、今後どのように整理するかを検討する必要があります。

法人破産で法テラスは利用できますか?

法テラスの民事法律扶助は個人を対象とする制度であり、法人自身の破産申立費用には利用できません。代表者個人が自己破産や債務整理を検討する場合には、収入・資産等の要件を満たせば、個人の手続について利用できる可能性があります。

従業員の給与と破産費用は、どちらを優先すべきですか?

一律にどちらを優先すべきとはいえません。給与の発生時期、支払日、会社に残る資金、事業を継続するのか停止するのか、今後の破産申立ての時期などをまとめて考える必要があります。未払賃金には破産手続上の優先関係や未払賃金立替払制度も関係するため、資金が限られている場合には、支払う前に今後の対応を整理した方がよいでしょう。

法人破産をすると代表者も必ず自己破産しますか?

法人と代表者個人の破産は別の手続です。代表者が会社の借入れを連帯保証している場合などには、会社の破産とあわせて代表者個人の債務整理を検討することがありますが、会社が破産したからといって代表者も必ず自己破産するわけではありません。

まとめ

法人破産には、弁護士費用だけでなく、裁判所への申立費用や予納金、申立て前後の周辺費用が必要になります。会社の規模や事案によって異なりますが、全体として100万円前後またはそれ以上の費用が必要になるケースもあります。

手元資金が少ない場合でも、会社の預金だけを見て「費用がない」と判断する必要はありません。売掛金、在庫、敷金、保険など、会社に残る財産を確認することで、費用の見通しが立つ場合があります。一方で、担保、差押え、リース、預り金などが関係する財産は、会社が自由に費用へ充てられるとは限りません。

また、費用を作るために特定の債権者だけへ支払ったり、関係者へ会社財産を安く売却したりすると、後の破産手続で問題になる可能性があります。会社のお金や財産を動かす前に、現在の資産・負債と今後の支払予定を整理することが重要です。

すべての資料をそろえてから相談する必要はありません。まずは会社に残る資金、期限のある問題、従業員への影響を分かる範囲で確認し、整理できない部分も含めて相談することができます。費用が足りないことだけで「破産できない」「もう何もできない」と決めず、会社と代表者の状況を分けて整理し、現実的にとれる方法と対応の順番を確認することが出発点になります。

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